第13話 鮮やかな着水
「茜さん、北北東に向かって飛んで下さい。そこに、停泊ができそうな大きな湖と街がありますから。」
「わかった〜北北東ね〜。総員〜健斗くんの言う湖を目指して〜。」
「「「了解っ!」」」
茜さんの指示に、ほぼ全員が了解と答える中、ただ一人だけがこの方針に反対した。
「ちょっと待てくれ茜、流石にそれは危険過ぎる!少なくとも状況を把握するまでは、現地住民がいない地域に降りるべきだ。」
「樹くん、どうしてかな〜?」
「まだ何も分かっていないからだ。もしかしたら、現地住民が武力でこの船を占領しようするかもしれない。コンタクトを取るにしても、船の存在は隠すべきだ。」
「俺はこの船と共にコンタクトを取るべきだと思います。見たところ、この星の科学力は地球と比べて大きく遅れているようですし、例え戦うことになったとしても、負けません。」
「・・・・・・わかった。健斗、お前の考えに従おう。」
樹さんは、思ったよりも簡単に折れた。もしかしたら、何か考えがあるかもしれない。
操縦席に座る樹さんは、操縦桿を左に倒した。この惑星には大気が確認されており、地球のように水と空気も確認されている。宇宙用語を用いるなら、ハビタブルゾーンの中に存在する惑星であり、この星に住んでいると思われる宇宙人の存在も確認できた。
そしてこの宇宙人というのは、俺の予想が正しければもしかして・・・・・・
「健斗の予想通り、この星は少しは遅れているようだな。」
「わからないよ〜。科学力が遅れているだけで、私たちよりも魔法が進んでいる可能性はあるし〜、危険なのはどっちにしろ変わらないかな〜。」
「確かにそうだな。ということは、例え現地住民が居ない地域に降りたとしても、索敵魔法や魔力感知で発見される可能性は全然あるってことか。」
「そうだね〜。だからこそ、健斗くんのこの星で一番大きな都市の近くに降りるって言うのは正しい判断だったと思うよ〜。交渉次第では、匿ってくれるかもしれないしね〜。」
「なるほどな。その判断力、流石は日本の新星といったところか・・・・・・」
「いや、健斗くんがこの星の住民と話したいって思ったのは別の理由だと思うけどね。」
大気圏突入を済ませたクシナダは、地上からの目視でもぎりぎり見えるぐらいの距離を保ちながら目標の湖に向かって進んだ。地上から発見されて面倒なことに巻き込まれないように気をつけつつ、クシナダは北上を始めた。もちろん、魔力障壁を展開して突発的な攻撃への対策は十分にしており、簡単には落とさせないようにしておいた。
見覚えのある地形を眺めながら、俺は今後の対応を考えていた。目の前に広がる地形は、もう二度と来ることが無いと思っていた場所と全く同じ地形をしており、俺はかなり早い段階でここが何処であるのか検討を付けていた。確信はできていないが、ここが何処であるか予想できていた。
「着陸目標地点を目視、下降を開始します。」
少し進んだところで、クシナダは降下を始めた。クシナダのエンジンは魔力で動いているので、他の様々なエンジンに比べて加速と減速がかなりやりやすい。まぁ、そもそもそれほど速度を出していなかったので、降りるの簡単だ。
「船底に魔力障壁を展開、着水用〜意。」
「「「了解っ!」」」
「総員、衝撃に備えよ〜!」
相変わらずの気の抜けた声に、クシナダの乗組員たちはしっかりと答えた。
*
初めての着水は、案外あっさり終わった。まぁ、そもそも俺はクシナダのワープシステム以外の部分にはいっさい関与していないので、茜さんや乗組員たちを信じて待つことしかできなかったが、それでもこの船は大して揺れることなく着水を成功させた。
話し合いの結果、船を樹さんと他の乗組員たちに任せて、俺と茜さんの2人で船を降りることになった。樹さんは船長である茜さんが船を離れることに反対していたが、茜さんが駄々を捏ねた結果、機動力のある俺と2人で現地住民と接触することになった。
デッキから外に出た俺たちは、飛行魔法を使って陸地を目指すことになった。
「何か作戦はあるんですか?」
「全く無いよ〜。でも、健斗くんの方はあるんじゃ無い?」
「っ!・・・・・・あります。」
どうやら、けっこう頼りにされているようだ。こういう時は自分の考えを押し倒す人だと思っていたが、そうでも無いようだ。少なくとも、駄々を捏ねる時とそうで無い時があるようだ。
「やっぱりね〜。それと、私の予想が正しければ、君はこの星のことを知っているんじゃない?」
「っ!」
「ふふっ、もうちょっとポーカーフェイスを学んだ方がいいよ、健斗くん。無理な詮索はしないけど、言わなきゃいけないんじゃ無い?」
「・・・・・・」
さて、どうするか。
もう、正直に言うべきなのかもしれない。
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どうでもいい話
旅行って、やっぱり楽しい
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