第2話 アタッシュケース

プラケースの中にあった拳銃の名称を調べるのに自室でPCを開く。

起動を確認し手元の拳銃の検索を始めた。

アタッシュケースから取り出した拳銃は通称リボルバーってやつだ。

シルバーに輝くリボルバーと小さめのケースに収まった箱2つ。その他もあるが後回しだ。


リボルバーはルガーレッドホークらしいことは分った。リボルバーに357Magnum及び357Magnumと刻印されてはいる。

8ショット、つまり8連装のシリンダーに2.75インチのバレル。そして硬い木のグリップが付いた丸いボタンフレームを備えたステンレススチールモデルだと注釈にはある。

ルガーレッドホークらしい、らしいというのは手元の拳銃とたかが検索程度の平面画像や映像と手元の実銃を比べて見ても本物なのか分らないからだ。 


特徴的なのがリボルバーにはレーザーグリップというのが付いていた。

レーザーがシリンダー下部に装備され、ハンドガンのグリップを握ればレーザーが対象物に照射される優れものだ。YouTubeの動画説明によると、グリップの中のボタン電池で動作するらしい。


こんなもの拾っちまってどうすんだよ。と思いつつも、

毒を食らわば皿までというヤバいもの見たさの好奇心につられ、何が出るかなと、

続いてアタッシュケ-スから別のものを取り出して開けてみた。


新聞紙に雑に包まれたものから出てきたのはチャック付きビニールに入った乾燥済みの葉っぱだった。あー、これ例のやつね、はいはいもうどうにでもしてくれ。


それと、これなんだ?綺麗な色だな。 発砲スチロールで型取られたケースの中から取りだした物は透明な小瓶の中に薄いブルー色と薄いピンク色がミックスせず綺麗に上下に分かれた不思議な液体が入っていた。


ご丁寧にそれぞれの用途の説明書が英文で印刷された用紙付きだ。ペンタゴンのスパイ道具じゃねーだろーな。俺はあくびを噛み殺しながら誰ともなく呟く。

 

どうしても葉巻に目が行く。気になって仕方ないからだ。もう一度葉巻の匂いを嗅ぐ。幸福感あふれる魅惑な香り。

「葉巻の虜になりそうだぜ」

吸う?いやいや、葉巻状のマリファナにLSDやヘロインでも混じってたらシャレにならない。


時計を見る。

「5時か」

ソファーベッドに身体を沈めながら、葉巻の好い匂いに身も心も包まれてしまい、猛烈な睡魔に襲われた俺はまた後でな。とアタッシュケースのブツに暫しの別れを告げ俺は眠りに落ちていく。眠りに落ちながら

「あの葉巻、癖になる好い香りだった.よ..な...」


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


気持ちいい目覚めと共に壁掛け時計を見る。

「12時前か、割とよく寝たな」

と呟きながらテーブルとフローリングに散らばる物を見つめ、偶にはいいさ、と本日の営業は臨時休業にした。


「なんだか気分は上々だな」とベッドから抜けだしシャワー室へと向かう。

シャワー室を出て着替えを済ませた俺は冷蔵庫からビールを取り出す。昼間からビール?運転するかも知れないのに?と世間は問題視しようが、

「ほっとけ俺は常識とかモラルという遺伝子が無いんだ!」というのが持論だ。


さてと今朝の続きをやるか。

アタッシュケースの中には案の定というか、予想通り弾薬ケースが2つ。合わせて48発の弾があった。

手に取り弾の裏を見る。これも雷管の回りに打刻されている文字は357CUSTOMIZEとあるだけだ。

いや、357MAGNUM+Pというのもある。48発中の24発は357+Pという強装弾だ。「驚いたな、強装弾など初めて見たぞ、、」


で、まだある。付属の英文説明書だ。先ずは英文で印刷された用紙の解読作業だな。起動中のPCで説明書を和文に変換する。


和文に直し説明書が何が書いてあるのか理解した俺は追加の説明内容を要約すると、

357マグナム弾頭の中心には穴が空いて空洞になっいていた。

その穴の中(空洞)にマイトトキシン改という毒薬が仕込まれており、弾頭の鉛は露出しておらず封入された毒薬を覆うように薄いメタル金属にで覆われている。

という説明がなされていた。


(改)ってことはマイトトキシン毒の通常の倍の毒素?それ以上?使うつもりはないがどの程度強化された毒なのか証明しようがない。

ホロー(空洞)ポイント弾改とでも名付けりゃいいのだろうがこのかた暗殺道具にゃ縁がない俺だ。

「戦闘でも始めるつもりだったのかお前の主人は、、暗殺と必殺、LDゼロだな、、」

気にするな。ただのシャレだ。


次のブツ、白色カプセル収納ケースを手に取る。ケースの中のカプセルはカプセル同士が干渉しないよう並べてある。

白色のカプセル剤は2ダースで計24カプセル。これも説明書によると中身は即効性の猛毒らしい。

続きの説明書には000号カプセル、アコニチンアルカロイド改1gと記載されていた。


2度めの(改)の登場だぜ。

アコニチンで調べるとトリカブトに含まれる毒らしい。吹き矢とかで暗殺に使うのかもな。忍者御用達の毒ってイメージだな。

驚き桃の木山椒の木の連続だぜ。暗殺道具というか小型の毒兵器だろ。

拳銃不法所持に毒テロ兵器でお上のお世話なんてシャレになんねーや。 

それで迷惑する身内などいないが、どちらにせよ届け出ても容疑者程度じゃ収まりそうもない。つまり藪蛇ってやつだ。自分が巻いた種とはいえ二進も三進もだぜ。


他にはシガーカッターとチャック付きビニールに入った乾燥済みの葉っぱだった。

「あー、これ例のやつね。(マ)がつくやつ。はいはいもうどうにでもしてくれ、」

「次だ次」


次に葉っぱの横にある小箱の中身を取出すと、

発砲スチロールで型取った容器の中に透明な小瓶があり、ブルー色とピンク色がミックスせず綺麗に上下に分かれた不思議な液体が入っていた。

「神秘的な色合いだな。で、なんだコレ? 」

液体の説明箇所は意味不明なスラングで述べられておりチンプンカンプンで内容が全く分らない。 


まてよ、説明項目にグラス(葉っぱ)に液体を浸し乾燥させた葉巻が永遠の∞オピウムクイーンとある。

その葉っぱを2層に分かれた液体に浸し乾燥させ完成した物がアタッシュケースの中にあった3本の葉巻だ。

で、液体の名称は永遠の∞オピウムクイーンだとさ、洒落た呼び名だぜ。


「やっぱりな。マリファナに合成麻薬かヘロインでも染み込ませた葉巻ってやつか」

「じゃ見なかったってことで無視しょう。危ねー物は深く詮索しないのが長生きの秘訣というしな。諺でも知らぬが仏っとけと言うだろ。って、、言わねーか(笑)」

一応ネット動画で葉巻の巻き方を見て見る。葉っぱ巻き巻きからの、、あーなるほどねって感じだ。


で、と、昨夜拾ったのはどっちだ?

アタッシュケースを見る。両方とも黒だ。両方とも似たようなサイズだ。両方とも黒革、、どっちがどっちかサッパワイヤー(さっぱりわかんないや)


拾った方は鍵は掛かっていた?その場で確かめてない。忘れ物の方は鍵は開いていた?同じく確かめなかった。

(あ、詰んだな)


片方のアタッシュケースは施錠されており、もう片方は解錠されていた。

仮に拾得物と捉えて持ち主に届け出ても、こっちは最初から開いてました、はいそうですか。で済むわけがない。相手側からすれば俺が開けたと、そうなる。


もし、アタッシュケース忘れの昨夜の客が現れて、ではお客さまのお忘れ物は鍵・が・開・い・て・い・た・こちらですか、それとも鍵の掛かっている方ですか、とでも言うのか。


で、客はおかしなことに気づくよな。なぜ俺が同じタイプのアタッシュケースを2つ差し出したのかと。

相手側としたら2つのアタッシュケースをなぜ選ばせるのか。もしヤバイ方のアタッシュケースを選択すれば中身を知ってる俺が脅迫恐喝か刑事を張り込ませているとか。そりゃ色々勘ぐるよなぁ、、


悪気じゃなくても信じねーよな。で、仮に鍵の掛かってる方を差し出す。で、違ってたらいい訳など聞かねーだろうし。相手をハメたと思われその瞬間にアウトだ。

こんなのに命を掛けてまで正解か不正解かのゲームはしたくないぜ。


へへ~おでぇかん様~おそれいりやすと御上に届け出たところで、、

どれもこれも俺の指紋でベタベタだし。

今更落とし物ですと刑事警察へ届け事の起こりを説明してもやつらは疑うのが商売。第一発見者を装った犯人扱いで逮捕拘留確定だ。


ヘタな好奇心は身の破滅か。じゃ、捨てにいくか。割り切りの良さが俺の特徴だ。


ブツを仕舞う前にもう一度包装フィルムの上から葉巻の香り嗅ぐ。たまらねーなぁ、誘惑というか魅惑と言おうか、もう間違いなく空飛ぶだろこれ。

葉巻だけでも取っときたいが、、止めといた方が身のためだなと思い直し葉巻の誘惑に別れを告げ、散らばるブツの指紋をなるべく落としながらアタッシュケースへ戻す。ついでに重しも入れた。 


アタシュケ-スの客は偶々拾った客に過ぎない。

が、毒を食らわば皿までなんか御免だぜ。と俺は車の助手席の下にあったアタッシュケースも無かった事にするためさっさと服を着替えると、2個のアタッシュケースと共に、行灯を取り外したままの営業車兼自家用車のクラウンへ乗り込み東京湾フェリー乗場へと向かう。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


東京湾フェリー乗場で所定位置に車を止め、施設内所定の乗船乗車券片道切符を買う。待ち時間の間フードコートで軽い食事を取った。フェリーの出港は19時15分。帰りはクラウンと丘走りだ。


順番で車ごとフェリーに乗り込む。そう、ブツをアタシュケ-スごと海に投棄することにした。人もブツもネタもヤバイものは全て海中へ投棄と相場は決まってる。

海の深さ×プラスαで証拠隠滅。第一捜しようがない。この程度のブツなら東京湾フェリーからポイでいいだろう。と決めつけた。


雪が降り始めた1月の外のデッキは薄暗いし寒いし人も疎らでいい案配だ。

アタッシュケースを投棄する程良いタイミングまでクラウンの中で待機する。

人に見られたくないしな。さてと一服するか。 


いつもの場所を弄るも煙草が無い。あ、煙草を忘れた。マンションに置いてきてしまったらしい。(おかしいな、テーブルにあった煙草、持ってきたと思ったんだが、、)


車の中にも煙草の買置きは無かった。東京湾フェリー内の煙草の販売はどうあれ俺は外へ出てウロウロしたくなかった。

車内にあるのは昨夜コンビニで買ったミネラル水2ℓのボトルとコーヒー900mlボトル、フランクフルト、ガム、チョコ、モンブランケーキ、サンドイッチに冷えた弁当。


いま人に見られることは避けたい。ある意味犯罪者の心理だろう。アタッシュケースの1つは助手席、緊張で煙草が吸いたくて堪らない俺は膝に置いたロックされてない方のアタッシュケースをジッと見つめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る