第7話 絶対に許さないっ

 真帆に浮気されたせいで、俺は不眠症になってしまった。


 目を閉じると、真帆と拓哉のエッチを思い出してしまうんだっ……。

 そのせいで今日も眠れないっ。





 謎だ、なんで真帆は浮気したんだろう?

 俺に不満があるのかな? 

 それとも、まだ拓哉のことが好きなのかな……?


 俺はお前のためにたくさん努力したんだぞ?

 なのに、どうして浮気したんだよっ。

 クソ、クソ、クソ。


 こうなったら直接本人に浮気した理由を訊くか……。


 浮気した理由を訊くために、俺は真帆に電話をかける。

 しばらくして電話が繋がった。


『もしもし、和馬だよね?』

「ああ、そうだよ……」

『どうしてこんな時間に電話してきたの? あっ、もしかして昨日の――んっんっ、あぁっ……』


 突如、スマホのスピーカーから真帆の甘い声が聞こえてきた。

 ん? なんだ? 

 様子が変だぞ?

 ま、まさか……。


「お前、今何してんだ?」

『べ、別に何もしてないよっ。気にしないで……。んっんっ、もう今はダメだって……声が漏れちゃうっ……んっんっ』


 またスマホのスピーカーから真帆の甘い声が聞こえてきた。

 そのハチミツのような甘い声に、俺は絶句する。


 おいおい、嘘だろ?

 コイツっ、俺と電話しながら拓哉とエッチしてるのか?


「んっんっ……ごめんね、和馬……ママに呼ばれたから電話切るね。またあとで電話するから……」


 真帆はそう言って電話を切った。

 部屋全体が静寂に包まれる。


「あのクソ野郎っ、今日も拓哉とエッチしてるのか!! クソっ! クソっ! クソっ! クソぉぉ!!!」

 

 イライラしすぎてスマホを床に叩きつけてしまった。

 そのせいでスマホの画面がバキバキに割れる。

 

「クソっ! クソっ! クソっ! クソっ! クソっ! クソぉぉぉ!!」


 俺は物を投げたり、部屋の壁を蹴ったりする。

 そのせいで俺の部屋はどんどんボロボロになっていく。


 物に当たるのはよくないけど、こうでもしないとやってられない。


「あのクソ女ぁぁぁ!! 絶対に許さないぞぉぉぉぉ!!!」


 殺したい、今すぐ真帆と拓也を殺したい。

 こうなったら包丁で真帆と拓哉を殺すか……?

 いやダメだ、そんなことしたら俺の人生が社会的に終わってしまう。


「クソっ、クソっ、クソォォッ!!」

 

 何度も部屋の壁を蹴っていると、急に自室のドアが開かれた。

 ドアに目を向けると、一人の女性が視界に入った。


 この人の名前は中谷なかたに彩音あやね

 俺のお姉ちゃんだ。


 姉ちゃんはボロボロになった俺の部屋を見て、混乱していた。


「あ、アンタ何してんの……?」

「……」


 俺は姉ちゃんに全てを説明した。

 真帆と付き合ったこと。

 アイツに釣り合う男になるためにイメチェンしたり、勉強やスポーツを頑張っていたこと。

 たくさん努力したのに、真帆に浮気されたこと。


 全てを説明したあと、姉ちゃんは「は? あの真帆ちゃんが浮気するわけないでしょっ。アンタ頭大丈夫?」と俺の話を信じてくれなかった。


 けど俺が例のハメ撮り動画を見せたら、最終的に姉ちゃんは信じてくれた。


「姉ちゃん、俺どうすればいいのかな? やっぱり真帆アイツと別れた方がいいのかな?」

「うん、絶対別れた方がいいよ」

「どうしてだ?」

「ああいう浮気する女はね、何回許してもまた浮気しちゃんだっ……。そういう病気なんだよっ」

「……」

「和馬っ、絶対に真帆ちゃんのこと許したらダメだよっ? 分かってる?」


 俺は目を逸らしながら「あぁ……分かってるよ」と答えた。

 そんな俺を見て、姉ちゃんは眉を顰める。


「本当に分かってる? 絶対に真帆ちゃんのこと許しちゃダメだよ? あの子のこと許してもアンタが不幸になるだけだからね?」

「分かってるって……アイツのことは絶対に許さないよっ」


 俺はまだ真帆のことが好きだ。

 彼女のことを愛している。

 けどもう無理だ。絶対にアイツのことは許さないぞっ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る