第13話 新ヒロイン

【和馬 視点】







 真帆と拓哉が高校を中退した。

 学校でセックスしていたことが担任の先生にバレて、退学処分を下されたらしい。 


 アイツら、学校でもセックスしたことあるのか……。

 

 学校でエッチしている真帆と拓哉を想像した瞬間、激しい眩暈に襲われる。

 頭がクラクラして何も考えられない。


 正直に言うと、俺はまだ真帆のことが好きだ。

 今もアイツのことを愛している。


 何回も『真帆とやり直そうかな』と思ったけど、やっぱり浮気は許せない。


 そもそも、なんで真帆は拓哉と浮気したんだ? 

 クソっ、意味がわかんねぇ……。


「おーい、和馬くん?」


 真帆のことを考えていると、横から女性の透き通った声が聞こえてきた。

 声がした方を振り向くと、黒髪の女子生徒と目が合った。

 コイツの名前は黒崎くろさき絵里えり

 

 最近、俺と黒崎は友達になったんだ。


「なんだよ、黒崎?」

「前から気になってたんだけど、君と真帆ちゃんって別れたの?」

「あぁ、別れたよ」


 俺がそう返事すると、黒崎は「え……?」と間抜けな声を漏らす。

 驚いているようだった。


「マジで別れたの?」

「ああ、マジだ」

「いやいや、意味わかんないんですけど……なんであんな可愛い女の子と別れたの? 勿体なくない?」

「アイツ……浮気してたんだよっ。それが許せなくて別れたんだっ」

「あの真帆ちゃんが浮気……? 嘘でしょ?」

「嘘じゃないっ、本当だっ……」


 俺は黒崎に全てを話した。

 真帆と付き合ったこと。

 真帆のためにたくさん努力したこと。

 結局、拓哉に寝取られたこと。


 全てを話したあと、黒崎が口を開いた。


「そっか……本当に辛かったね、和馬くんっ」


 黒崎はそう言って俺のことを抱きしめてきた。

 急にハグされて俺は混乱してしまう。


「お、おいっ……黒崎、何してんだよっ?」


 俺の言葉を無視して、黒崎はヨシヨシと頭を撫でてくる。

 それが気持ち良くて心が癒される。

 

 黒崎は俺の頭を撫でながら口を開いた。


「和馬くん、本当に辛かったね……私も大好きな人に裏切られたことあるから君の気持ちは痛いほど分かるよっ」

「え……? 大好きな人に裏切られた……? それってどういう意味だよ?」


 俺の問いに黒崎は答えた。


「私もね、彼氏に浮気されたことあるんだ……」

「え……? そうなの? つか、黒崎って彼氏いたのか?」

「うん、中学の頃彼氏いたんだ」


 へぇ~、中学生の頃に彼氏いたのか。

 全然知らなかった。

 今思うと、俺って全然黒崎のこと知らないよな……。


「私は彼氏のことが大好きだったからなんでもしてあげたんだっ。彼のためにお弁当作ってあげたり、頼まれたらエッチぃこともたくさんやらせてあげたよ。ハードなプレイにも付き合ってあげた」

「……」

「なのにっ……アイツは私を裏切った。私を裏切って他の女の子と浮気してたのっ」


 黒崎は彼氏のために色んなことをしてあげた。

 なのに、彼女は裏切られた。

 本当に辛かっただろうなぁ。

 

 俺も大好きな人に裏切られたことあるから、黒崎の気持ちは痛いほどわかる。

 

「なんでアイツは浮気したんだろう……。私って魅力ないのかな?」

「そんなわけないだろ。お前は魅力的な女だ」

「え? そ、そうかな……?」

「ああ、お前は本当に魅力的だよ。だから自信持て」


 俺がそう言うと、黒崎の顔は真っ赤に染まる。

 たぶん、照れてるんだろうなぁ。


「あはは……ありがとうね。和馬くんのおかげで元気出たよ」

「俺も黒崎のおかげで元気出たよ」

「ん? 私は何もしてないよ?」

「……さっき俺の頭撫でてくれただろ? あれのおかげで元気出た」

「ふふ、そっか、そっか。じゃあもっと頭撫でてあげるね。よしよし〜」


 再び黒崎が俺の頭を撫でてくる。

 それが心地よくて疲労やストレスが浄化されていく。


 黒崎に頭撫でられるの最高だな。

 めっちゃ癒される。


「私に頭ヨシヨシされるの気持ちいい?」

「あぁ、マジで気持ちいいよ。もうちょっとだけ続けてくれないか?」

「ふふ、いいよ。お姉ちゃんがいっぱいヨシヨシしてあげるね」

「お姉ちゃんって……俺たち同い年だろ」

「細かいこと気にしないの。よしよし」


 お昼休みが終わるまで、黒崎にたくさん頭を撫でてもらった。

 

 

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