第9話 浮気

水谷みずたに真帆まほ 視点】



「ねぇ君、今から俺と遊ぼうぜ」

「……」


 四か月前、街中で大学生にナンパされた。

 ちっ、またナンパだ。

 マジでだるいっ。


 昔はこういうチャラい男がタイプだった。

 なんか格好よく見えたんだよね。

 だから中学生の頃にチャラチャラしている拓哉と恋人になった。

 けど、拓哉に浮気されてからチャラチャラしている男が嫌いになった。


 ほんと、こういうチャラチャラした男大嫌いっ。


 黙り込んでいるアタシに、またチャラそうな男が話しかけてきた。


「ねぇねぇ黙ってないで返事してよ。ちょっとだけ俺と一緒に遊ぼうぜ? なぁいいだろ?」

「絶対無理っ。アタシ、アンタみたいなチャラい男大嫌いの……。マジでキモいから喋りかけないでくれる?」


 アタシがそう言うと、チャラ男は眉を顰める。

 怒っているように見えた。


「なんだその態度はぁぁ!! 女のくせに調子に乗るなよっ!!」


 チャラ男はそう言って、ギュッとアタシの肩を掴んできた。

 力強く肩を掴まれて、アタシの身体はビクッと震える。

 怖いよっ、誰か助けてっ。

 そう願った瞬間だった。

 和馬がアタシのこと助けてくれたの。


 もし和馬が助けてくれなかったら、アタシはこのチャラ男に殴られていただろう。

 下手したらこの男に襲われていたかもしれない……。


 あのときの和馬は本当にかっこよかったなぁ。

 

 正直、今まで和馬のこと異性として見てなかった。

 けど、今は和馬のことを考えるとドキドキと胸が高鳴る。

 和馬の顔が視界に入ると、頭の中が真っ白になってしまう。


 今日はずっと和馬のことばっかり考えていた。 

 そのせいで全然授業に集中できなかったよ。


 ヤバいっ。

 アタシ、マジで和馬のこと好きになってるっ……。


 和馬はアタシのことどう思ってるんだろう?

 ただの幼馴染と思っているのかな?

 それとも……アタシのこと好きなのかな?

 いや、それはないか。

 

 というか、和馬って彼女いるのかな?

 うーん、どうなんだろう……。

 こうなったら直接本人に訊いてみるか。

 

「ねぇねぇ和馬」

「ん? なんだよ?」

「アンタってさ、彼女いるの?」

「彼女? そんなのいるわけないだろ。俺はモテないからな……」


 和馬の返事にアタシは「はぁ……」と安堵のため息を吐く。

 よかった、和馬には彼女いないのか。

 

「じゃあ好きな人は?」

「好きな人?」

「う、うん……好きな人はいるの?」

「うーん、まぁ気になってる子はいるな」

「え!? ま、マジで……?」

「うん、マジマジ。気になってる子ならいるぞ」

「だ、誰!? 誰が気になってるの!?」

「それは秘密だっ」

「えぇぇぇ……いいじゃん、アタシにだけ教えてよ」

「絶対無理だっ……お前には教えたくない」


 和馬の返事にアタシはムクーっと頬を膨らませる。

 もう和馬のケチ。

 気になってる子ぐらい教えてよっ……。





 ◇◇◇



 和馬のことが大好きになったあと、アタシは積極的にアプローチをした。

 和馬のためにお弁当を作ってあげたり、デートに誘ったり。

 たくさんアピールしても和馬は全然アタシの気持ちに気づいてくれない。

 コイツ、本当に鈍感なんだよね。


 それでも諦めずにたくさんアプローチした。

 そして、ついに和馬から告白してくれた。


 和馬が告白してきたときは本当に驚いたよ。

 まさか、和馬もアタシのこと好きだったなんて……。


 えへへ、凄く嬉しいっ。


 恋人になったあと、アタシたちはたくさん恋人らしいことをした。

 和馬が好きなそうなエッチぃ下着を着てエッチしたり。

 バイトの制服を着てエッチしたり。

 学校の屋上でエッチしたり。


 正直、和馬とのエッチは気持ち良くないっ。

 けど、心がポカポカするんだよね。


 本当に幸せだ。

 ずっとこんな時間が続いてほしいな。








 ◇◇◇





 ある日、拓哉元カレがアタシに話しかけてきた。


「おい、真帆」

「ん? なに……?」

「先生にこの動画を見られたくなかったら、俺のセフレになれ」


 拓哉はそう言ってアタシにスマホの画面を見せてきた。

 そのスマホの画面を見て、アタシは目を見開く。

 な、なにこれ……。


 スマホの画面には裸のアタシと和馬が映っていた。


『真帆っ、屋上でエッチすんの最高だなぁ』

『うんっ……和馬と屋上ですんの好きっ……ねぇもっとアタシのこと求めてぇぇ……』

『ああ、今日もたくさん可愛がってあげるからな』

『えへへ、嬉しいっ』


 スマホの画面に映るアタシと和馬は学校の屋上でエッチしていた。

 その動画を見て、アタシは絶句する。

 う、嘘……。


 三日前、アタシと和馬は学校の屋上でたくさんエッチした。

 拓哉はそれを録画してたのか。


 たぶん、先生があの動画を見たらアタシたちは退学になるだろう。

 不味いっ、それは不味すぎるっ。


「先生がこの動画見たら、お前と和馬は退学になるだろうなぁ」

「や、やめてっ……お願いだから先生に見せないで」

「なら俺のセフレになれ」

「せ、セフレ……?」


 拓哉の言葉にアタシは思わず目を丸くする。

 こいつは何言ってんの? 

 冗談だよね……?


「退学になりたくないんだろ?」

「う、うん……」

「なら俺のセフレになれ。わかったなぁ?」

「……」


 本当は拓哉とセックスなんかしたくないっ。

 和馬以外の男に体を触られたくない。


 けど拓哉とエッチしないとアタシと和馬は退学になってしまう。

 だからっ、

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