第16話 ルーク様と放課後のお茶会・前
今日の放課後は、図書室でお目当ての本を借りてからカフェテラスで飲み物を買って、それを飲みながら中庭の奥のベンチでのんびりと読書をするという最高のプランを考えていた。
本を無事に借りられて、カフェラテを買い中庭へと向かう道中でそれは起こった。
「……ひどい……なぜ私ではダメなんですか?」
「……なんでだろうねぇ」
「……っ、ひどい……ひどい……です……っ」
「あー……泣かないで? ね?」
ルーク様が女子生徒を泣かせていた。
この光景を見るのは何度目だろうか? 基本的にルーク様は来るもの拒まずの方だ。
なのに、時々こうやってお断りしている場面に出くわす。
普段イチャイチャしている子達と何がどう違うのか。これまで目にした子達はみんな可愛くて綺麗な子ばかりだった。
ただ、一つだけ違いがあるとすれば泣いている子達はみんな『本気』に見えた。
本当にルーク様のことが好きで好きで仕方がないと全身で伝えているような子達ばかりが何故か断られているのだ。
やはり、そういった本気の子が相手だと後々面倒だったりするのだろうか?
前世も今世でもこういった事とは無縁なので私にはいろいろと理解し難い。
「……遊びでも、一時的な関係でも構いません! ですから……ですから……っ、お願いします……っ!」
「……ごめんね。気持ちは嬉しいよ」
「――――っ、もう、いいです」
涙を拭っていたルーク様の手を払い除けて女子生徒は去って行ってしまった。
うーん……私も早く中庭に行きたいのだがこの道を通らないと辿り着けない。
今日の、のんびりプランは諦めるべきか悩んでいると頭上から声がする。
「お嬢さん」
「……は?」
見上げるとルーク様がそこには居た。
気怠げに髪をかきあげながら私を覆うようにして壁に手を突いている。
これは、いわゆる壁ドンっていうものでは? 生まれて初めての経験だがルーク様の目が一切笑っておらず正直めちゃくちゃ怖い……。
「こんなところで覗き見かな? いい趣味だね」
「……は!? い、いえ! 私は中庭の奥のベンチで読書をしようと偶々たまたま通りかかっただけです!」
「……ふぅん? でも、見てたよね?」
「……そ、それは、そうかもしれませんが……不可抗力と言いますか……」
「まあ、いいや。せっかくだしお茶でもしようよ……えーっと……ソフィアちゃん?」
「……コレルです」
一文字すら合っていない。
だが、こんなモブの名前を覚えている方がありえないので、そこは仕方ないかと苦笑する。
「そうだっけ? ま、何でも良くない? 俺も何か飲み物買って来るから先にベンチに行っといて」
一緒にお茶をするのは確定なんだ……。のんびり読書タイムの予定だったのに。
でも、実際そのつもりはなくても告白されていた所を見てしまったのは事実だし罪悪感が全くないわけでもないので、おとなしくベンチに座ってルーク様を待つことにした。
……。
…………。
……………………。
来ないのですが? え、もしかして忘れちゃった? それならそれで当初の予定通り読書でもしようかと本を捲った時。
「お待たせ~」
あ、いらっしゃった。
覚えていたんだと顔を上げると美しいお顔の左側が真っ赤に腫れていて思わず二度見してしまった。
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