第6話 隠し事と成長、そして衰え

「はぁはぁはぁ、何とか終わったか・・・・・・」


「ん〜、流石に疲れたね〜健斗。」


穴は完全に塞がり、空はいつもの状態へと戻った。まるで地球の危機をひとまず救った2人の英雄を照らすかのように、日の入り直前の太陽が、2人の横顔を照らした。


「それにしても健斗は強かったよね〜。」


「いやいや、明日人も凄かったって。いつの間にあんな強くなっていたんだよ。」


「ん〜わかんない、どうだろうね〜」


「わかんないって何だよ。」


「う〜ん、自分ではそんなに強くなった気がしないからかな。空間魔法という才能があっただけで、僕はそんなに強くないつもりだからね〜」


言わんとしていることは理解できた。確かに、空間魔法を自由自在に扱えるか否かは、才能が関係している部分が大きい。空間魔法と時間魔法は、才能がない人間には魔法式の構築すら不可能なほど、才能に依存しており、ほんの一握りだけが扱うことができる特別な魔法だ。だからこそ、自分が強いのではなく才能に恵めれただけというのは共感できる。正直なところ、俺も異世界に行っていなかったら、今のような強さを持っているとはとても思えない。こっちの世界でも、結人さんという良い師に恵まれはしたが、異世界でルキフェルと契約できたのはかなり大きなことだと思う。ルキフェルがいたからこそ、ここまで強くなれたと言っても過言ではない。


「まぁ気持ちはわかるが、全部が全部才能ってわけじゃないだろ?」


「まあね。僕だって、最初からこの力をマスターしていたわけじゃないし・・・・・・」


俺だって、最初からルキフェルの力が使えたわけじゃない。才能がある人間というのは、その才能が隠れるぐらいの努力をしてきた人間だ。明日人だって、この才能を活かすためにかなりの努力をしてきているはずだ。


「それに、魔法ってのは、才能ではなく努力で伸ばすものってお前のお父さんも言っていたじゃねぇか。だからとりあえず、今は勝利を喜ぼうぜ。」


「うん、そうだね。」


改めて、俺たちは上空10000mで握手をした。これは、お互いの健闘を讃えあう握手だ。


「あ、そうだ。悪いけど、僕と依夜がこの場にいたことはみんなには秘密にしておいてくれない?」


「みんなっていうのは学校のみんなってことか?」


「ん〜ん、僕たち以外の全員、例えば有栖川さんとか。」


「良いけど、どうしてだ?」


「ん〜色々と理由はあるけど、今は家の方針ってことにしておこうかな。だから、僕と依夜の手柄は健斗がもらっておいて。僕たちはそれで良いからさ。」


「わかった、今はそれで納得しておく。だけど、いつかちゃんと理由を話せよ。」


「うん。」


何かはもちろん気になったが、明日人にも事情があるだろうし深くは尋ねなかった。俺にだって、明日人に話していないことがいくつかある。ここはお互い様であろう。そんなことを考えていると、後方から聞き覚えのある声が聞こえた。


「お兄ちゃ〜ん、健斗〜、お〜い!」


「あ、依夜。」

「お疲れ様、依夜。ちゃんと証拠隠滅はできた?」


「うん、頑張ったよ、お兄ちゃん。」


「ありがと、助かった。」


何やら意味ありげな会話をしつつ、明日人は依夜の頭を優しく撫でた。どうやら、俺の預かり知らぬところで何かしらの出来事があったのだろう。


「じゃあ僕たちはソロソロ行こうかな。健斗も早く戻った方がいいよ、有栖川さんは早く健斗からの報告を聞きたいだろうし。」


「それもそうだな。じゃあこの辺りで解散しておくか・・・・・・」


「うん、また今度、学校でね〜」

「健斗、バイバ〜イ」


「あぁ、じゃあな」


それだけ言い残して、明日人と依夜の2人は東京の街へと消えていった。おそらくは、実家へと戻ったのだろう。


「珍しく黙ったままだったな、ルキフェル」


【そうでもないわよ。】


「ん?どういうことだ?」


【黙ったままじゃなかったって話よ。私は私の相手と会話していたわ。】


「私の相手?」


【そう、私の相手。まぁ、また今度教えるわね。】


「わかった。」


2人が飛んでいくのを見届けたのち、俺も有栖川さんの元へと戻ることにした。できることならばさっさと家に帰りたかったが、流石に有栖川さんに報告しないのはまずいと思ったので、向かうことにした。魔力の方はまだ幾らか残っていたが、精神の方はそれなりに消耗しており、今すぐにでもお風呂に入りたい気分であった。異世界にいた頃であれば、40分程度の戦闘でこれほどまでに疲れることは無かったが、今の俺はかなり腕が鈍っていることを実感した。


「さっさと帰りたいところだが、与えられた仕事ぐらいはこなしておくか。」



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どうでもいい話

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