第13話 才能の数値化
「ここが・・・・・・」
放課後、俺は言われた通りに、人工島の周囲に複数ある研究所の内の一つ、国立魔法研究所へとやって来た。周囲にある、他の研究所の建物と比べると、少しボロい気もするが、それはこの研究所が由緒正しい研究所であることの証であろう。その分、設備は最新であることを期待した。
俺は、食わず嫌いをする人間では無い。どんなにしょうもないことでも、一度は試してみる人間だ。試してみた上で、自分にとってそれが有益かどうかを判断する。だから今回の話も、とりあえずは聞いてみることにした。
「少し意外ね。」
「そうか?」
「S級魔法師やA級魔法師のような国家の戦力となる魔法師って、基本的に忙しいから研究に付き合ってくれる人は稀だそうよ。だから、貴方も断ると思っていたわ。」
「そう言うものなのか・・・・・・」
「えぇ。」
おかしそうに笑うルーシアを横目で見ながら、俺は国立魔法研究所と書かれた建物の門を潜った。時刻は待ち合わせ時間ちょうどであり、門を潜って少し進むと、見覚えのある女性が俺たちを出迎えた。彼女1人だけと言うわけではなく、その周りには多くの研究員と思われる老若男女が出迎えてくれた。
「やぁ健斗くん!よく来てくれたね。」
「わかっていると思うが、1時間だからな。」
「もちろんだともっ!むしろ私としては、君の時間を1時間も貰えたことに感謝しているよ。」
「そうか、ならさっさと始めてくて。時間は有限だ。」
「君の言う通りだな。さて、早速説明を始めようか。」
あまりの歓迎に驚きつつ、俺は古井さんに続いて建物の内部へと入った。中も見た目通りにボロく、所々に修理の跡があった。
「古いと思ったかい?」
「まぁ・・・・・・」
「
「・・・・・・」
古井さんの口から、残念な情報が次々と飛び出た。国立魔法研究所とはどういうところなのか、先に調べておくべきであったなと後悔した。そんなことを考えながら、俺たちは奥へと向かった。
「しかもうちの研究所は、一応は育成学校のための魔法師の育成方法についての研究しか基本は行われない。より実践的な魔法や新しい魔法の研究、は別のところで行われているんだ。だから、最近はどの分野も頭打ちになり始めていてね。近々、予算の大幅な削減と、規模の縮小、リストラが行われるんじゃないかって噂されていたんだよ。」
「・・・・・・」
「でもそんな時、君が現れたんだ。」
扉の前で振り返った古井さんは、俺の目を見ながらそう言った。言われて、俺は彼女らが俺に対して何を期待しているのかを理解した。
「これまでに世界最強と謳われた魔法師はキリア=メスタニア、ゼラスト=メネルトーレ、黒白の3人だが、我々研究者たちの間で考えられている数値上の世界最強は2人、それは黒白と白銀だ。」
「黒白と、白銀?・・・・・・」
黒白が最強であることに異論はない。だが、白銀の名前が上がったことには驚いた。確かに世界トップクラスの実力者であることは間違いないが、黒白と肩を並べるほどかと聞かれれば、NOと答えた。それが、世界の常識であり、多くの人の認識だ。
だが、目の前のこの女は黒白と白銀であると答えた。
「あぁ。戦後、とある研究チームが研究者たちをざわつかせた論文を発表した。彼らが行ったことは、それぞれの魔法師の功績を一切考慮せずに、フラットな思考の上で歴史上に存在した全て魔法師の才能を数値化するという試みだ。S級魔法師やA級魔法師といった名のある魔法師たちが上位を占める中、1人活躍の割に突出した才能を叩き出した魔法師がいた。それが、白銀だ。数値上は、人類最強の男である黒白と同格、しかも3位以下を大きく突き放した上での1位であった。」
白銀、その存在をもちろん俺も知っている。星間戦争最後のS級魔法師であり、創設時を除けば史上初のA級以下の全ての級をすっ飛ばしてS級に認定された正真正銘の化け物。そして、黒白の実の妹。
だが、世間からの評価はそれほど高く無かった。というのも、戦闘力は大したことないと言われており、目立った活躍はしていなかったからだ。
だからこの研究結果は、研究者たちを騒がせる事はできても、世間に常識として広まることは無かった。
「そしてこの研究チームは、この2人は人間の限界とも言える数値であり、人類は誰もこの兄妹を超えることはできないとして、締め括った。だが今になって、この2人を超えているかもしれない存在が現れた。それが君だ。」
「俺、ですか?」
「あぁ、まだデータ不足なところもあるが、君は特定の分野でならば、あの黒白を超えているとの見方もある。だから、是非とも君を研究させて欲しい。」
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どうでもいい話
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