過去の英雄編
第1話 最強を知る者
「私が握ったお寿司は美味しかったですか?」
「っ!はい、とても・・・・・・」
「それはけっこう。」
レネ=ストライク、もちろん聞き覚えはある。アメリカが誇る英雄の1人で、星間戦争中は序列3位のS級魔法師として活躍した人物だ。強さは言わずもがな、その美しい容姿と青い髪は世界中を魅力した。今は既に引退しており、表舞台からは姿を消しているが、それでも彼女の活躍は今でも語り継がれている。
そんな彼女が、板前として俺たちに対してお寿司を握るなんて、夢にも思わなかった。実際俺は、あの時の美人な板前さんが、誰もが英雄だったなんて全く気が付かなかったし、ルキフェルの方も気付いていなかった。
「貴方をS級に推薦した私が言うのもおかしな話ですが、貴方は予想以上でした。彼が、自分の子供ではなく君を次のS級魔法師に選んだのも納得です。」
「それはどうも。」
彼とはおそらく、黒白の事だろう。
レネ=ストライクと黒白の仲が良いことは有名だ。これはレネ自身が語ったことだが、彼女と黒白、そして日本の紅焔は幼馴染であり、幼少期は共に日本で過ごしていたそうだ。そのため彼女は、謎の多い黒白を最も良く知っている人物であり、黒白が人間である唯一の証言者でもあった。
「俺は最初、黒白がこいつらの黒幕だと思ったが、違ったんだな。」
「彼はこんなつまらないことはしませんよ。今回の件は全て、ゼラストさんの仕業です。」
これは予想通り、やはり黒白は関与していないようだ。
「目的は、世界各国への牽制と、俺の実力を確かめること、であっているか?」
「はい、多分合っていると思います。しかし、どうやらこの方達程度では、貴方の実力は測れなかったようですね。」
「そのようだな・・・・・・」
強くはあったが所詮はA級魔法師、全体的に若く経験不足であったこともあり、正直なところハンデが無ければ瞬殺できる相手であった。そもそも、5対1という圧倒的な状況下で俺に勝てなかったのだから、戦力の差は言うまでもない。
これからどうするつもりなのか予想していると、これ以上ないわかりやすい答えが返って来た。
「だから、私が来ました。」
直後、凄まじいオーラが彼女から溢れ出た。これが、英雄の放つオーラ、今までで出会った誰よりも凄まじく、反射的に俺もオーラを撒き散らした。
圧倒的な存在感、そして膨大な魔力、アメリカの天使と謳われる彼女の威圧感は、凄まじかった。
「なるほど、実にシンプルで分かりやすい。」
「まずは条件を決めましょう。貴方は何を望みますか?」
「望みか・・・・・・」
少し考える。思えば、今の俺にはこれがしたいという強い望みは無いように思える。今の俺は、目標もなくただ単に突っ走っている状態、やりたいことなどは特にない。
でも一つだけ、叶うなら試したい事があった。
「黒白に会わせてくれ。」
「黒白、ですか?」
「あぁ、今の俺が、あの人とどれぐらいの差があるのか知りたい。」
単純な興味という側面もあるが、本命はもちろん別にある。
それは異世界転移について、何か心当たりがないか、話を聞いてみたいと思ったからだ。もしかしたら、人類の空間魔法師である彼ならば、何か知っているかもしれないと思った。
「ふふっ、良いでしょう。貴方が勝ったら、私の方から彼に頼んでみます。」
少し疲労は残っているが、戦闘に影響するほどではない。むしろ、俺は映像などで彼女の使う魔法を何度も見ているので、アドバンテージを持っているのはこちら側だ。もちろん、手を抜くつもりもない。
「この5人、どうします?」
「ゼラストさんが待機していらっしゃるので、そのまま地上に落下させて大丈夫です。」
「分かりました。」
言われた通りに、俺は重力系統の魔法を使って真下に落とした。申し訳ないことをしたなと思うが、先に喧嘩を売ったのはそちらなので許して欲しいところだ。
「さて、そろそろ始めましょうか。」
「そうですね。」
落下していく5人の魔法師を横目で眺めながら、俺は戦闘準備を行った。相手の実力が本物であることは既に判明しているので、今回は切り札を使わないような真似はしない。
手を抜いて勝てる相手ではないことはすぐにわかった。
「全てを無に帰せっ!
俺は、自身の左側に紫色の魔法陣を描いた。呼び出すのは無敗の魔剣、異世界で俺と契約した最強の堕天使の半身だ。ルキフェルは、圧倒的な存在感を放ちながら、周囲を威圧した。
【やっと骨のある相手が来たわね、健斗。】
あぁ、この前戦ったクリスティア=ヘリフォードよりも数段強い。油断したら、一瞬でやられるかもな。
【サポートは任せなさい。】
頼んだ。
「では、私も。」
レネは静かに目を瞑ると、自身の背後に大きな青い魔法陣を形成した。それは見覚えのある魔法陣で、少し前に見たばかりのものであった。
「
契約精霊召喚、サティが先ほど使っていた精霊の力を一時的に借りる魔法とは違い、こちらは契約。
より多くの力を精霊から引き出す事ができる。
レネがそう唱えると、目の前に青い魔法陣が形成される。そして、ゆっくりと精霊の輪郭が形成された。
さらに続けて、レネは精霊使いの証とも言える魔法を展開した。
「
___________________________________
どうでもいい話
レネや私の年齢は考えないようにしましょう。
というわけで、第5章です。
ちなみに、多分皆様のご想像よりはだいぶ若いと思います。
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