アラフォー勘違いをする。

高橋さんが帰った後も筒が無く仕事を終えて帰宅する。途中コンビニで晩飯を買っているとスマホが鳴った。


誰だと思い画面を見ると、そこには大学時代からの悪友である生田康利の名前があった。


「もしもし」


『おう。生きてるか?久しぶりの生存確認の時間だぞ』


そう言ってふざけた感じで話しかけてくる生田。


こいつとは大学時代に出会ったんだが、お互いにバイトや遊びに明け暮れて、単位が絶望的に足りなくなり、仲良く大学を中退した仲だ。


「生きてるよ。急にどうした?」


『急にっつーか、いつもこんなだろ』


「まぁそうだけど」


電話をしながら会計をしてコンビニを出る。

家はすぐそこだから歩きながら話すことにした。


他愛無い話をしていると、家に着く。


「そういえばさ。俺今日変なことがあったんだよ」


『変なこと?なんじゃそりゃ?』


「いや、急にさ、こう・・心臓というか胸がドクンッってなってさ。ちょっと痛いというかなんというか」


『はぁ!?お前大丈夫かよ?なんか病気じゃ無いだろうな?』


「あ〜。やっぱ病気なんかな?それ一度きりだったんだけど・・」


心配そうな生田に多分大丈夫だろうと説明をする。


「いや、なんかさ今日新人の研修しててさ、それで今日の研修終わりに急にドクンッってなって・・」


『なぁ?それって女の子か?』


「研修の子?女の子だよ」


『・・可愛いか?』


「まぁ俺の中では・・」


すると、生田は盛大にため息を吐いた。


「なんだよ?ため息なんか吐いて」


俺が不服そうな声を漏らすと、生田はもう一度ため息を吐く。


『はぁ〜・・。あのさ。もしかしてだけどそれってその子にときめいたんじゃね?』


そう言われた瞬間。俺の心臓はドクンッと跳ねるように鳴り響いた。


「いやいやいやいや!そんなわけ無いだろ!?相手は一回り以上年下だぞ!?まさか!」


「私恋をしている〜♪ってか?一回りしたでも二回り下でも、好きになる時はあるんじゃね?」


焦り出す俺を無駄に上手い福◯雅治のモノマネで揶揄う生田。


「いや!絶対違うって!俺もアラフォーだし、もしかしたら病気なだけかも」


「まぁそれはそれでヤバいんだけどな。ともかく俺の勘では恋だと思うからさ。違うと思うんなら彼氏いるかどうかとか聞いてみれば?」


「いきなりそんなこと聞くわけ無いだろ!?それこそ勘違いされて気まずくなって、最悪辞めていくパターンだぞ!?」


『んー、そうかもな』


「だから聞かないからな!」


『あいよー。そしたら病院行け。ガチで病気だったらヤバいしな。まぁ違うと思うけど』


完全に俺が今更恋をしたと勘違いしている生田になんて言おうか考えるが、言葉が出てこない。


『それとは別の話なんだけどよ・・・』


俺に気を遣ってなのか。話題を変えて話を続ける生田。正直ちょっと助かった感はある。


俺の中でも、もしかしたら好きになったのか?という疑念はあったからだ。


でも流石にアラフォーにもなってそんな勘違いはしないだろう。


そう自分に言い聞かせて生田と会話を再開した。

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