第6話

子供が行きそうな場所はどこだ!?

そういえば昔テレビで遭難した子供はずっとまっすぐ進むことがあると言っていた

ならまずは真っ直ぐ道なりに行けるとこまで行ってみよう


焦る気持ちと進まない小さな体のバランスの悪さで何度か転びながら

村はずれの肥育農家の農場に着いた

「ハァハァ いないか!?」と辺りを見渡すと

犬が1匹、つんである藁に吠えている


「メアリー! メアリー!」と言うと

「シリウス? シリウス!」と返事があった

メアリーはあの中にいる、つんである藁が4つほどありその隙間にメアリーはいた


犬はたぶんこの農場の牧畜犬なのであろう

野良犬のように噛みつき襲いかかろうとするのではなく

吠えて追い払おうとしているように見える


「メアリー! 僕が犬を追い払うから、呼んだらすぐに出てきて逃げるよ」

「あぶないよ!」

「大丈夫!必ず救い出すから」

「わかった」


僕は犬に向かって石を投げつけた、犬はすぐにこちらに向き直った

すぐさま一定の距離でこちらに吠えてくる

やはり襲いかかってはこない、でも4歳の体だと犬が大きくて怖い


勇気を振り絞り犬に向かって走り

「ファイアフレイム」火魔法で攻撃した、一か八かだったが日々の鍛練の賜物か

いつものロウソクの火ではなく

80センチぐらいの炎がでた


犬の顔に炎があたり、犬はすぐに大きく離れた

「いまだ! 走れ!」大声で叫ぶ

メアリーはつまれた藁の間から走ってきた


メアリーの手を掴み「逃げるぞ」と走って農場から逃げ出した


ハァハァと荒い息を吐く

犬は農場の外に僕達が出ていったので追いかけては来なかった

犬にファイアフレイムを使ったが毛を焦がす程度しか効果がなかったみたいだ

良かったんだか悪かったんだか、そんな事を考えていると


「シリウスたいへん! ち! ちがでてる」

あぁ走って何度も転んだからな、「大丈夫だよ」と返事をしたら

メアリーが擦りむいた膝に手を当てて「いたいのなおれ、なおれ、なおれ」と呟きだした


前世でいうところの、いたいのとんでけって感じで、子供相手には一般的なまじないだが

傷口を直にさわる不衛生な、まじないなので、家では頼んで止めてもらった


まじないを一生懸命するメアリーの顔を見ると


瞳が......瞳の色が変わっている!?

薄い琥珀色の瞳が虹色になっている


瞳の色の変化に驚いていると

傷口に当てている手が僅かに光っていた


何が起きているのかわからず見ていると

さっきまであった僅かな痛みが無くなっていることに気づく


「メアリー痛いの治ったよ」と言うとメアリーが手をどけた

「!? 治ってる」、メアリーが手をどけた場所にあった傷が無くなっていた

「よかった、もういたくない?」見上げてくるメアリーの瞳の色は元に戻っていた

「う、うん痛くないよ」


立ち上がり歩いて帰り始めた

歩きながら考える、この世界の魔法は4種類

火、水、風、雷の4つだけとされている......


メアリーが使ったのは何だ?

傷が治ったから回復魔法か?

傷がもとに戻ったから時間魔法か?

時間停止モノの9割はヤラセだが時間逆行はどうなんだ?


なんだか判らないがもしかしたらこの世界の魔法はもっと可能性があるのではないのか?

魔法を覚えるには最初に詠唱して、素質を見極める必要がある

だとするとメアリーはその詠唱を知っている!?


「ねぇ、メアリーは魔法の詠唱......まほうのれんしゅうしたことある?」

「ううん ないよ」

「まほうのことばとかしらない?」

「しらないよ」


使えねぇ!百歩譲って使えねぇ!


あっもしかしたら、いたいのなおれ、が詠唱文?

違うか、もしそうならまじないで反応した人がでてきて

もっと有名になって魔法教本ぐらいには載っているはず


あたりが暗くなってきた頃メアリーの家にたどり着いた

おばさんが外に出てそわそわしているのが見える

「ただいまぁ」

「メアリー!心配したのよ」おばさんから怒ってるような安堵のような声がでる


「おばさん、ごめんなさい」と謝ると

おばさんは「この子を見つけてくれてありがとう、シリウス君は怪我とかしてないかい」と

聞いてきたので

「転んでケガしたけど、メアリーが魔法で治してくれた」と言うと


おばさんの目がギョッと見開かれ

「メアリーが治したの?」とあわてて聞いてきた

不味かったか?でも言ってしまったので「うん」と答えた


「誰にも言わないで、お願いだから誰にも言わないで下さい」と

僕の肩を掴み懇願してきた!?

4歳の子供相手にちょっと様子がおかしいぞと思いつつ

「僕、誰にも言わない」とはっきり言った

「ありがとう、約束ね」と念をおされた


1人で帰れると言い、メアリーの家から帰った

そこには、見たことのない鬼の形相の母が待っていた

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