第13話 天秤に乗せられた選択肢
「さて、健斗くん。ご機嫌はいかがかな?」
「可もなく不可もなくって感じですかね。」
ルーシアと別れた俺は、いつものように有栖川さんのいる日本魔法協会本部へとやって来た。日本魔法協会は、普段よりも殺伐とした空気に包まれており、俺は少し目立たないようにしながら有栖川さんの部屋へ入った。
「今日君をここに呼び出したのは他でもない、君にジルトレアからとある作戦への参戦要請が下ったからだ。」
「参戦要請、ですか?」
「あぁ、参戦要請だ。まずは概要から話そう。先日君に、ジルトレアがとある企業に対して圧力をかけているという話は聞いたな?」
「はい。」
俺は、数日前に有栖川さんから聞かされた作戦を思い出しながら答えた。同時に、何故有栖川さんが俺を呼び出したのかを察した。
「もしかして、あの作戦ですか?」
「あぁ、君が今頭の中で考えている作戦だ。」
「っ!!!」
当たってほしくない予想であった。
小さな可能性として、このような未来が起こり得ることは考えていたが、まさか本当に起こってしまうとは思っていなかった。
「ジルトレアは、『ツクヨミ社』に対して武力行使をすることを決定した。攻撃目標は東京湾にある『ツクヨミタワー』、実行するのは現役のS級魔法師5人を含むジルトレアの精鋭メンバーおよそ100名だそうだ。」
「S級魔法師が5人ですか、ジルトレアは本気なんですね。」
S級魔法師が動くということは、かなりの大事であるということだ。S級魔法師は、1人で国家を相手にできるほどの戦力を持つ魔法師に与えられる称号だ。それが5人ということは、少なくとも5つの大国が連合を組んだ時の戦力に匹敵する魔法師がいるということだ。それはもちろん、一企業を攻撃するにしては過剰と言える戦力であった。
では、何故ジルトレアがこれほどまでに強力な戦力を揃えたか、それはひとえに黒白の存在があったからだ。既に表舞台から姿を消してから16年が経過したにも関わらず、未だに人類最強と言われている存在であり、その強さはS級魔法師3人分とも言われている。
そのためジルトレアは、可能な限りの戦力を揃えた。
「あぁ。ジルトレアは、これで勝てなきゃ人類に未来は無いと言っても過言では無いほどの戦力を揃えた。だが、ジルトレアは万が一の事態に備えて、保険を打つことにした。」
「保険、ですか?」
「あぁ、君に黒白を倒すための最後のピースになって貰いたいそうだ。」
「自分に・・・・・・」
ここに呼び出された時点で、ジルトレアが俺に対してどのようなことを要求しているのかは理解できた。それは、俺に対してツクヨミタワー攻撃の駒になって欲しいという要請であった。
「これは要請だ。無論、S級魔法師の君には拒否権がある。嫌だと思うなら、断ってくれても構わない。君は、自分の考えを尊重したまえ。」
「私は・・・・・・」
どうしようか考えていると、いきなりルキフェルが口を挟んだ。
【私はおすすめしないわ。】
どうしてだ?
【それは、あんたが良く一緒にいるあの双子と戦いたく無いからよ。】
?!
ツクヨミと戦うということは、必然的に明日人や衣夜、そして結人さんと戦うということになる。明日人や衣夜は大切な親友だし、結人さんは俺の魔法の師だ。
正直、彼らとは戦いたく無い。もちろん、ここでいう戦うというのは、殺し合いという意味だ。本気の魔法戦闘となれば、手加減なんてものはできない。最悪の場合、灰すら残らず死ぬ可能性だってある。そのようなことを、今の俺はできるだろうか。
【自分の直感を信じなさい、健斗】
「お断りさせていただきます。」
俺は、親友や恩師とは戦わない道を選んだ。
理論的ではなく感情的に、そんなことはしたくなかった。
俺がそう答えると、有栖川さんはニコリと笑った。
「君ならそう言うと思ったよ。私としても、君にこんなことをさせたくなかった。では、ジルトレアには私の方から不参加と連絡しておこう。」
「ありがとうございます。」
「いやいや、気にしないでくれ。こちらこそ、変なことを聞いて悪かったね。」
意外なことに、有栖川さんは俺に対して申し訳なさそうに謝った。どうやら有栖川さんとしては、俺をメンバーに加えたくなかったそうだ。ツクヨミ以外であれば、場合によっては参加することも考えたが、相手がツクヨミ及び藁科家であれば、裏切るようなことはできない。
俺は心の底から、これが命令ではなく拒否のできる要請で良かった、と安堵した。もしもこれが命令であったならば、俺は親友と殺し合いをしていたかもしれない。
「それで、いつなんですか?その武力行使に出るのは。」
「今日だ。より正確に言うならば、28分後の14時からだ。」
「え?今日ですか?!」
俺は、決行が今日であることを告げられたことに驚きつつ、今日明日人と衣夜が学校を休んだのはこのためであったんだということを理解した。きっと2人は、ツクヨミを守るための準備をするために学校を休んだのだろう。
「あぁ、今日だと聞いている。わかっていると思うがこれはトップシークレットだ、他言無用で頼む。」
「りょ、了解です。」
「それから、くれぐれも、首を突っ込むなよ。」
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どうでもいい話
桃鉄おもろすぎ
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