第11話 覚悟
眠い・・・。
緊張のせいだと思うが寝たと思ってもすぐに起きてしまい途切れ途切れの睡眠になってしまった。
ガラっ・・・
教室の扉を開けるとそこはいつも通りの風景。友達と話をしている者、机に突っ伏して寝ている者、何もせず座っている者、様々だ。
「おはよう。」
「おはようございま~す。」
けだるそうに自分の席にもどる生徒たち。
「え~、相原、安西、遠藤、小原・・・。」
出席を取って行く。呼ばれた者は「はい」と返事をしていく。いつも通りの光景で何でもないルーティン・・・だが、今日は内心とてつもなくドキドキしていた。
美都綾乃。
視界の端でその姿をとらえる事は出来ているが、しっかり見るこは出来ない。一体美都はどんな顔をして私を見ているのだろうか?このままマ行まで行かなければいいのに、なんて考えてしまう。
「浜辺、辺見・・・美都。」
「はい。」
「茂木、柳・・・。」
何事もないように美都の出席をとる。しかし顔を確認する事は出来なかった。もしかしたら美都の時だけ声が上ずっていたかもしれない。
美都は今どんな事を考えているんだろうか?
・・・・。
当然だが考えても想像も出来ない。しかし緊張していた朝礼はなんとかクリアした。あとは授業・・・そして答えを伝える。
いつ?
どこで?
学校で?
いやいやいや、それはない。
だったらやっぱり電話だろう。教室に入るまで散々考えたのにまた考えてしまう。全く落ち着かない。
「それじゃあ、一限目の用意しているように。」
「は~い。」
そう言って教室を出る。そして帰り際に一瞬美都を見る。
「・・・。」
何事もないように授業の準備をしている。
何を考えているのだろうか・・・。
結局学校では何も話す事が出来なかった。
「・・・。」
今、目の前にはスマホがある。かけなければいけない。美都は待っているはずだ。
すぅ。。。
と息を吸い込み深く吐き出す。そして美都への発信ボタンを押す。
プルルルルル、プルルルルル、プルルルルル、と三回目のコールの時に「はい。」という美都の声が聞こえた。その声はとても落ち着いていた。
「ああ・・・えっと・・・電話しました。」
「知ってます。」
自分でもわけの分からない事を言う。
「えっと、昨日の答えを伝えようと思うんだけど。」
「ちょっと待って下さい。」
「え?」
「電話で言われるんですか?」
「・・・そうしようと思ったんだけど。ダメ?」
「ダメです。直接がいいです。」
「・・・。」
「どんな答えでも構わないんで、ちゃんと会って答えを聞かせて欲しいです。」
チラッと時計を確認すると9時を回っている。夜に出歩かせるのも不安だし、親に怪しまれないだろうか。
「大丈夫です。遅い時間とかにコンビニ行ったりするんで。言えば特に怪しまれることはありません。」
「・・・。」
こちらの心を見透かしてくるかのように答える。
美都の言う通りこれはちゃんと話した方がいいのかもしれない。
「じゃあ、分かった。そっちに近くなったらまた連絡する。」
「はい。」
電話を切った。
「・・・。」
そして身支度を整えて家を出た。
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