第7話 ネオスザウルス

 「僕が銀河獣の光線を受けたとき、確かにバリエルの意思を感じた」

「親父は何か言ったか?」

「彼は、強くなりたかった。ただそれだけだった」

バリエルは、かつてガイア人の戦士だった。六使徒のようにスターを持つ戦士の指示で戦った。バリエルは努力したが、期待に応えられなかった。バリエルは強さを求め、霊界ガイアが創った人工太陽の光を盗み出した。その結果、バリエルは強すぎる光を浴び、時空の歪みの先にあったテラで存在が消えた。反対に、暗黒物質が生まれ、ミズーリオが共に時空の歪みの先に入ってディスガイアの王となった。その暗黒物質に集まった怪獣が合体して、銀河獣が誕生した。

「親父はやってはいけないことをした」

「彼は、強くなった。でも、それは望むものではなかった」

「親父がやったことは許される事じゃない!それで十分だ!」

シードは銀河獣に向かって、腕を交差し、光線を放った。

「バリウム光線!!」

銀河獣は呻き声を上げた。

「親父!目を覚ませ!!」

「シード。今、親父と言わなかったか?」

「アルフレオ師匠。あれは、親父の後悔で出来た化け物です」

「そうか。よし。全員で力を合わせ、バリエルを解放してやろう」

「「了解」」

八人は頷き、銀河獣に向かった。激しい攻防が行われた。その中で、テラを死守することはわすれなかった。

「私たちも加勢する。行け、ミクラス!ウインダム!アギラ!そして、ジョー!」

「セブン!感謝する」

遅れて駆けつけたセブンらが加勢し、銀河獣はついに倒された。レイとシードが呟いた。

「やった、か」

「じゃあな、親父」

その時、全員の脳裏に声が響いた。

「よくやった。皆の者」

「その声は、長老様!」

「アルフレオ。元気だったか」

「はい。長老様こそ、お元気でしたか」

「当然だ。これでもう銀河獣が出現することはない」

「それはどうしてですか?」

「私は、あることをきっかけに、時間遡行を繰り返している。その繰り返しの中で、銀河獣がテラに現れるとき、他の場所に現れるときと比べて活発になった。原因を考えたとき、バリエルの本体が眠るテラに反応していると見た。そんな中で、テラは銀河獣によって何度も滅んだ。何度も繰り返した。今回はシードがテラに辿り着けたことが勝因だった」

「その言い方だと、俺が何度も辿り着けなかったみたいじゃないかよ」

「その通りだ。シードがテラに着いたときは、もうテラが滅んだ後だった。しかし、今回は早く着いた」

「やっぱり俺がいないとダメか」

「その通りだが、調子に乗りすぎるな。他の者も気を落としすぎるな。全員何度もよく戦った。いや、一度だけか」

「ところで、結局、どうして銀河獣が出現することがないのですか」

「それは、バリエルが関わっているからだ。おそらく、バリエルは全力を出せるこの場所で負けたことで、死を受け入れることができたはずだ」

「諦めがついた、ということですね」

「ああ。だが、バリエルの息子がこれだけ強くなって驚いた。あと、ミズーリオ、大変だったな」

「かつての過ちの分なのだ。父上には申し訳ないことをしたのだ」

長老はかつて霊界ガイアの長であり、現在のガイアの長、アナスタシアの妻、ミズーリオの兄である。長老はガイア人の中で、最も優秀な戦士に剣を贈ることを決めたことがあった。その時、戦士だったミズーリオは人工太陽の光に触れようとしたが、バリエルと違い、未遂に終わった。しかし、僅かに生まれた暗黒物質が剣に宿り、動き出した。それを見て、長老は剣を掴んだ。そのまま、長老は剣に連れられて時空の歪みに入り、現在に至る。

「私はいつどこに飛ばされようとも生き延びる」

「兄上らしいのだ」

「アグルはテラに何度も訪れていたな」

「はい。テラを守ることができ、心から安心しました」

「そうか。では、私は再び時間旅行へ出かけよう。剣が騒がしいのでな。さらばだ」

全員の脳裏から声が消えた。

「なにがともあれ、無事に済んで良かった」

「ああ、そうだな」

「レイ、アン、ドゥ。君らもテラに居続ける必要はない」

「いえ。僕はこの星に残ります」

「そうか。いつでもガイアに帰って来ていいからな」

「はい」

「じゃあな、レイ」

「じゃあね、シード」

セブンとアグルとラウスは別れを見送った。

「私たちも行こう」

「ああ。宇宙にはまだまだ怪獣がいる」

「またいずれ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る