第6話 邂逅
美羽とのやり取りを終えて部屋に戻った俺は、TBのフレンドに招待を送ってレートを回そうとしていた。
これまでプレイしてきた中で何人かパンデモ帯で一緒にやれるフレンドが出来ているし、野良で潜ってもあまり練習にはならないから誰かしらVCを繋いで意思疎通が出来る人じゃないと嫌なんだよな。
やがて二人のプレイヤーが招待を受けて俺のロビー画面に表示される。
「うっす~」
「Gaiaさんお疲れ様です」
「つかれ~っす」
「KoNさんども。レートどうっすか?」
「どーもこーもないよH4Y4T0ぉ。せっかく君と盛ったのに午前中でポイント全部溶けちゃったよ」
「俺も。やっぱIGLって大事やんなぁ。高校生なのによぉそんなオーダー出せるわほんま」
GaiaさんとKoNさんは大学の同級生らしく、俺とよくレートを回してくれる。同じe-Sportsサークルに所属しててエース格のプレイヤーだそうだ。2人ともグランデで、なんとかパンデモのボーダーに浮上しようと必死だ。
「サークルにIGL上手い人いないんすか?」
「グランデが僕らだけだしね。正直サークルでやるとポイントは盛れないなぁ。まぁ僕らのコールがよくないんだけど」
「せやなぁ。俺もKoNも火力に振っとるからオーダーはさっぱりや。今日も勉強さしてや」
「了解っす。じゃあいつも通りコールするんで、お二人は火力お願いします」
「任せろって言ってもフィジカルも君が一番だしなぁ。ははっ泣けてくるよ」
「ほんまバケモンやわ。パンデモの称号は伊達やないなぁ。足引っ張らんように頑張るわ」
「いやいや、頼りにしてますよ。それじゃ行きますか。構成どうします?」
「僕今アヌビスやってるからアヌビスでいいか?」
「僕はゴクウで」
「んじゃ俺がセイメイっすね」
世界大会でというか、リリースされてからセイメイは環境の中心に居続けてる。攻防一体のスキルとODだから腐りようがあんまないんだよね。
ひとまず構成も決まったのでレート戦に挑むことになった。
そして、この日が俺のTB人生における最初の大きなターニングポイントになる。
「GG~!」
「ナイスで~す!」
「さすがだね。ナイスコール」
2試合目で最初のTriumphが取れた。最後3部隊からヘイトを買わずに潰し合わせて体力が削れたところに襲い掛かる。安全かつ安定のムーブだった。
最後残った奴が思いのほか粘ってKoNさんが落とされたのが想定外だったけどまぁ問題ない。
安地読みもドンピシャだったし途中の立ち回りも特段反省点はなかったと思う。
「最後落とされたの怠いわぁ~。1マガで持ってかれてもぉた」
「キャラコンすごかったよね」
「確かに。まぁでもさすがにこっちがポジションも良かったんで負けないですね。どんどんいきましょう」
次の試合も似たような展開になった。今度は俺たちが高所を取れたので打ち下ろしの射線を通すことができた。
FPSにおいて高所を取るのは有利を取るうえですごく大事だ。一方的にダメージ倍率が高くなるヘッドショットの確率を上げることが出来るし、逆にこちらはヘッドショットを食らう危険性がかなり下がる。
上ってこれる高さでもなかったし、安地も最終地点が俺たちが取った高台寄りだったので圧倒的に有利だった。
「ごめん、まさか落とされるなんて」
「俺もや。また1マガされた。なんやあいつ。さっきの試合もやられたわ」
「…ですね。まぁ最後は安地に呑まれてくれたし、良かったです」
俺も含め、全員がとても勝ったとは思えない雰囲気だった。
ラスト2部隊。こちらが圧倒的に有利だったのに、まずGaiaさんが落とされた。こちらもすぐに落とし返したけど、次いでKoNさんもダウン。特にKoNさんは言っていたとおり1マガ(ジン)で赤バリアから一瞬で体力まで削り落とされてた。
安地がこちらに寄っていたし、俺がセイメイだったのでスキルの”五封結界”で下から投げられたグレなどを防いで最後は安地外のダメージで下の連中がなんとか勝ったけど正直ヒヤヒヤだった。
顔を出さずに何もしなければ勝ち確だったけどキルポを取ろうとした2人が一瞬でもっていかれた時はかなり焦った。俺のコールが遅かったのも悪かったし、かなり課題を感じる結果になってしまった。
それにしても、直前もマッチした部隊とまたラスト2部隊になった。2人を一瞬で倒した奴の名前は確か…Setoだったか。
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