第16話 環境的なアドバンテージ
「朝っぱらからご苦労な事だな。」
新たに現れた魔法師たち、全員がサティと同等かそれ以上の魔力を有しており、それなりの実力者であることがわかった。どうやら、気配を隠すつもりはいっさい無いらしく、まるで気付いてくれと言わんばかりに、凄まじいオーラを放ちながらこちらへと向かってきた。
「5人か、少し面倒だな。」
【いいえ、7人よ。】
「え?7人?残りの2人は何処だよ。」
【貴方から見て10時の方向、どうやら戦う気は無いようだけど、相当な実力者よ。】
ルキフェルに言われて、俺は再び魔力感知を飛ばした。
たいていの魔法師が一番最初に習得する魔法、魔力感知には2つの方法が存在する。
1つ目は周囲に存在する魔力を放つ人や物を感知する方法、通称パッシブソナー。魔法師は基本的に常時発動しており、人間の五感でいうところの耳のような役割を果たしている。ただし、意識的に魔力の放出を抑えることは可能で、対象との距離が離れれば離れるほど精度は落ちる。
そして2つ目は、意識的に魔力波を飛ばして、その跳ね返り具合から潜伏する魔力を蓄えた人や物を探す方法、通称アクティブソナー。自身の位置を相手に知らすことになるというデメリットは存在するが、たいていの相手には有効であり、特に探す相手の魔力パターンを覚えている場合は、ほぼ確実に相手を捕捉することができる。
「この魔力パターンはっ!」
【見つけたみたいね。】
「やっぱりあの人が黒幕だったか。でも、もう1人は誰だ?」
【相変わらず記憶力が乏しいわね、貴方は。少し前にあったばかりじゃない。】
記憶を遡ると、該当する人物はすぐに思い浮かんだ。名前は知らないが、おそらくあの人しかいない。
「ただの美人な職人じゃないってことか・・・・・・」
【そのようね。正直私も今の今まで気付けなかったわ。】
ルキフェルは、悔しそうに呟いた。
あのタイミングでアクティブソナーの方を使っていれば気付けたかも知れないが、俺も今の今までただの一般人だと思い込んでいた。その手腕に関心を持ちつつも、頭を切り替えて目の前ことに集中した。
1対5、同格同士ならば絶望的な戦力差であるが、正直なところ負ける気がしなかった。だが、今考えるべきことは、圧勝することではなく、どう勝つか、できるだけその後に行われるであろう話し合いで有利にな立場を取れるように立ち回る。
「アイデアをくれ、ルキフェル。できるだけスマートに勝ちたい。それと、できれば都市への被害を最小限にしたい。」
【私なら、上を目指すわね。】
「上?」
【えぇ、宇宙空間なら周りを気にせずに戦えるわ。まぁそこまで上がらなくてもいいけど。】
「それ採用。早速行くか。」
宇宙空間での戦闘、前々から少しだけ興味があった。この辺りで、経験を積んで置くのも悪くない。俺は決意を固めると、舞台を移すために上空へと向かった。
【太陽からの紫外線や赤外線に気をつけなさいよ。】
「あぁ、わかってる。」
現代魔法学において、宇宙空間で魔法戦闘を行う際のプロセスは、既に確立している。そもそも星間戦争は、字面からわかるように宇宙空間での戦闘も行われた。そのため、教科書は既に存在しており、俺は教科書の通りに魔法を構築した。
まずは魔力障壁、そこに様々な魔法を混ぜる。宇宙空間で気をつけるべきものは、何も空気の確保だけじゃない。
まずは温度、地球付近の宇宙は太陽の光の当たるところは約120℃、太陽の光が当たらないところでは約マイナス150℃という極端な高温と低音、生身の人間ならばまず間違いなくお亡くなりの環境だ。太陽から降り注ぐ紫外線や赤外線も忘れてはならない。地上ならばオゾン層が身体を守ってくれるが、オゾン層が存在しない宇宙空間では対処が必要だ。他にも、宇宙をただよう塵や人工衛星の残骸など(スペースデブリ)から身体を守らなければならない。
「想像よりも簡単だったな。いや、宇宙空間での戦闘を可能にするためのプロセスを、こんなにも簡単にした黒白を褒めるべきか・・・・・・」
【流石、人類最強といったところね。正直、彼が本当に人間なのか疑うわ。】
「まぁ、まず間違いなく人間は卒業しているだろうな。」
【いつか、戦ってみたいわね。】
「俺は遠慮したいな。正直、勝てる気がしないし。」
黒白、出身や年齢、強さの秘密などは全くと言っていいほど分かっていない。突然、日本のS級魔法師として現れた彼は、幾つもの功績を積み上げると、一瞬にして序列1位へと駆け上がった。実際に会ったことはないが、その強さや凄さは語り切れない。不敗神話や英雄譚は数え切れないほど存在しており、まさに生きる伝説。
と、そこで、俺は下方からやってくるお客さんの存在に気がついた。
【どうやら、無駄話はここまでのようね・・・・・・】
「案外早かったな。」
俺が宇宙空間での戦闘を選んだ一番の理由は戦闘における障害物が無いことだ。不意打ちを気にしなくて良い分、俺の攻撃に選択肢が生まれる。
「さて、どう踊ろうか。」
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どうでもいい話
宇宙空間での戦闘、思えば初めて書くかもしれん。
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