第18話 壊された魔法陣

有栖川が敵の狙いに気付いた直後、空一面に広がる魔法陣に動きがあった。それも、最悪という形で。


「まんまと嵌められたということか・・・・・・」


魔法陣が部分を中心に、あちこちで空に穴が開き始めた。それはまるで、空が割れるような光景であり、有栖川の予想が当たっていることを示していた。


「地球に侵攻するならば、まずは市街地や軍事拠点、国家の重要拠点を集中攻撃し、制圧した方が効率が良い。でも敵は、何処にそれらのような攻撃目標があるのかを正確に掴むことはできていなかった。そこで、今回の作戦だ。予め、空全体に無数の魔法陣を敷き詰めて、人類に魔法陣を壊させる。そうすれば、真っ先に壊れたところに人類にとって重要な拠点がある事がわかる。あとは、多く壊された地点を中心に部隊を送り込めば、人類は対応が遅れる。」


有栖川は、奇妙な魔法陣の目的が敵の重要拠点を割り出すためであると断定した。そしてそれが正解であると言わんばかりに、空が割れ始めた。そして、生じた空の割れ目から、何かが降り始めた。


「なんだ?アレは・・・・・・?」


「間違いありません。アレは、UCです・・・・・・」


分析官の一人の報告に、会議室中の者達が耳を疑った。その名はかつて、人類を絶望させた化け物たちの名であり、それが本当ならば人類は再び、戦争に身を投じる事になるからだ。そしてそれを裏付けるかのように、正面のスクリーンには魔力を纏った宇宙生物たちの姿が映し出された。会議室にいた全員がスクリーンに映る化け物を見て、今度は目を疑った。


「UCだと?!」


「そんな・・・・・・」


「どうなっている!奴らは既に絶滅したはずじゃ・・・・・・」


「様々な解析に基づいた上で、我々はこれをUCと見なしました。AIも同様です。」


Unknown Creature、通称UC、星間戦争の際、宇宙人達が人類を混乱させるために放った魔力を纏った化け物であり、星間戦争における戦死者の9割以上が直接的もしくは間接的に影響していると言われている。このことは、初等教育で習う内容であり、世界中にUCの恐ろしさは広まっていた。無論、奴らの特性も・・・・・・


「有栖川、有事の際のこの場の最高指導者は君だ。初動で後手を踏んだ以上、巻き返せないと不味い。どうする?」


「よし。襲撃者をUCと認定、これより対UC戦を行う。相手が未知の敵であるならともかく、UCであるならば話は早い。全員、今後の動き方は頭に入っているな?」


「「「はいっ!」」」」


「ならば行動開始っ!66年前の我々とは違うということを、奴らに見せてやるぞっ!」


「「「おぅ!」」」


初動は敵に上を行かれてしまったが、このまま敵の好きにさせるつもりは全く無い。16年前に一度敗北しているにも関わらず、再び地球にやって来たことを後悔させてやるつもりだ。


「じゃあまずは、今すぐここの魔力融合炉の隠蔽を解除し、普段の3倍で融合炉を稼働しろ!」


「さっ、3倍ですか?!」


「あぁ、3倍だ、それで首都周辺のUCをこちらに呼び寄せる。」


「りょ、了解!連絡します!」


UCの大きさは各個体によってバラバラであり、人よりも小さい個体も居れば、山のような巨大な個体もいるが、唯一共通していることは、人間を襲う事だ。では、何故人間を襲うか、それは人間が体内に持つ魔力が原因であるとされている。そのため、より多い魔力を発生させれば、奴らのターゲットがここに移るということだ。もちろん、日本のエネルギーの30%を支えている魔力融合炉が落とされれば、かなりの痛手になるが、首都圏で無作為に暴れられるよりはずっと良い。


「今一度、防衛計画の見直しを行う。全員、気合い入れていけっ!」


「「「了解っ!」」」


彼らは一丸となって、日本そして人類を守るための計画を立て始めた。一人でも多くの人を救うために、そして1秒でも早い終戦に向けて。


「それと一応、イセンドラスに対して我々に喧嘩を打った後悔するがいい、と伝えておけ。」


「了解。」





「どうやら、色々とピンチみたいだね〜」


「どうするの?お兄ちゃん。」


同じ頃、とある場所でとある双子の兄妹が、切り裂かれた空を見上げていた。降り注ぐUCを見ながら、今後の行動について考えていた。


「ん〜どうしようかね〜健斗に任せるでも良いけど・・・・・・」


「お兄ちゃんも、ちょっとは手伝った方がいいんじゃない?お父さんたちも協力するみたいだしさ〜」


「そうだね、じゃあ頑張るか〜。ところで、逆探知の方は上手くいったの?」


「ん〜ん、ダメだった。どうやら、4つ以上中継を経由しているみたいで、4つ先までしか追えなかった。」


「そっ、じゃあ判明するまでは敵を狩り続けるしかないのかな〜」


「それでいこっ!」


__________________________________________

どうでもいい話

最後のとある双子、実はけっこう久しぶりの登場でした〜

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