第4話 どうでもいい話
「状況は~?」
『まだ断言はできないが、十中八九例の魔法で間違いない。早いうちに対処しないと、不味いことになるぜ?』
「分かってるよ~。勇者の魔法陣の調査については一旦置いといて、上空の魔法陣を片付けよっか。樹君、上空の魔法陣の解析をお願いね~」
『了解、出来ることはやってみる。』
魔力通信の有効範囲内へとやって来た俺たちは、早速クシナダとコンタクトをとった。インターネットどころか、電気すら普及していないこの世界において、頼りになる情報交換手段は魔法のみ。ただ、この魔法は対象との距離が近ければ近いほど制度が高くなるので、できるだけ近づくことを目指す。
クシナダとのチャンネルが確立したところで、俺たちは情報交換を行いそれぞれのやるべきことを明確化した。
現代魔法戦闘は情報戦でもある。クシナダのようなレーダーを搭載した母艦によって情報を集め、集められた情報をベースに戦うというのが一般的であり、今回のような状況では、母艦との密接な連携が求められる。
「これが、結くんが私たちをここに送った原因なのかな・・・・・・」
「あの時と同じだ・・・・・・」
【いいえ、あの時よりもむしろ強化されているわ。いや、障害が取り除かれたと言うべきかしら・・・・・・】
ルキフェルは、そう判断した。どうやら、俺の予想は間違っていなかったようだ。
その直後、再びクシナダから、魔法通信が届いた。俺たちは、すぐにそれに応答した。
『解析が終わった。いいか、よく聞け、上空の魔法陣は間違いなくあの時の魔法陣と同じものだ。』
「やっぱり・・・・・・」
『ただ、あの時と違う所もある。あの時は、地球のほぼ半分を覆う範囲に魔法陣が敷き詰められたが、今回は帝都周辺の上空だけだ。』
「魔力量の方はどうですか?」
『あの時と大差ない。おそらくだが、今回は集中して降ってくるぞ。』
「っ!俺もそう思います。」
俺も、樹さんと同じ結論に至っていた。以前の襲撃の際は、地球全体に降り注いだので、被害が想像よりも少なく済んだが、今回のはどうやらここ目掛けて集中的に降ってくるようだ。当然、範囲が狭いということは、それだけ大量のUCが降ってくるかもしれない。
確定はしていないが、最悪を意識して今やるべき事を考える。
「とりあえず、俺は帝都からできるだけ離れたところに行って、UCの発現場所を固定して来ます。茜さんは、クシナダと共に宇宙に上がって、周囲にあるであろう魔力の供給ラインを遮断して下さい!」
「おっけ〜。じゃあそれで行こう〜!」
『こっちも了解した。早速、宇宙に上がる。』
まず優先すべき事はクシナダの安全確保だ。船を失えば、帰る手段がなくなるので、まずは船を安全なところに逃す。逃す場所は、最も安全と思われる宇宙空間を選び、宇宙空間からの支援をお願いした。
同時に、俺は空を埋め尽くす魔法陣のうち、帝都の中心から一番離れた位置にある魔法陣を破壊してUCの降下ポイントを固定した。前回は、魔法陣に仕掛けられたトラップに気付かず、良いようにやられたが、同じミスはもうしない。むしろ、このトラップを利用させて貰おう。
「とりあえずこれで良し。」
テキトーな魔法で魔法陣を攻撃すると、すぐに魔法陣は壊れた。前回よりも、少しだけ強度が上がっていたが、特に問題なく破壊に成功した。
これで、前回のような失敗は防げる、と思った矢先、背後から魔力が動いたのを感じた。
【不味いわよ、健斗。あの時の2人が、魔法陣を壊し始めているわ。】
「ちっ!余計な事をっ!」
俺の加勢に来たと思われるトワトリカとシーナは、帝都上空の魔法陣を破壊しようとしていた。その様子を見ながら、俺は異世界の連中に協力を求めるのを忘れていたことに気がついた。以前までは、勇者という立場使って無理矢理俺の作戦に従ってもらっていたが、今回はそれらを抜きに情報を統制しないとならない。
感情よりも、理屈を優先するべきと判断した俺は、とある決断を下した。
「手を止めてくれっ!シーナつ!」
「これはこれは異世界人様、正体は明かさないんじゃなかったんですか?」
「嫌味なら後でいくらでも聞いてやるから今は俺に従ってくれ。このままだと、不味いことになる。」
正体をバラすつもりは全く無かったが、そうこう言っている場合じゃないと判断した俺は、シーナを頼る事にした。
ガラシオル帝国を動かすなら、彼女の一声が必要だからだ。
「良いでしょう、今回は何も聞かずに貴方の力になります。その代わり、後でしっかりと事情を教えて下さいね。」
「わかった。」
もちろん覚悟の上だ。
それよりも今は、目の前の魔法陣を葬ることを優先したい。
「まず、この魔法陣を破壊するの辞めてくれ。これは魔法陣を破壊すると、破壊された位置に敵が飛んでくるって寸法の魔法陣だ。下手に破壊すると、手に負えなくなる。」
「わ、わかったわ。」
「それと、動員可能な部隊を帝都の北に集めてくれ。そこで、この魔法陣をわざと破壊して敵を呼び出し、敵を葬る。」
「わかった、貴方に従うわ。」
「よし、じゃあ頼んだ。」
指示を受け取ったシーナは、勢いよく下降を始めた。
「私は?」
「師匠はシーナのサポートを頼む。最初が肝心だ。ここを間違えなければ、楽に片付く。」
「わかったわ。」
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どうでもいい話
風強すぎて、(傘が)お亡くなり♪
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