第5話

春になり農作業が本格化してきたので

近所のメアリーという同じ年の明るいミルクティーベージュ色のロングヘアに

薄い琥珀色の瞳の白人の女の子と

2人で留守番する日々が続いている


兄姉はもう立派に作業を手伝えるようで昼食後は夕方まで

完全に2人だけで過ごすことになっている......


4歳相手になにをして過ごすか考えてみたが

どうもすぐに飽きてしまう

メアリーがじゃなく僕がだ!

メアリーはきっと一日中オニごっこでも楽しめるのだろうが


前世もちには退屈でしかたない

4歳が遊ぶものを思い浮かべ紙飛行機やお絵描きなど、どうだろうと思ったが

紙1枚B5サイズぐらいで250ジェニスとなかなかの高級品だ、子供が遊ぶと10枚や20枚なんて一瞬で使ってしまうだろう。


紙はまだまだ高価なもので村の商店にも置いているが枚数を聞いて奥から取り出してくる物で

家では父が見廻りの日報を書くときぐらいしか使わないで

机の木箱のなかにしまっている


それを取りだし遊んでいるのが見つかれば

どうなるのかは火を見るより明らかだ。


家にある玩具といえば

兄、バージルが赤ん坊だった頃からあるであろう

歯形がいっぱいついた積み木


姉、アンナが遊んでいた木の人形とママゴトセット


メアリーはいつもオママゴトをしたがる

女の子がオママゴトをしたがるのは世界共通なのだろうか?

いやここは異世界なので宇宙共通?

あれ、異世界って同じ宇宙なのか?

異次元というか違う宇宙なのだろうか?

もし同じ宇宙ならば移動することは、できる可能性はあるのだろうか?

違う宇宙ならば宇宙はいくつもあって魂はどうやってここにきたのだろう......


「・・うす」「シリウス! 聞いてるの?」


メアリーの顔が怒っている

ついつい退屈すぎて自分の思考に意識が持っていかれていた。


「そうだ! メアリーかくれんぼしないかい?」

「かくれんぼ? うんいいよ!」

「じゃあまずは僕がオニをするね」僕は目をふさぎ数をかぞえた

「1、2、3、4・・・もういいかい?」

「もういいよ」


たぶんクローゼットのなかだろう、メアリーを探す振りをしながら

僕は本を手に取りながめた、


この国の宗教の成り立ちを書いた神話の本だ

本はかなり貴重なのかこの家には2冊しかない、魔法教本と聖典神話の本だけだ

他にはパピルス紙のようなものが箱に分類されて入れられているが

物語とかではなく魔物の倒しかたなどが書いてあった


ペラペラと神話の本を読みつつ「いないな~」と言っていると

うまく隠れたつもりでいるのかクスクスと

笑い声がクローゼットから聞こえてくる


そろそろ頃合いかと思いクローゼットをあけ

「みいーつけた」とメアリーを見つけ出す


「ハハハ なかなか見つからなかったでしょ」とメアリーははしゃいでいた

「じゃあ次は僕が隠れるね」

「1、2、3、4・・・もういいかい?」

「もういいよ」


僕は本を持ち2階の両親の寝室に入った

「子供は2階に入っては行けません」と母から僕とメアリーは言われていたので

とうぶんは時間が潰せるだろうと思いながら本に目をおとす。


この国の宗教は神話の始まりが「照らせ」から始まる

一神教ベースの多神教で創造神がいてその子供のそれぞれ何かを司る神々がいる

さらにその神達と人族との間に生まれた子供が英雄とされている。


司る神のページを読んでいると[不和と賭事の女神 スリエ]の一文に目が止まり

嫌悪に似た感情が湧いてきた、なぜかイライラが止まらなく、本を閉じた


「シリウス、みつけた! ダメなんだよ2階に入っちゃ」とメアリーがきた

イライラがおさまっていなくてつい大きな声で

「うるさい! あっちで1人でママゴトでもしてろ!」

あっ!!言ってしまった............


メアリーの目にはいっぱいの涙が貯まってきた

ヤバい!

「うわぁーん うわぁーん シリウスのバカ うわぁーん」


メアリーは泣きながら出ていってしまった......

どうしていいかわからない、メアリーは家からも出ていったようなので

たぶん親のところに行ったのであろう

さすがに悪かったと思うので、帰ってきたら謝ろう。


夕方になり家族が帰ってきた、メアリーはどこかと探したがいない

「!? メアリーはどこ?」焦って母に聞く

「ここに居ないの?」と母の顔が険しくなる


「ケンカして怒って出ていったから、おばさんのところに行ったと思ったのに......」

心が焦る、ヤバい! これはヤバい! 早く見つけないと!


僕は家を飛び出した

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