第6話 謎の動画

「……どうしてこうなったんだ」


 真帆の浮気が発覚した。

 浮気相手の名前は村上むらかみ拓哉たくや

 真帆の元カレだ。


 中学三年生の頃まで真帆と拓哉はラブラブだった。

 そんな二人を見て、俺はコイツら結婚するんだろうな、と思っていた。

 けど俺の予想は大きく外れた。


 中学3年生の頃、真帆と拓哉は別れた。

 原因は拓哉の浮気だ。

 そう、拓哉は真帆を裏切って他の女と浮気してたんだ。


 真帆はもう拓哉のこと好きじゃないはずだ。

 なのに、どうしてアイツは拓哉と浮気してるんだ?

 

 クソっ、意味がわかんねぇ……。


 そういえば、最近の真帆は様子が変だったな。


 俺がデートに誘うと『ごめん、今日は家族とお出かけするんだ』と断ってきた。

 ドタキャンまでされたことある。


 俺が『久しぶりにエッチしないか?』と誘うと、真帆は目を逸らしながら『ごめん、今日は生理なんだ』と拒絶されたこともある。


 たぶん、もう真帆は俺のこと好きじゃないんだろうな。

 だから、拓也元カレと浮気したんだろう。


 クソっ、なんで拓哉なんだよっ。

 なんで俺じゃダメなんだよっ。




 ◇◇◇

 

 


 現在、俺は勝手に真帆のノートパソコンをイジッていた。

 本人に許可はもらっていない。


 ずっと真帆のパソコンをイジッていると、謎の動画が見つかった。

 なんだ、この動画は……。

 

 嫌な予感がする。

 本能が『絶対にこの動画を再生するな』と警告してくる。

 けど、俺は動画を再生してしまった。


 動画を再生した瞬間、ノートパソコンの液晶画面に裸の真帆と拓哉が映る。

 

『真帆、動画撮ってもいい?』

『は……? そんなのダメに決まってるでしょっ。恥ずかしいからやめてっ』

『えぇぇ……いいじゃん、今日は動画撮りながらエッチしようぜ。なぁいいだろ?』

『……』


 拓哉の提案に真帆は黙り込む。

 悩んでいる様子だった。

 しばらくして真帆は口を開いた。


『ったく、しょうがないなぁ……。今日だけだよ?』

『へへっ、サンキュー、真帆』


 二人は顔を近づけて恋人のようにキスする。

 パソコンのスピーカーからチュッチュッとリップ音が聞こえてくる度に、チクチクと胸が痛む。


 コイツら、いつもこんなことしてるのか……。

 クソっ、クソっ、クソっ。


『真帆って和馬と生でしたことあんのか?』

『ううん、流石に生はないよっ』

『へ~、和馬アイツと生でしたことないんだ。じゃあさ、俺と生でしてみない?』

『え? 拓哉と……?』

『おう、久しぶりに俺と生でしようぜっ。その方が絶対気持ちいいぞ?』

『も、もうしょうがないなぁ……今日だけだからね?』

『おぉぉぉ~、ありがとうな、真帆っ』


 俺は一度も真帆と生でしたことがない。

 当たり前だ、まだ俺たちは学生だからな。

 本当は真帆と生でシてみたいけど、リスクが高すぎる。


『真帆っ、生ですんの最高だなぁ』

『うんっ、凄く気持ちいいねっ……』


 ハメ撮り動画を見て、俺は絶句する。


 コイツら、マジで何やってるんだ……?

 生でエッチするのはダメだろ。

 赤ちゃんできたらどうするつもりなんだ?


『なぁもし俺の赤ちゃんできたらどうする?』

『その時は拓哉アンタの赤ちゃん産んであげるね』

『え? マジで? いいの?』

『う、うん……いいよ。拓哉アンタの赤ちゃんたくさん産んであげる。だからもっとアタシのこと気持ち良くしてぇぇ……』

『いいぜ。今日は朝まで可愛がってあげるからな』

『嬉しい♡』


 再び真帆と拓也は顔を近づけてキスする。

 ただのキスじゃない。舌を巻きつけ合うドロドロのキスだ。


 クソっ、クソっ、クソっ、クソっ、クソっ。



 ◇◇◇




 ――夜――



「さてと、そろそろ寝るか……」


 俺は部屋の電気を消して横になる。

 瞼を閉じて寝ていると、真帆と拓哉のエッチを思い出してしまう。


『真帆、口で気持ち良くしてくれない?』

『ふふ、いいよ。たくさん気持ち良くしてあげるからね』

『ははっ、サンキュ~』


 クソっ、ダメだっ。

 全然寝れないっ。

 目を閉じると二人のエッチを思い出してしまう……。


「……」


 なぁ真帆っ……なんでお前は俺のこと裏切ったんだよ。

 もう俺のこと好きじゃないのか?

 俺に不満があるのか?

 

 俺、お前のために色々と頑張ったんだぞ?

 


 いつも母さんに髪を切ってもらっていたけど、イケメンになるために美容院で髪を切ってもらった。


 前までメガネだったけど、勇気を出してコンタクトにした。


 カッコいい身体になるために筋トレも始めた。


 勉強も真面目にするようになった。

 そのおかげで今月の定期テストは学年3位だった。

 

 真帆に釣り合う男になるために、俺はたくさん努力した。

 にも拘わらず、拓哉に真帆を寝取られた。


 クソっ、なんでだよっ。なんで拓哉なんだよっ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る