9話

領都出身で次男だった父は15歳になってすぐに

ダンジョンで一攫千金を夢見て王都に行くことにした


領都では負けなしの剣の使い手だった父は意気揚々と

ダンジョンギルドの門を叩いた


ダンジョンギルドですぐにギルドの洗礼を受けることになった


ギルドでダンジョンプレイヤーの登録をして、すぐに他のプレイヤーの前に立ち

「俺がオーレス領、随一の剣術使いアルバートだ! 俺とパーティを組んで

ダンジョン攻略をしたいやつを募集だ、条件は強さだけだ、誰かいないか?」と大声で言ってやった


父の若い頃はだいぶ痛いヤツだったみたいだ......


「おいおい、威勢だけのヤツなんてごまんといるぞ」と

いいながら盾と鉄製のこん棒をもった男が近づいてきた


「おっ!さっそく応募か!?」

「違う! 普通、新人は自分から頭を下げてお願いして回るもんだ

威勢がいいのは結構だがお前の価値を全く示していないのに偉そうにそっちから条件をつけるな!」

男は苛立ちながら言ってきた。


「だがまぁ俺たちのパーティは今、前衛を募集しているところだ、

条件は強さだけだどうだ試しに挑戦してみるか?」

「そうだな、ダンジョンプレイヤーがどの程度か知るにはいいきかいだな」

「こいつまた減らず口を叩きやがって!」


男はギルドの受付に練習場の使用許可を取りに行った

「おい、ついてこい」

ギルドの裏口から外に出るとそこにはぐるっと木の柵で囲われた場所があった


練習場の倉庫から木剣などをとってきてお互い木の装備で準備をすませる

「よし、どっからでもこい」男が木の盾とこん棒を持って言う

「いくぞ!」勢いよく飛び出し切りかかるが盾で軽くいなされこん棒を打ち込んできた


「あぶな! ふぅー」よく考えてみれば今までは剣術での戦いしかしてこなかったので

相手の動きが読みきれない、どうしようか......

「まぁ考えてもしょうがない、いくか」といいまた飛び込んでいく


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」と盾で受けきれなくなるほどの連続で打ち込んでいく

「おっおっ、なかなかやるじゃねぇか!」男はなんとか連打をしのぎきった


「もう少し速く打つか」と、さらに速く打ち込んでいく

「おい、おいおいおいおい!?」ついに受け切れなくなり頭を殴打された男は

「あいた! ストップ、ストップやめだやめ」男は手を振り制止した


「威勢だけじゃなく腕も立つようだな! よし合格だ、パーティに入れてやる」

「えぇ~そっちが負けたのに偉そう」と悪態をついていると


「終わったか?」と言いながら3人が近づいてきた

「あぁ、コイツで決めた」と盾の男が言った

「いやいや、まだけっていでは......今日からお願いします!」


近づいてきた3人を見たら、いや1人しか目に入らなかった

一目惚れだった。

王都にはいやこの国、この世界にはこんなにも美しい女性がいるのか。


彼女はポーターの役目を担っていた

ポーターは荷物持ちだと思われがちだが、

前衛を花形だとすればポーターは要だ

ポーターが崩れるとどんなパーティでもすぐに敗走することになる


見た目の美しさとは裏腹に力持ちで大荷物を持ち

ショートボウの使い手でさらに水と雷の魔法が使えるエキスパートだったんだ


どうにか口説き落とそうと手を変え品を変え頑張ったがダメだった

そんなある日、斥候のミスから狼のモンスターの群れに囲まれてしまったんだ

みんなで逃げようとしていたとき、愛しのポーターが取り残されたんだ


そのとき俺は、いつも以上いや限界突破の活躍でバッタバッタと切り払い

モンスターに襲われていた彼女を救い出したんだ

まるで姫を助ける英雄のように

それがきっかけで付き合うようになったんだ


「そうだったよな、エマ」

「そうね、あのときは! カッコ良かったわ」

「いやいや、今もだろハハハ」


途中から気づいていたが冒険譚を聞いていたつもりが両親のなれそめを聞かされていた


俺はそのすぐ後、王都で開催された剣術大会に出場したんだ

優勝商品のバラの形の宝石を母さんに贈るためにな

順当に勝ち進みいよいよ決勝まで進んだが


相手は当時、騎士団のホープと言われる実力者だった

父さんとそいつは試合が始まっても動けなかった、お互いの幻影と闘っていたから

何度シミュレーションしても決め手にかけて確実な勝ちのイメージができなかった

 

「まぁ考えてもしょうがない、いくか」といい飛び込んでいった

何度も斬り結んでなかなか崩しきれないことに業を煮やして一撃必中の技を考えて

相手の顔めがけ火魔法を放った、相手が驚いたすきに見事な1本をきめたんだ......


そう剣術大会で魔法を使って反則負けになった......


相手に何度も頭を下げ謝っていたら、相手は笑いながら

「まさか魔法がくるとは、驚いて身を固めてしまったよ、私ももっと精進せねば」と許してくれた


「そいつも今や騎士団長を務めているんだから、俺も士官しとくべきだったかな?」

何度か士官の話も来たが固っ苦しくて断ったんだ


あのときはダンジョンが楽しくて仕方なかったんだ


でも10階層のボスを周回して魔石を集めていたとき、異変が起こった

茶色いはずの熊のモンスターが黒かったんだ

通常の強さと全然違って、たった一撃で盾役が吹っ飛ばされた


そのモンスターに素早く近づきヒットアンドアウェイで闘ったが

何度目かのとき タイミングをずらされて斥候が頭から叩き潰された

だがその隙をついて盾役が熊の腕を抑え、俺が首に剣を刺して、倒した

倒したモンスターからは、通常の3倍以上の大きさの火属性の魔石が落ちた


心も体もボロボロになった俺たちは斥候のプレートをもってダンジョンをでた

宿に戻りそこで話し合ってパーティを解散することにした

俺たちは先に進むことを諦めたんだ。


ギルドで魔石を換金したら3000万ジェニスになった

パーティメンバーで分け斥候の分はプレートと共に斥候の奥さんに渡した


みんなで何度も頭を下げた

ダンジョンプレイヤーはいつ死んでもおかしくない仕事だが

奥さんの泣き声はいつまでも耳に残った……


その後、領都に戻り母さんと結婚したんだ


そしてこの村の村長交代に、幼馴染みの今の村長がなることになって

一緒にくることにしたんだ。


「おじさんは義父と幼馴染みなんですね」

「そうだ、あいつとは良いことも悪いこともいろいろやったなかだ! ハハハ」


それからも父は母から止められるまで上機嫌に話を続けた。

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