第4話 双子の世界
「手伝うって言ったって何すんだ。」
「今健斗、この亜空間内の全てのUCを倒そうとしているんでしょ?」
「あぁ、この攻撃を止める、一番簡単な方法らしいからな。」
「でしょ?まぁまぁいいから、ここは僕に任せてよ。」
「わ、わかった。」
突然目の前にやって来た明日人に驚きつつも、とりあえずは言うことを聞いてみることにした。相手が明日人であるというだけで、俺には変な安心感があった。
軽やかなステップで俺の真横へとやって来た明日人は、そのままポンと俺の肩を叩いた。今までの明日人からは考えられない行動に驚いていると、明日人は自身の右手に凄まじい量の魔力を収縮させた。
「行くよ、衣夜。」
「うん、お兄ちゃん」
同時に、双子の妹である衣夜も自身の左手に魔力を込め始めた。一体何をしようとしているのかは分からなかったが、それでも何か凄いことをしようとしていることはわかった。魔力を纏った右手と左手が重なると、2人は魔法を唱えた。
「「空間魔法<絶渉>」」
2人がそう言うと、正面に巨大な魔法陣が形成された。それは、初めて見る魔法理論によって構築された未知の魔法陣であった。見覚えどころか、似た魔法陣すら思いつかない魔法陣であり、俺は思わずその魔法陣を見入ってしまった。絶渉という単語に聞き覚えは無かったが、双子が何をしようとしていたのかはルカフェルがすぐに気付いた。
【彼ら、この亜空間に干渉しているわよ。】
「は?嘘だろ?」
【本気よ。この亜空間の法則を書き換えて、自分たちの都合の良い空間にしようとしているわ。】
「っ!」
注意して見ると、亜空間は少しずつ、だけど確実に変化していた。亜空間からは明日人と衣夜の魔力パターンが感じられるようになり、亜空間のカタチが変わり始めた。
「明日人、お前一体何をしたんだよ。」
「何って、ただの空間への干渉だよ。」
「いやいや、空間への干渉なんて、普通はできんだろ。」
魔法には大きく分けて5つの系統が存在するが、その中で空間魔法と時間魔法が該当する概念系統は、他の4つとは一線を画すほど難易度が高く、扱うのが難しい。まともに扱えるのは、人類の中もほんの数十人程度であり、非常に貴重な存在とされていた。
そんな空間魔法を、目の前の双子は簡単にやってのけた。しかも、亜空間への干渉という人間離れした魔法を。
「そう?結構簡単だよ?現実の空間は少しまだ苦労するけど、ここは亜空間だからね〜ぐるぐる回してぽんだよ、わかんない?」
「お前の感覚の話をされても理解できるわけないだろうが。まぁそこはいいとして、何をいじったんだ?」
「健斗はこれから亜空間内のUCを全部葬るつもりなんでしょ?だからUC間の物理的な距離を短くするために亜空間自体の大きさを収縮しているの。それと、亜空間内の気圧をできるだけ下げて、弱いUCを一掃しようとしているかな。」
「っ!」
いくらUCでも真空に近い状態では、気圧に耐えられずに爆散するはず、その証拠にこの亜空間には元々無いはずの空気があった。確かに、先に気圧を下げて雑魚を一掃するのはいい判断だ。ならば俺は、残った少し強い敵を倒す事に集中できる。
「強いやつは全部俺が倒していいってことだな?」
「うん、超級UCが357体に災害級UCが27体、全部倒しちゃっていいよ〜」
「りょーかい。」
*
「やっぱり凄いね〜健斗は。」
「今さらどうしたの〜?お兄ちゃん。」
全速力で敵UCへと向かっていく健斗の背中を見ながら、明日人はそんな事を呟いた。元から、才能があることは知っていた。でも、その才能を伸ばすことが出来ずに酷く悩んでいたことも知っていた。だからこそ、今の自由自在に魔法を使う健斗を見て、明日人は嬉しい気持ちになっていた。
「あの健斗がこんなに強くなったんだよ?僕は凄く嬉しいな〜」
「お兄ちゃんって、健斗が凄く好きだよね〜」
「それは、たった1人の親友だからね〜」
そんなことを話している間も、健斗は一体ずつ確実にUCを倒して回った。桁違いのスピードとパワー、そして魔力量、この3つの数値だけは世界最強と謳われたあの黒白をも、健斗は上回っていた。純粋な肉弾戦であれば、おそらくは人類最強まで上り詰めていた。
「ほんと、向こうで何があったんだろうね〜」
「中々話してくれないよね〜。まぁ、無理に聞くものじゃないし、そのうち話してくれるのを待つかな〜」
明日人からしてみれば、健斗が強くなった理由など、それほど重要ではなかった。大事なのは、健斗が自分と同じ領域に来てくれたことだった。
「ねぇ衣夜、ここ任せていい?」
「いいけど、健斗にバラしちゃうの?」
「うん、きっと今がその時だと思うの。」
「わかった、行っていいよ。」
「うん!」
衣夜から許可を得た明日人は、健斗の助太刀に行くことした。必要ないかもしれないが、何となく今言うべきな気がした。
「<ゼロ・ノート>起動。」
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どうでもいい話
最近バラバラになりがちでしたが、できるだけ合うようにします。
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