アラフォー面接をする。
今日も今日とて忙しかったが、漸く暇が出来始めたため、休憩に入る事にする。
「じゃあ俺は休憩行くから。何かあったら事務所にいるし、声かけてくれ」
「はーい」
バイトの子達の返事を聞いて、事務所へと向かう。
コンビニで買ったおにぎりを食べながら、まずは在庫の確認と仕入れの量を決めようとパソコンへと向かう。
正直、休憩といってもこんなものだ。
事務仕事をしながらじゃないと人手も足りないので、仕事が終わらない。
あらかたの仕入れ注文を終えて、メールを確認する。
すると一件バイトの面接の応募があった。
さっきも言ったが人手が足りないのでバイトに来てくれるのはかなり助かる。
どうにか逃さないように面接をしなければと思い、相手のプロフィールを見てみる。
「お?大学3年生か・・・」
中身を見ると近くの大学の3年生の女の子だ。
名前は高橋カリン。
ぶっちゃけ、女の子の方が男がホールに入るよりも助かる事がある。
やっぱりむさい男よりも女子の方がうちの客層的にも良いんだよ。
まぁそう言うところは多そうだけどな。余談だが、この子の通う大学に俺も通っていた。
更にプロフィールを見ていくと、管理栄養士を取る学部に所属しているようだ。
これはワンチャンキッチンも行けるか?
両方入れたらシフトも回しやすくなるな・・。
そんな事を考えながら履歴書を読む。
「電話すっか・・」
とにかく面接をしないと何も決められないため、履歴書に書かれてある番号へと電話をかける。
3コールほどの間に相手が電話に出た。
「はい」
「こんにちは。私この度アルバイトの応募をしていただきました、カツドンヤ新浜店の宮崎と言いますけれども、高橋カリンさんのお電話でお間違い無いでしょうか?」
「あっ、はい!そうです!」
「この度はご応募ありがとうございます。早速なのですが、面接の日取りを決めたいと思うのですけれども、空いてる日を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「えーっと・・。早ければ明日とか空いてるんですけど・・」
明日か・・。俺のシフトは・・・。午後からだな。
「それでは明日の15:00はどうでしょうか?」
「はい!大丈夫です!」
「それでは明日の15:00からよろしくお願いいたします」
「はい!よろしくお願いします!」
「それでは失礼致します」
そう言って電話を切る。
電話の声はハキハキしてたし、別段悪い対応もなかったから良い子かもしれないな。
まぁそうは言っても実際に喋るとヤバいやつっているんだけどね。
この子は問題ないと信じておこう。
そんな事を思いながらふと時計を見ると、そろそろ休憩時間も終わりそうだ。
今はそんなに忙しくないだろうけど、あんまり長く事務所に引きこもっていると、バイトの子達がブーブー言うかもしれないから、行きますかね。
俺は少しだけ重い腰を上げながら、ホールへと向かった。
次の日。
昼から仕事場へと行き、面接の時間までは普通に仕事をする。
昼から入ったとはいえ、客が完全に途切れることはあまり無い。
この時間は客も少ないから、少ない人数でも回せるけどな。
そんな感じでしばらく働いていると。
カランカラーン。
店のドアが開く音がする。
「いらっしゃいませー」
そちらを向きながら100%の営業スマイルでお客さんを歓迎する。
「あ、あの・・」
そこにはこちらを向いて何か喋ろうと少し赤い顔をした茶髪でボブカットをした女の子が立っていた。
あー。これは面接の子かな?
そう思った俺は女の子に近づいていき声をかける。
「もしかして、面接の予約してた高橋さんかな?」
相変わらずの100%スマイル(営業)で高橋さんと思われる女の子に聞いてみる。
「は、はい!面接の予約をしてた高橋です!今日はお願いします!!」
少し緊張でもしているのか、声はハキハキとしているが、ちょっと詰まりながら返事をしてくる。
「はい。こちらこそ宜しくお願いします。じゃあ事務所で面接するからついて来て下さい」
「はい!」
なんか初々しくて良いな。
そんな事を思いながら高橋さんを事務所に案内する。
事務所の中に入り、椅子に座ってもらい、事務所備え付けの冷蔵庫からお茶を出して、紙コップに注ぎ、高橋さんへと渡す。
「紙コップでごめんね?ちょっと履歴書用意するから待ってて」
「え?あ、はい!」
急にタメ口になったからだろうか?高橋さんが吃りながらも返事をする。
それに頷き返して、PCから履歴書をコピーし、高橋さんの向かい側へと座り、改めて高橋さんを見る。
普通に最近の大学生といった感じの服装に、可愛い系の顔をしてる。ちょっと好みのタイプかも。
「えっと。改めて自己紹介しとくね。店長の宮崎圭介です。今日はよろしくお願いします」
「高橋カリンです!よろしくお願いします!」
元気いっぱいに返事をする高橋さんを見て少し素で笑いそうになりながら、100%スマイルで頷いて見せる。
それに違和感を持ったのか高橋さんは少し怪訝な顔をしてこちらをみる。
「あの・・、私何かおかしいですか?」
「ん?どうして?」
ヤバい笑いそうになったのバレたかな?
「えっと・・。なんか笑いを堪えてそうだったんで・・」
バレてーら(古)
「あぁ、ごめんね?ほら高橋さんが元気いっぱいだからさ。俺みたいなおじさんには眩しく写っちゃって」
「そんな!おじさんって感じしないですよ!私最初見た時、若いお兄さんだなって思いましたもん!」
「お、おう・・」
ガタンと音を立てながら机に手をつき立ち上がる高橋さん。
そんな彼女の勢いにかなり押された事で思わず素で返事をしてしまった。
「あ、す、すみません・・」
消え入りそうな声で謝りながら、更に顔を赤くした高橋さんが縮こまりながら席に着く。
「イヤイヤ。こちらこそごめんね?笑いそうになっちゃって。でもアレだよ?元気があって良いなぁって感じの・・。なんて言うか良い笑い?だからさ」
少し困りながらも、笑顔で高橋さんに喋りかける。
「その・・、ありがとうございます・・」
かなり恥ずかしいのだろう、耳まで真っ赤にしながら相変わらず消え入りそうな声で返事をする。
あー、なんと言うかさ、良いよね?若い子の特権っていうのかな?恥ずかしがりながら縮こまるとか。
俺がやったらキモすぎて動画を撮られて、全世界にハイ!配信!ってされて笑いものにされる未来しか見えんよ。
それはともかくとして、履歴書を見ながら、面接を続ける事にした。
ある程度質問を終えて、シフトにどの程度入れるかを確認する。
「それで週にどのくらい入れそう?」
「そうですね・・。週2か3くらい大丈夫です」
なるほど。面接をした感じ良い子そうだし、シフトもまぁまぁ入れるし、こちらから断ることはないかな。
「了解です。そしたらいつから働けるかな?」
「来週からでも大丈夫です!」
今日は金曜日だから、3日後か。それまでに制服も準備できるだろ。
俺の月曜日のシフトは・・。朝からだな。
「それじゃあ最初は仕事を覚えてもらわなきゃいけないから、月曜日の14:00から来てもらおうかな」
「わかりました!」
そう言ってスマホのスケジュールに予定を入れる高橋さん。
あ、そういえばMINEグループに招待しなきゃいけないな。
「高橋さん。番号教えてもらって良いかな?」
「え?」
そう言って彼女は顔を赤くしてこちらをみる。
「あ、その・・」
あれ?これってもしかしてなんか勘違いされてる?んなわけないか。
「うん。シフトの件で電話することもあるし、MINEを登録してここのシフト用グループチャットも招待したいからさ」
先に言っておくが、下心はない!
断じてないったらない!
あわよくば個人的にやり取りしようかなーとか、そんな感情はアラフォーおひとり様の俺には既に無いのだ。
純粋にシフトのグループチャットに招待するだけなのである。
誰に言い訳をしているのかわからない俺の心なぞわかるはずもない高橋さんは成程といった様子で頷いた。
「わかりました!番号は・・・」
ぶっちゃけ履歴書見たら一発で番号なんてわかるんだけど、やっぱり断りを入れて直で教えてもらった方が良いからね。
勘違いもされないし、いきなりおっさんからMINE招待されても戸惑うだろうし。
「参加しました!」
「了解。そしたら今日はこれでおしまいだから。また月曜日からよろしくね」
「はい!ありがとうございました」
そう言って笑顔のまま高橋さんは帰って行った。
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