小籠包ファンの手記

ミンイチ

第1話

 私は現在、中国に来ている。


 中国には商談で来ているが、中国の文化に触れてこいという名目で少し長めの滞在期間が予定されている。


 中国には上司と一緒に来ていて、商談が終わった日の夜までは体調が良かったものの、次の日の朝に急にお腹を壊して、ホテルに篭り切っている。


 そんな上司は『どこに行くかを決めてないなら俺が行こうと思ってたところにいけ』と言って私をホテルから追いやった。


 彼の言う通り、私はこちらに来てからどこに行くかを決めようと思っていたので、先ほど共有されたプランシートに従うことにした。


 しかし、彼の看病があったので半分ほどがいけないようだ。


 いくつかあるプランの中から、有名な寺院に行き、その後で近くの小籠包専門店に向かうものを選んだ。


 まずは、乗合タクシーに乗ってホテルからその寺院の近くまで行く。


 降りたところからは帰りに立ち寄るお土産屋さんの目星をつけつつ歩いて進む。


 人の波に流されつつも、なんとか目的の場所に着いた。


 着いたのはお昼とおやつどきのちょうど真ん中あたりの時間であったために、お店はサレなりに空いていた。


 私は店に入り、小籠包を注文する。


 人が少ないのもあって、注文したものはすぐに届いた。


 豚の肉をメインに使っているらしく、豚肉のスープのような匂いが漂ってくる。


 小籠包の食べ方も上司から共有されたものに載っていた。


 まず、小籠包の上の方を掴んで破らないようにレンゲの上に載せる。


 次に、その上で包みを破ってスープを飲む。


 最後に、個人の好みでショウガをつけてタレにつけて食べる。


 その通りに食べてみると、日本で食べたものよりも格段も美味しいかった。


 濃厚な豚の旨みがスープに溶け込んでおり、これ自体が一つの料理として完結していると言われても信じれるほど美味しかった。


 そして、スープの抜けた小籠包もスープが抜けたにもかかわらず、いや、抜けたからこそ他の具材の味がしっかりとわかる美味しさだった。


 私はこの味に感動していると、気がつくとホテルの自室に帰ってきていた。


 これが、私が小籠包を好きになったきっかけだ。

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小籠包ファンの手記 ミンイチ @DoTK

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