永遠の∞オピウムクイーン
ぶるーすにゃんこ
オピウムクイーン
第1話 拾った物
正月も3日を過ぎ季節は真冬の最中、偶々拾った長距離の客を降ろし、コンビニの横に車を止め暖房の効いた車内から冷えた外へでる。
帰路高速に乗る前の一服タイム中だ。偶の一服は俺の清涼剤だ。いい客だったな、と呟く。
「寒っ」
一服を終えた俺は暖房の効いた車中へ逃げ込む。
本日の営業はお仕舞いだが、帰りの高速に乗れば3時間は車のアクセルを踏みっぱだ。
タクドラってのは事故を起こさないために休憩は必要なのさ。
連続運転は注意力が麻痺する、特に高速走行は危険だ。一般ドライバーはその落とし穴気付かないからな。
そう、俺は個人営業のタクドラだ 世間ではいい客をつかまえて凌ぐのがタクドラの仕事だが、ここまでの長距離客は希だ。
高速乗る前にコンビニで何か仕入れてくか。俺は車のドアを開け深夜営業のコンビニに向かった。
帰路高速運行3時間の長丁場なのでついでにコンビニで用を足そうとするもトイレは使用禁止だとさ、コンビニ袋を下げて営業車のクラウンに乗込み用を足すためGSを探す。
GS探しの途中公園を発見。公園内にはトイレが併設されていた。ここでいいやと営業車のクラウンのドアを開け公園のトイレに向かった。
トイレで用を済まし、何気なしにトイレ横のゴミ箱をみると中に黒色のアタッシュケースが覗いて見えた。好奇心を刺激され、ゴミ箱のアタッシュケースを手に取る。
アタッシュケースの表面は黒革仕様で、一見高級そうに見える。
空じゃ無さそうだが捨ててある。と、そう勝手に解釈し、貰っとくかと持って帰ることにした。
「欲しいわけじゃ無い。中身を見てみたいという興味だけさ」
アタッシュケースを持ち公園を出た。営業車のクラウンのドアを開け助手席にアタッシュケースを置くとクラウンのエンジンを掛け帰りの高速道路へ向かった。
自宅近郊の高速道路料金所を出て自宅へ向かう前にお馴染みのGSへ寄りクラウンの給油を済ませ、助手席に置いてある拾ったアタッシュケースをトランクへ放り込むといつもの洗車を始めた。
客用のリヤシート清掃中、前の助手席シート下部から黒色のアタッシュケースがでたきた。色も黒で素材も革っぽい。公園のゴミ箱で拾ったアタッシュケースと似たようなタイプのものだ。
「今日はアタッシュケースの当たり日だな」
客に良くある忘れ物のテクだ。
営業車のリヤシートへ乗り客は眠くなると邪魔な物を前方の助手席や運転席のシートの下へ荷物を押し込むのだ。酔った客が偶にやるパターンだ
客も自分で持参しながら目前から荷物が消えると持参した筈の荷物そのものの記憶がとぶらしい、それが大切な物だとしても。
参ったね、、一応客には忘れ物しないよう注意はするのだが。
客の家が一軒家なのかマンションなのかも分らない。
通常は客を降ろせばそのまま走り去る。ある程度まで見送る事はあってもジロジロと見るようなことなどしない。
初見の客を乗せ高速で3時間、指示された場所は土地勘のないロケーションときたもんだ。
「しょーがねぇか、ま、組合に届けるしかねーな」
どちらにせよ警察だけは勘弁丸。交番や警察署でいい思いなどしたことがない。
ケースの中身は気になるが、2個目のアタッシュケースも車のトランクへ入れた。
洗車も一通り終わり個人と書かれた屋根の行灯を外しクラウンへ乗込んだ。途中の牛丼チェーン店で食事を済ませて自宅マンションへと向かう。
駐車場に車を止め、クラウンのトランクからアタシュケ-スを2個取り出し俺はマンションの部屋へ向かった。
先程コンビニで購入後袋詰めした商品は持つのが面倒で営業車の中に置いてきた。
玄関ドア横の表札には官能と殴り書きがある。官能達彦が俺の名だ。
ガキの頃は、いかんのう起つピコと揶揄されたりして親を恨んだもんだ。
そんな俺も今は31だ。
1LDKの部屋に入ると、アタシュケ-スの中身をチェックしたい気持ちを抑えてシャワーを浴びる。
数分後、こざっぱりした俺はバスローブで身なりを整えながら思う、
俺ちゃんワクワクしてないか (笑)
冷蔵庫から取り出したビールで喉を潤す。
2つのアタッシュケースは外見が似ている。
1個めのアタシュケ-スには鍵が掛かっていた。2個目の似たようなアタシュケ-スを手に取り呟く、「閉開部ポチったら開いたりしてなって開いたよ」
「ロックし忘れたのか」ロックされてないということは大した物じゃないのだろうな。」
じゃ中身を拝んでみようか。
ロックされてないアタッシュケースを開けた途端、脳を刺激するとても好い香りがした。誘惑の香りと言えばいいのか、魅了の香りと表現すればいいのか。
とにかく脳が揺さぶられて幻想でも見ちゃいそうな匂いだった。
「匂いのもとはなんだ?」
ロックされてないアタッシュケースの中には、大きめのプラケースや箱などがキチンと収まっている。
プラケースを取り出すとその下には見るからに怪しさ満点のブツが数点あり、ユーザーマニュアルと思える英文で印刷された説明書があった。
「他のも気になるが、それよりこの香りは一体、、」
香りの主は3本の葉巻だった。
包装フィルムに包まれた3本の葉巻からは脳を刺激する好い匂いがした。葉巻を包装フィルム越しに直接嗅ぐと天にも昇ったような心地よさと香りに脳が痺れる。
「マジで虜になるな、この匂いに、、」
「エレベーターが下降したようなフワッとした感覚に包まれ、天に登りそうだぜ」
匂いのもとの葉巻も気になるが、取り敢えず一際目立つプラケースを取り出す。
意外とズシっとした重みがあった。
が、そのプラケースの蓋を開けちまってから後悔するも後の祭りだ。
「これは、、不味いだろ、、」
あーあ、こりゃ凄いけど逆にアウトってやつだ。平常心を装うも、俺の心臓はパンクしそうだぜ。
そう思うも好奇心というやつには勝てない。
ケースの中でひときわ目立つ物、ピストルとか拳銃とか銃とか時と場合でコイツの呼び名はそれぞれだ。
本物、だろうな。俺は個人タクドラの他に以前外国人パブを経営していた。
過去形だ。
その仕事柄、女を仕入れにフィリピンマニラへ出かける。通称オーディションてやつだ。
その過程の詳しいことは抜きにするが銃の扱いには慣れている方だ。が、銃など扱い易く、ただ対象を殺せればいい。ので銃そのものに詳しいわけではない。
その現地オーディションも近頃のコロリという病でお手上げさ。店は閉めるしかなかった。
タクドラを始めたのも自分の店の客を店長やスタッフから俺の携帯へ連絡し、俺のタクシーで送るという一石二鳥に起因したのもだった。
(噂じゃ某国のウイルステロとか言う話もあるがそれを防ぐために世の中は遺伝子組換えワクチンを打ちまくってる。
世界いや地球規模の人体実験オーディションに参加する度胸は無いな。
(将来、人体にどのような変化をもたらすのやら、、)
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