第18話 sideシーナ7

 ガラシオル帝国ー帝都

 現在


「それは本当ですか?お父様。」


 急に呼び出されたため、何だろうと思いながらお父様の執務室に入ると、驚くべき情報がもたらされた。


「あぁ、つい先ほど、彼の者から連絡があった。何でも、面白いものが手に入ったから紹介したいとのことだ。明日は辺境伯との会談の予定が入っていたが、それをキャンセルして彼女と会うことにした。無論、そなたにも同席してもらう。」


「承りました。ですが、辺境伯様との会談はキャンセルしてよかったのですか?」


「奴との会議は明日にも回せるが、彼の者の訪問は一度断ると、次はいつになるかわからない。となれば、彼の者の訪問を優先するのが道理だろう。」


「ふふっ、確かにあの方はその通りですね。」


 お父様の考えを察した私は、思わず笑みをこぼしてしまった。

 私のよく知るあの人は、帝国民で唯一皇帝であるお父様の命令を無視できる人物であり、お父様が最も慎重になる人物だ。論理的な面倒臭がり屋という言葉がよく似合う彼女との会談ということもあって、どうやらお父様も気合が入っているようだ。当然、私も会うのが楽しみに思った。


「無論、この件が無事に片付けば翌日に辺境伯との会談を行うつもりだ。まぁ、半年ぶりに彼の者が自ら余の元へやってくるとなれば、並大抵の話ではないだろうがな。」


「そうですね・・・・・・。」


 彼女と最後に会ったのはおよそ1ヵ月前のこと、お互いに忙しいこともあり、勇者パーティー解散後は中々会えていなかったが、彼女と会うのをいつも楽しみにしていた。彼女と会う時はいつも私の方から彼女が経営する魔法具店に足を運ぶのがほとんどだが、なんと今回は彼女の方からこちらに来てくれるそうだ。


「さて、一体どのような話が飛んでくるのやら。」


「さぁ、皆目見当もつきませんね。」


「余もだ。さて、どうなることやら。」


 そう言いながら、私たちは顔を見合わせて笑った。

 さて、今日は早く寝るとしよう。



 *



「こんにちは、陛下。」


「久しいな、息災か?」


「はい。陛下におかれましても、お元気そうで何よりです。」


「うむ。」


 ちょうど、これから昼食を食べようとしていた頃、私の待ち人は突然に現れた。今回の会談は会食形式で行われる予定であり、時刻に関しては事前の告知通りであったが、彼女は事前の告知にない2人の客人と共にやって来た。男女と思われる2人組で、不気味な面を被っているため素顔は見えないものの、彼らは独特の雰囲気を纏っていた。


「こんにちは、トワトリカ。」


「こんにちは、シーナ。貴女もお元気そうですね。」


「はい、私は今日も元気です。」


 まず、安心した。

 久しぶりに顔を合わせた彼女は、以前と何ら変わらない雰囲気で宮廷へとやって来た。普段と違う点といえば、前に会った時よりも髪が整えられているところぐらいだろうか。とにかく、元気そうな様子が見れて良かった。


「して、そちらの客人は?」


「訳あって、仮面を付けさせていただいてますが、私の知人でございます。」


「ふむ。宮廷内で仮面を付けることは基本禁じられているが、其方らに限り許可しよう。」


 不気味な雰囲気を漂わせる2人、お父様は彼らが特別であることを強調した上で、仮面を付けることを許可した。無論、相手がトワトリカさんであるからこその対応であり、お父様もそこを強調していた。


「ありがとうございます。本日は、この2人を陛下のもとに連れて行くために参りました。」


「なるほど、彼らが其方の言う『面白いモノ』か。確かに面白そうだな。」


 トワトリカさんは、彼らを面白いモノと表現し、それにお父様も同意した。

 しかし私からすると、彼らは不気味な存在であった。

 というのも・・・・・・


「お気づきですか?陛下。」


「あぁ、流石に気付いている。彼ら、魔力が感じられんな。」


「そうなんです。」


 人を含め、生物というのは魔力と共に生きる存在であり、生物であれば基本的に魔力を保有している。ちなみに、生物の死骸にも魔力というのは存在しており、生物は死んでも体内の魔力は消滅しない。魔力というのは基本的に消滅しない物質であり、魔法式や魔法陣によって変換されることはあるが、エネルギーは保存されている。

 つまり、魔力を感じることができない彼らは、かなり異質な存在であった。


「こんな話、信じることが出来ないかもしれませんが、彼らは異世界から来た異世界人なのです。」


「異世界人、か。勇者の件もある故、異世界というのがあるというのは理解できるが、いざ彼らが異世界人であると言われても、信じるのは難しいな。」


「ふふっ、私も最初は同じでした。ですが、私は彼らの魔力を見て、彼らが異世界人である確信を得ました。」


 異世界から来た者たちだと言う話、勇者がいるのだから異世界というのがあることは理解できる。お父様は疑っているようだが、何となく私はその話を信じた。勇者召喚魔法というのがあるのだから、向こう側の世界からこちら側の世界にやって来ることが不可能であってもおかしくない。


「彼らは魔力が無いのではなく、この世界に無い特殊な魔力を保有しているがために、我々では観測することが出来ないのです。」


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 どうでもいい話

これで第7章は終わりです。

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