第13話
二度目の目覚め。これが悪い夢だったらいいのに、なんて現実逃避をしてしまうほどにはノラの精神は頼りなく迷っていた。
ここへ連れ去られて初めて目覚めたあと。案の定というか、なんというか。やはり尋問と名のついた拷問まがいの暴力を受けた。彼らが言うには、偽竜帝を隠し立てしていた、という大罪をノラは犯したらしい。それで、現竜帝の怒りを知れ、と。偽の竜帝もすぐにここにぶち込むから楽しみにしていろ、と。
(ディオとリンドルムの騎士団が負けるわけが無い)
ぼんやりと霞みがかった意識が次第にクリアになっていく。そうなると、体の傷が痛みだし、ディオはまだ無事だろうかと不安になってくる。
視線を落とす。両足には大きな枷。そして、つい数時間前に付けられた裂傷痕。
「腱を切られるとは、な」
ほんとうに、ノラを逃す気は無いようだ。足の腱を切られては、動くことさえできない。嘆息して、不意に向かってくる足音に気づく。
ぎい、と牢のドアが開く。入ってきた男たちの数は、増えていた。
▷▷
帝国ドラッヘフェルス。そこは竜人の住む国。
竜人たちに与えられた黒竜の加護により栄える、巨大帝国。
そこではあらゆる幸せがあり、あらゆる平等がある。
「──というのが、政界の重鎮たちがアピールしている話です。これについてはさすがに聞いたことがありますよね?」
「ああ。黒竜の血を引く竜帝が国に住む全ての竜人を護っていて、その恩恵で栄えている、と」
「はい。あの国は大きく、一見階級による差別もない。あるのは貴族や平民などではなく、竜の血を引くか、引いていないか」
「?帝国は全ての国民が竜人なのだろう」
「────いいえ。違います」
ドラッヘフェルスには、「生きるに値しない命」がある。それは奴隷階級の呼び方だ。
竜の血を尊重し、なによりも大切にするあの国は、竜の血を引かないと言うだけで、簡単に人のあらゆる尊厳を奪う。それがあたかも当たり前で、正義のように思っているのが、政界の重鎮たちだ。
竜人ではない人間は生きるに値しない。だから、竜人である、王である我々が人間を使役する。他国に戦争を吹っ掛けて蹂躙して竜人による世界を作ろうとしている。
「……だが、ドラッヘフェルスにはスラム街がないと聞いた。実際国のどこにもそんな奴隷達がいる様子もないと」
「そこで使われているのが、魔法です」
「魔法?そんなおとぎ話の中のもの……」
「竜は魔力を持つ。竜の血を濃く引けば、魔法を使うことも出来るんですよ」
ハウゲスンの領主が驚いたように片眉を上げた。
「禍竜の持つ魔力は強大です。禍竜の魔法はほかの竜たちのそれを簡単に上回る」
「……国ごと腐ってるな」
「ええ。残念ながら。そして、今の竜帝は、本物ではありません」
「どういうことだ?」
ドラッヘフェルスが栄えるのは、創世の黒竜の血を引く竜帝がおさめているから。その話は有名だ。
「その、黒竜の末裔。それが」
わたしです。
ディオは真剣な顔で言いきった。
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