第14話 信用できない

 俺はまだ真帆のことが好きだ。

 毎日、アイツのことばっかり考えてしまう。


 なんで俺はまだ真帆のことが好きなんだろう?

 真帆アイツは拓哉と浮気してたんだぞ? 

 毎日のように拓哉とセックスしてたんだぞ、アイツはっ。


 なのに、どうして俺はまだアイツのこと好きなんだ?

 クソ、意味分かんねぇ……。


 いつになったら真帆のこと忘れられるんだろう?

 もう一生アイツのこと忘れられないのかな?

 それは地獄だな……。


 ずっと真帆のことを考えていると、学校全体にチャイム音が鳴り響く。

 午前の授業が全て終わり、やっとお昼休みだ。

 

 もうお昼休みか。

 ずっと真帆のこと考えてたせいで、全然授業の内容が頭に入っていない。

 ちっ、何やってんだ、俺は……。


「ねぇねぇ和馬くん」


 突如、横から女性の声が聞こえてきた。

 気になった俺は横を振り向くと、黒崎がいた。


「なんだよ、黒崎?」

「その……よかったら一緒にお昼ご飯食べない?」

「お昼ご飯? まぁ別にいいけど」

「え? いいの?」

「あぁ、いいよ。一緒に食べようぜ」

「うんっ!」


 俺たちは教室を出て屋上に移動する。


 屋上にやってきた俺たちはベンチに座ってお昼ご飯を食べ始める。

 パクパクとお昼ご飯を食べていると、黒崎が話しかけてきた。


「ねぇねぇ和馬くん。君ってどんな女の子がタイプなの?」

「は?」


 黒崎の質問に俺は小首を傾げる。

 なんだ、この質問は?

 どうしてそんなこと知りたいんだろう?

 気づいたら疑問を口にしていた。


「なんでそんなこと知りたいんだよ?」

「それはその……」


 俺の疑問に黒崎は黙り込む。

 よく観察すると、黒崎の顔は真っ赤になっていた。


 ん? コイツの顔真っ赤だな。

 熱でもあるのかな?


 しばらくして黒崎は口を開いた。


「その……私ね、和馬くんのことが好きなの。だから君の好きな女性のタイプが知りたくてさ……」

「なるほど、そうだったのか。俺の好きな女性のタイプは――ん? ちょっと待て。今なんて言った?」

「だからその……和馬くんのことが好きなの」

「……」


 俺のことが好き? 

 おいおい、一体なんの冗談だ? 


 コイツ、俺のことからかってるのかな? 

 いや、けど嘘や冗談を言っているようには見えないんだよな。

 

「えーっと、じょ、冗談だよな……?」


 俺がそう言うと、黒崎は頬を膨らませる。


「もうっ、冗談じゃないよっ。私は本当に君のことが好きなのっ!」

「……」


 黒崎の告白に俺は混乱してしまう。

 

 コイツ、マジで俺のこと好きなの……?

 罰ゲームじゃないのか?


 黒崎は真剣な顔だった。

 とても嘘や冗談を言っているようには見えない。


「なんで俺のこと好きなんだよ?」

「それは……」


 謎だ。

 なんで黒崎は俺のこと好きなんだろう? 

 一体、いつから俺のこと好きになったんだろう?


 無数の疑問が浮かび上がる。


「一か月前、ストーカーから私のこと守ってくれたでしょ?」

「ん? あぁ~、そんなことあったな……」

「あのときの和馬くん凄くカッコよかったから……好きになっちゃったの」

「……」


 一ヵ月前、黒崎はストーカーに襲われた。


 胸やお尻を触られて、キスまでされていた。

 そんな彼女を助けてあげたんだ。


 もし俺が助けてなかったら、黒崎はレイプされていただろうな……。

 あれは本当に危なかった。


 黒崎はあの出来事をキッカケに俺のことが好きになったらしい。

 

 つまり、黒崎は吊り橋効果で俺のことが好きになったのか。

 なるほど、色々と納得だ。


 

 黒崎は男子生徒に大人気だ。

 最近男子の間で行われた『可愛い女の子ランキング』で黒崎は二位だったはずだ。

 そんな子が俺のこと好きだったとはな。

 今でも驚きを隠せなかった。


 ちなみに、『可愛い女の子ランキング』の一位は真帆だ。

 なんであのクソビッチが一位なんだよっ。

 まぁ確かに、見た目は超がつくほど可愛いけどさ……。

 おっぱいもデカいし。


「和馬くんっ……」

「ん? なんだよ……?」

「その……私ね、本当に君のことが好きなのっ。だから私と付き合ってくださいっ! お願いしますっ!」

「……」


 可愛い女の子ランキング二位の黒崎に告白された。

 なんだこれ……?

 本当に現実か?

 夢みたいだ。


 嬉しい、凄く嬉しい。

 けどそれだけだ……。


「ごめんっ、黒崎とは付き合えないっ」

「っ!?」


 俺の返事に黒崎は目を見開く。


「な、なんで……なんで私と付き合ってくれないの!?」

「怖いんだよっ」

「怖い……?」

「あぁ……また大切な人に裏切られるのが怖いんだっ。もう嫌なんだよっ、これ以上傷つくのは……」

「……」


 黒崎は魅力的な女性だ。

 可愛いし、スタイル抜群だし、性格も良いし、趣味も合うし。


 黒崎と恋人になったら毎日が楽しいだろうな。

 けど、やっぱり無理だ。


 誰とも付き合いたくない。

 もう二度とあんな体験したくないっ。

 だから黒崎の告白を断ったんだ。


「和馬くんっ、私は絶対に浮気しないよっ。真帆ちゃんみたいに君のこと裏切ったりしないよ? だから――」


 黒崎の言葉を遮るように俺は口を開いた。


「ごめんっ、お前のこと信用できないっ……」

「っ!?」


 俺の冷たい言葉に黒崎は涙目になる。


 俺は真帆のこと信用していた。

 『アイツは絶対に浮気しない奴』だと思っていた。

 けど、違った。

 

 アイツは俺のこと裏切った。

 毎日のように拓哉とエッチしていた。


 なんであの時の俺は真帆のことを信用していたんだろうっ……。

 バカだっ、あの時の俺は本当にバカだっ。


 もう二度と身内以外の人間は信用しないぞ。


「黒崎……」

「……」

「悪いけど、俺のことは諦めてくれ。俺はもう二度と――」

「嫌だっ」

「え……?」

「絶対嫌だっ! 君のこと諦めないっ!」

「何言ってんだよっ、お前。もう俺のことは諦めろって」

「嫌だっ! 絶対に諦めないもんっ! 絶対和馬くんの彼女になってみせるからっ!」

「……」


 なんだこの女……。

 面倒くせぇぇ。

 



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