第12話 sideルーシア7
「こんにちは、ルーシアさん。お待ちしておりました。」
「こんにちは、今日もよろしくお願いします。」
健斗が日本魔法協会へと向かったことを確認した私は、一度自宅に戻り荷物を置いたのち、最近の私に魔法を教えてくれている師のもとへと向かった。健斗が転校してきて級位を次々と上げていた頃から教わっており、既にかなりの月日が経過していた。集合場所であるツクヨミタワーへとやって来た私は顔パスで昇降機へと乗り、師の待つ部屋へと向かった。
「近頃は慌ただしい日々が続いておりましたが、元気でしたか?ルーシアさん。」
「はい、何ら変わりなく過ごしております。」
「変わりなくというと、健斗さんとの関係も?」
「咲夜さん?!」
「私も貴女の恋を応援する者の1人として知りたかったのですが、その様子だと進展はまだ無いようですね。」
「はい・・・・・・」
私が力無くそう答えると、咲夜さんは微笑みながらティーカップを自身の口元へと運んだ。どうやら、1週間に及ぶ休校期間中、何も進展が無かったことはお見通しのようで、私は隠すだけ無駄だと判断して全て話すことにした。ここ1週間、生活必需品の買い出し以外ほぼずっと一緒にいたのにも関わらず、何の進展も無かったことや、私が精一杯アピールしても健斗は何にも気付いてくれないことなどを話した。進展なんかある訳がなく、同じような日常の繰り返しであった。
「ほんと、日本の男ってのはどうしてみんなこうなんでしょうね。」
「ふふふ、確かに結人さんも昔から鈍感な方でしたね。」
咲夜さんも、咲夜さんの夫の結人さんも生まれも育ちも日本の日本人ではあるが、咲夜さんは母親がドイツ出身のハーフであり、昔から母親の影響を強く受けて育ったようで、私と通じるところがあった。ちなみに私はドイツ生まれドイツ育ちで、ドイツ人の父親と日本人の母を持つので、咲夜さんとは真反対と言えた。
咲夜さんとは、結人さんの紹介で咲夜さんから魔法を教えて貰うようになる前から、明日人と衣夜の母親ということで親しくさせていただいていた間柄だ。魔法を教えて貰うようになってからは、週に1回か2回ほど、魔法を教わりつつこうしてお茶会をしていた。咲夜さんは、あのツクヨミ社のCEOであり、本来ならばこんな感じに気軽に会える相手ではないが、私は特別に時間を頂いている。
「ですが、昔から誰よりもカッコよくて、頼りになる方でした。」
「健斗も、いざって時は凄くかっこいいです。」
「ふふっ、そうですよね。」
そんな相手ではあるが、私は時々、というかほぼ毎回こうして恋愛相談をして貰っていた。もちろん、メインは魔法の特訓ではあるが、咲夜さん曰く恋の悩みを抱えたまま魔法を使うのはあまり良くないことのようで、こうして相談に乗って貰っていた。実際、咲夜さんは恋の悩みを解消した日やその翌日は普通の日よりも魔力の流れが良かったらしく、魔法を放ちやすいと言っていた。本当かどうかはわからないが、咲夜さんは嘘をつくような人ではないので、信じていた。まあ、雑念がある状態で魔力を練っても、あまり上手くいかないことを考えれば、咲夜さんの話も間違いではないので、咲夜さんには相談相手になって貰っていた。
小一時間ほど話し込んだ後、ふと気になったのでどうして今日双子が聞いてみたところ、今日明日人と衣夜が休んだのは、ただ単に結人さんと3人で軽い旅行に行っていたからだそうだ。2人揃って病気になってしまったのではないかと思って聞いてみたが、2人とも明日には普通に登校できるとのことであったので、まずは一安心といったところであった。
明日人と衣夜の無事が確認できたところで、私たちはいつものトレーニングルームへと向かった。ここツクヨミタワーには、様々な施設が揃っており、基本的に何でもできる。当然、トレーニングルームもいくつかあり、私たちはそのうちの一室で魔法の特訓を行なっていた。制服から戦闘服へと着替えた私は、フィールドの中央で師である咲夜さんと向かい合った。
「ところで、今日はその、大丈夫だったんですか?」
「大丈夫、というのは?」
私が尋ねると、心当たりが無かったようで、咲夜さんは可愛らしく首を傾げた。咲夜さんは、明日人と衣夜を育てた母親であるが、私と同級生と言われても信じられるぐらい若々しい。
「その、健斗に聞いたのですが、今ツクヨミ社は少し不味い状況になっているって・・・・・・」
「あ〜そのことですか。おそらくですが、大丈夫だと思いますよ。ルーシアさんが思っているほど、大事では無いですし。」
「ですが健斗の話だと、ジルトレアは強硬手段に出るかもしれないと・・・・・・」
私がそう伝えると、突然咲夜さんの表情が変わった。
「強硬手段、ですか?」
「はい。健斗が、有栖川さんから聞かされたと言っておりました。詳しくは聞いていないのでわかりませんが、ジルトレアにそのような計画があると。」
「・・・・・・そうですか。思ったよりも事態は深刻のようですね。」
私の話を聞いた咲夜さんは何か考える素振りを見せたが、すぐに様子を戻すと、私との特訓を始めた。
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どうでもいい話
私は焼肉よりも寿司派ですが、最近は焼肉ばっかです。
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