第9話 激動
それは、世界に衝撃と混乱を与えた。
地球を救った英雄が一転、地球に最悪の厄災をもたらした。S級魔法師たちの活躍により、何とか被害をゼロに抑えることには成功したものの、一歩間違えば国が何ヶ国滅びるレベルの被害が出ていたかもしれない。
日本魔法協会、そしてジルトレアは、今回のテロ攻撃の犯人が黒白であると発表した。英国魔法統括局やドイツ魔法協会などの一部の魔法機関はこの事実を否定したが、世界で最も権力を持つ組織であるジルトレアがこの考えを支持したため、人類の多くがこの発表を信じた。人類は、ジルトレアを信じる者と黒白を信じる者と静観する者できっちり三等分され、ネット上では議論が絶えなかった。
また、日本魔法協会で議論が起こっていたように、ジルトレアでも黒白についての議論が行われていた。
「犯人が黒白であると、本気で思っているのか?」
「現実を見て下さい、ゼラスト最高指導者。今回のテロ攻撃、果たして黒白以外の魔法師に実行は可能でしょうか。貴方様のご友人である黒白をこのような形で犯人扱いすることは我々としても心苦しいですが、人類の守護者である我々が甘い考えによる判断は下せません。」
「それは・・・・・・」
ゼラストには、あの黒白が今回のテロ攻撃を引き起こしたとは考えられなかった。星間戦争中、約10年近く人類の希望として共闘してきた相手であるからこそ、黒白を信じたいと考えていた。
だが、ただ信じるだけで現実を直視しないということに問題があることも事実であった。
「それに、犯人が黒白であるという証拠もあがっております。先ほども説明致しましたが、例の次元の裂け目から黒白と同じ魔力パターンの魔力が検出されています。黒白があのテロを引き起こしたという具体的な証拠にはなりませんが、黒白があの場にいたことは確実です。」
「それは・・・・・・」
「黒白があの場にいたとしたら、どうして彼は人類に力を貸さなかったのでしょうか。彼の力が満足に借りれていれば、これだけの被害が出ることは無かったはずです。」
「・・・・・・」
黒白の魔力パターンが確認されたということは、黒白があの場にいたことは確実とされているが、残念ながら黒白が人類のために何らかの行動をしたという報告は一切存在しなかった。あの亜空間を破壊したのは本条健斗であるし、本条健斗から黒白を見たという報告は無かった。つまりは、黒白は本条健斗が亜空間に飛び込む前に亜空間におり、本条健斗と接触する前に亜空間を出たということになる。
いったい何故、このようなことをしたのかわからない以上、黒白が容疑者リストから外れる事はなかった。だが同時に、黒白以外の何者かが容疑者リスト載る事も無かった。ジルトレアそしてゼラストには、黒白以外の魔法師に今回のテロを引き起こすことができるとは思えなかった。
「レネ=ストライク最高指導者補佐、黒白の幼馴染である貴女はどのようにお考えで?」
「彼が犯人であるとは考えたくないけど、彼以外の魔法師がこのテロを引き起こす可能性の方が非現実的ね。私も調査はしてみたけど相当高度な魔法が使われていたわ。それこそ、彼以外の魔法師にこれをするのは不可能と思うほどよ。」
テロ攻撃が止まった直後、誰もが人類の華々しい勝利に酔いしれる中、ジルトレアだけは原因究明のために現地調査を行っていた。調査メンバーの中には、今はジルトレア最高指導者補佐の地位にいるレネの姿もあった。
上空の魔法陣と宇宙空間にあった魔法陣の両方が調査の対象となったが、両方とも見ただけでわかるほど高度な技術が込められた魔法陣であり、少なくともS級相当の魔法師の仕業であると断定された。
ちなみに、何人かの低級魔法師が協力して魔法を放った可能性はほぼゼロと言っていい。魔法師には、各々固有の魔力パターンと呼ばれる概念が存在しており、異なった魔力パターンを持つ魔法師が力を合わせて魔法を放つのは難しい。強引に混じり合わせればできないことは無いが、強引な手段が取れるということは、それだけで高位の魔法師であるということになる。しかも、今回使われた魔法は、魔法の中でも特に繊細なコントロールが要求される空間魔法だ。これほどまでに腕のある空間魔法の使い手が、低級魔法師であるわけが無かった。
「じゃあ・・・・・・」
「状況から見て、黒白が犯人であると考えていいと思うわ。」
「レネっ!君も彼が犯人だと言うのかっ!」
「そう思いたく無い気持ちは私にもあるけど、状況的に彼が犯人である可能性が最も高いのは事実よ。それとも、別の容疑者がいるかしら。これは、人類最高の魔法師たる彼だからこそできた事だわ。」
「だが・・・・・・」
「最終的な判断をする権限は、最高指導者である貴方よ。私や彼らの意見を踏まえて、どうするのが人類にとって最適か、判断してちょうだい。」
「私は・・・・・・」
それから数日後、再び人類を驚かす内容が世間に出回った。
ジルトレアは、黒白があの場にいた証拠と合わせて、先日のテロが黒白によるものであると発表した。
*
「言われた通り、貴方が犯人になるように誘導しといたわ。」
『ありがとう、レネ。損な役回りをさせて申し訳ないね。』
「これが貴方の為になるなら、やり遂げるわ。」
『ところで、僕を犯人しようとする人たちが誰かわかった?』
「えぇ、分かったわ。全て、貴方のお嫁さんの言う通りだったわ。念のためプロフィールをいつもの方法送っておくわね。」
『助かったよレネ、これで何とかなりそうだ。』
「どーいたしまして。でも、ほんとうにこれで良かったの?貴方、世界中からバッシングを受けることになるわよ?」
『んーん、気にしないで。僕はまだ、神になるつもりは無いからね。』
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どうでもいい話
最近忙しいんです・・・・・・
更新遅れがちですみません
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