第15話 sideトワトリカ
「トワトリカ様、本当によろしいのですか?」
「うん。」
「本当に、宮廷魔導師を辞めてしまわれるのですか?」
「魔王はもういない。だから、私必要ない。これからは、のんびり暮らすことにする。」
「・・・・・・勇者パーティーの元メンバーだというのに、相変わらずですね。」
魔王を倒した勇者パーティーの一員と言われれば聞こえはいいが、勇者が強すぎて私を含む他のメンバーはそんなに活躍していない。パーティーというのは普通、盾役やアタッカー、バッファーのように特定の役割に特化した者たちがそれぞれの苦手な部分を補い合うものであるが、私たちの勇者パーティーは少し違った。全ての役割を1人でこなすことができる超人がいたため、たいていの敵を単独で討伐することができ、最終決戦である魔王戦もほぼ1対1の殴り合いによって勝敗がついた。そのため、世間からは賞賛する声が多かったが、私自身は自分が勇者パーティーの元メンバーであることを誇りに思うことは無かった。
「元々そういう契約だった。私居なくても、シーナがいれば大丈夫、なはず。」
「・・・・・・はず、ですか。」
「大丈夫・・・・・・多分。」
「はい、わかりました。」
同じく勇者パーティーのメンバーであった王女様から、何度か宮廷魔導師を続けないか、と誘われたが、魔王を倒すために一時的に帝国に所属しただけで、帝国の宮廷魔導師になる気はさらさら無かった。私が、勇者に魔法を教えた存在であることは間違いないが、私が教えたのは基礎の部分だけであり、後は放置していたら勝手に強くなった。それに、基礎を教えたと言っても、勇者の場合は最初から基礎が備わっていたので、大したことは教えていない。勇者は、文字通りの超人であった。
「ですが、何か困ったことがあれば、いつでも頼って下さい。私は、いつでも貴方の味方ですから・・・・・・」
「ありがとう。頼りにしてる。」
「はいっ!」
そして、私は当初の予定通り宮廷から去ることになった。魔王が討伐された今、私がここに残る理由は何処にもないと判断したからだ。
宮廷魔法師を辞めた私は、並行してやっていた帝都の端の方で小さな魔法具店の経営のほうに専念することにした。まぁ、とは言ってもお金は余るほどあるので、採算なんか考えずに細々とやることにした。お客さんは1ヶ月に1人か2人ほどしか来ないが、それでものんびりと経営していた。
そんな私に、転機が訪れた。それは、半年ほど経過したある日のことだった。
*
「今日も、人は来なかったか・・・・・・」
今日も、いつも通りずっと寝ていた。
少し暗い店ではあるが、その中に1箇所だけ光が当たる場所があり、そこが私のお気に入りの場所であった。
「・・・・・・もう閉めよ。」
日が傾き、日向ぼっこが出来なくなったところで、私は店を閉めることにした。こんな時間になっても客が来ないということは、これ以上待ってもおそらく客は来ないだろう。そのため、少し早く店を閉めてもあんまり変わらない。私は、私の気分で店を早く閉めることにした。
得意の幻影魔法を使い店の入り口を隠す。こうしておけば、例え店の前を人が通ってもここに店があるとすら認識できないはずだ。
もちろん、私の知り合いであれば、店を見つけることができる。まぁ、私にはロクに知り合いなんかいないが・・・・・・
「・・・・・・もうちょい寝よう。」
眠くなった私は、再びその場で眠ることにした。この家には1人で住んでいるので、どれだけ寝ても私を咎める人は居ない。
そしてそのまま、私は夢の世界に旅立っていた。
「相変わらずの寝坊か?」
「ん〜?」
あれからどれぐらいの時間が経っただろうか。
誰もいないはずなのに、私は誰かに声をかけられた。普段ならば起きることはないが、久しぶりに聞いたその声に、私は起こされた。
「こんなところで寝てると風邪引くぞ。」
「大丈夫だよ〜健斗。よく寝てるし・・・・・・。って、え?健斗?」
「久しぶり、師匠。」
私は一瞬、幻影魔法の一種なのではないかと疑った。だが、それが魔法によるものではないことは、すぐに気付けた。
幻影魔法であれば無いはずの魔力の流れが見える上、魔力パターンは私のよく知る人と全く同じであった。ということは、これは魔法ではなく健斗ではなく本人であることが伺えた。
「うん、久しぶり・・・・・・。でも、どうして?健斗は帰ったはずじゃ・・・・・・」
「ちょっと事件に巻き込まれてな。色々とあって、またこっちに来たんだよ。」
「そう・・・・・・。」
久しぶりの健斗だ。
間違いなく本物だ。
「ちょっと、手を貸して欲しいことがあってだな。」
「いいよ、何でも言って。」
「シーナとの仲介役をしてくれないか?」
「・・・・・・いや。」
___________________________________________________
どうでもいい話
久しぶりに過去作のショートストーリー書いてたら、こっちの更新が遅れました
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます