第6話 新たな次元へ

「学校のテスト点数は壊滅的と聞きましたが、戦闘センスの方は一級品のようですね。」


「お褒めに預かり光栄なところだが、喜んでいいか微妙なところだな。」


「ふふっ、十分喜んで良いと思いますよ。黒白が貴方を評価するのも頷けます。」


 帝国流奥義『満月・改』、それは帝国流の奥義『満月』を俺なりに改良したオリジナルの剣技だ。元々は、魔力障壁を展開している相手に対してそれを撃ち破るという奥義だが、俺はそれをルキフェルという人類とは比べ物にならないほどの力を持つ堕天使を活かした剣技へと改良した。

 いくら人類を救った英雄といえど、彼女の魔力操作技術はルキフェルには遠く及ばない。それにより、魔剣は魔力障壁を撃ち破る事には成功した。だが、彼女には届かなかった。


「第三段階<霊装・ウンディーネ>、私の自慢の盾であり、矛です。」


 俺の放った一撃は、惜しくもレネに致命的なダメージを与える事ができなかった。だが、俺は彼女の本気を引き出すことに成功した。

 青い羽衣と、神々しいオーラを纏ったレネの姿は、まるで女神が地上へと降りて来たかのようであった。


「『満月』を正面から受け止めるとか反則だろ。どんだけ硬いんだよ。」


「硬い、というより威力を受け流すことによって、無効化したのです。これ以降は、物理的なダメージが入らないと思って下さい。」


「やっぱりチートじゃねーか。」


 流石は星間戦争中の序列3位、頭のおかしい強さだ。しかもこの上に、最低でもあと2人いるのだから恐ろしい。

 物理的な攻撃の受け流し、どのような仕組みなのかはわからないが、厄介なことこの上ない。タネがわからない以上、無闇に攻撃を仕掛けるのは愚策と判断した俺は、一度距離を取った。

 クリスティア=ヘリフォードと戦った時も思ったが、星間戦争時代に活躍したS級魔法師は、どちらも防御力が高く、回避手段や対応策が充実している。おそらく、充実しているからこそ、あの地獄の戦争を生き残ることができたのだろう。となれば、このしぶとさにも十分納得ができる。


「さて、どうするか・・・・・・。何か良い案はあるか?ルキフェル。」


【あるけど言わないでおくわ。】


「いや、言えよ。」


【それじゃあ、貴方の成長に繋がらないでしょ?ちなみに、あの攻撃の受け流しの仕組みの方も理解できたわ。】


 俺には、魔法の師となる人物が3人いる。1人目は明日人の父であり俺に魔法の基礎を教えてくれた藁科結人さん、2人目は異世界で俺に氷魔法を教えてくれたトワトリカ、そして3人目はルキフェルだ。

 もちろん、前者の2人の教えも自分のためになったが、ルキフェルの教えは他の2人とは一線を画すものであった。地球の教科書とは違う、俺の身体的な特徴を加味した、俺だけの戦闘スタイルを教えてくれた。

 俺にとってルキフェルは、相棒であり、魔法の師でもあった。


「せめて、ヒントとか無いのかよ。」


【仕方ないわね。じゃあヒント、あの受け流しは確かに強力だけど、物理法則を捻じ曲げているわけじゃないわ。だから、攻略の糸口は存在するわ。】


「なるほど、勝機はあるということか・・・・・・」


 ルキフェルがそう断言したということは、駒は揃っているということだ。あとは、俺がどう指揮を振るか次第、勝負はそこにかかっている。


「さぁ、踊ってやるよ。」


 お決まりの決め台詞と共に、俺は自身の魔剣を強く握った。



 *



「やっぱり健斗はすごいね〜」


「レベルが高すぎて、私には何が何だかさっぱりだわ。」


「今は理解できなくても仕方がありませんが、それでも目を離してはいけませんよ、ルーシアさん。彼に追いつきたいと思うなら、少なくとも逃げてはいけません。」


「はい、咲夜さん」


 健斗がレネと戦っている頃、地上ではルーシアと藁科親子が二人の戦いを見守っていた。ルーシアにとってはレベルが高く、二人の攻防を完全には理解できなかったが、それでも言われた通りにじっと空を見つめていた。


「ちなみにルーシアは、どっちが勝つと思う?」


「以前までならレネ=ストライクと即答したけど、正直今の私には判断がつかないわ。」


「じゃあ、勝ってほしい方はどっち?」


「そ、それはっ!」


 ニヤニヤしながら尋ねた明日人に対して、ルーシアは照れを隠しながら答えた。明日人にとって、彼女の反応はとても分かりやすく、はっきり言ってバレバレであった。


「ま、まぁ、一応健斗と答えておくわ。一応ルームメイトだし・・・・・・」


「ふふっ、今さら隠さなくても大丈夫ですよ、ルーシアさん。そもそも私は、貴女のその心意気に共感して、貴女に魔法を教えようと思ったのですから。」


「す、すみません、咲夜さん。」


「いえいえ。」


 健斗がA級、そしてS級と、とんとん拍子で級位を上げているのを見て、置いていかれたくないと思ったルーシアは、知り合いを通じて咲夜に魔法を教えてもらうこととなった。


「ですが、目標は積極的に声に出した方がいいですよ。」


「咲夜さん・・・・・・はい、わかりました。」


 異次元の戦いが繰り広げられる中、私は声に出しながら健斗の勝利を祈った。


「頑張って、健斗・・・・・・」


 ______________________________

 どうでもいい話

 一方その頃、明日人の双子の妹、衣夜は、


「zzZ・・・・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る