第15話 最強の一角
「固有魔法とは何か考えた事はあるかな?」
「無いな。」
「そうか、私は昔、どうしても力が欲しかった時に何回か考えた事があってな。」
「へぇ。」
固有魔法とはいったい何なのか、この問いの明確な答えは未だに判明していない。
一般的には、魔力の核心に気づいた者だけが取得する事ができる、魔法の極端と言われているが、固有魔法の発現方法や仕組みは未だに明らかになっていない。固有魔法はその名の通り、人の数だけ種類があると言われており、人によって全然違う。
ただし、固有魔法の遺伝性は確認されている。例えば、ルーシアとアレンは同じ干渉系統の固有魔法を発現してるし、健斗のような召喚系の魔法師は、両親のどちらかが同じ召喚系である可能性は高い。まぁ、固有魔法の遺伝性に関しては例外も存在するのでまだ調査中ではあるが・・・・・・・・・
「考えに考えた末、私はある一つの仮説を立てた。」
「仮説?」
「固有魔法とは、心の形なんじゃないかなと思ってな。」
クリスティアは、自身の固有魔法で顕現させた聖剣を眺めながらそう呟いた。考えた事もないような全く新しい視点を提案した彼女に対して、俺は少し驚きながら返事をした。
「心の、形?」
「そう、心の形。だからふと、貴方はどんな思いをその魔剣に込めたのかなって思ってね。」
そう言いながら、彼女はこちら側を向きながら正面に構えた。剣を向けられて、そろそろお喋りの時間が終わる事を悟った。お互いの剣に込められた魔力は、先ほどまでの戦闘で消費した魔力の総量よりもずっと多い。
とてつもない魔力を込められた魔剣と聖剣は、それぞれ輝きを放ち、観客達を魅了する。
【今回の敵は、中々の強敵なようね。】
あぁ、どうやらそのようだな・・・・・・
【この前戦ったあの男もS級と聞いていたけど、どうやらピンキリのようね。】
ルーシアに怒られるぞ、俺が。
【貴方の事情なんて知らないわ。それよりも、今は目の前の相手に集中しなさい。第一段階だけで勝つなら、この前のようにはいかなそうよ。】
分かってるよ。
「はっ!」
相変わらず動く気配が全く無い彼女に対して、俺は最初の一歩を踏み込んだ。
最初は純粋な身体能力と魔剣による一撃、低く構えた魔剣で横一文字に剣を振るった。それに対して、縦に聖剣を構えた彼女は正面から攻撃を受け止めた。
剣と剣が交わり、凄まじい爆音が周囲に鳴り響いた。パワーはほぼ互角、いや、勢いが無いはずなのに互角という事は、魔法無しのパワー勝負は向こう側に分があるということになる。その事実を受け止めつつ、俺は攻略の糸口を探す。
「強いな・・・・・・」
「それはこちらのセリフだ。S級魔法師と説明されても納得できる。必要なら、私の方から推薦するが?」
「お断りだっ!」
今のところ、S級魔法師になりたいとは一ミリも思わない。異世界に飛ばされる前なら、S級魔法師に憧れたことが何回かあったが、A級魔法師となった今だからわかる、S級魔法師なんて常人に務まる役職じゃ無い。A級魔法師ですら、こんなに面倒事に巻き込まれるのだ、S級魔法師はこの数倍は忙しいのだろう。だから絶対にごめんだ。
「帝国流奥義、<満月・改>っ!」
繰り出すのは連撃、両手剣使いを相手にするなら、手数勝負に持ち込んでスピードで上回るのが定石、反撃の隙を与えずに斬り続ける!帝国流奥義<満月・改>は、敵が倒れるか中止するまで斬り続ける技だ。魔力障壁を使って斬撃を反射させ、一撃一撃の間を少なくする。本来は魔力障壁は使わないのだが、これは帝国流の奥義とも言える剣技を俺なりにアレンジしたやつだ。こちらの方が、予備動作が無い分剣の向きがわかりにくい。
「ぐっ!」
「踊れっ!」
ちなみにこれは、俺の憧れの魔法師である黒白の技を模倣したものでもある。あの人のような空間魔法は、残念ながら俺には使えないがそれと同じぐらいの速さと複雑性を合わせ持つ。
きっと、彼と長年同じS級魔法師として活躍してきたクリスティアさんは、この技と似たような見た事があるだろう。
だからこそ・・・・・・
「はあああっ!」
脳をフル回転させて、攻撃を続ける。攻撃に集中する分、自分自身が無防備になるので相手に隙を与えないことが大事だ。
体力を削りつつ、押し切れるならここで押し切りたい。まぁもちろん、この程度でやられる相手でない事も理解はしていた。
「<
クリスティアがそう呟いた直後、彼女の武器が輝いた。直後、俺の斬撃が跳ね返された。俺は、勢いそのまま、後方へと吹き飛ばされた。
「やるな、今のは中々すごかったぞ。他のS級魔法師なら、あるいは倒せたかもしれんな。」
「なら、倒れて欲しかったな。」
「あいにく私は、防御力が高いのでな。」
「流石は、あの地獄の戦争を生き残った存在ということか・・・・・・」
吹き飛ばされた直後は何が起こったのかわからなかったが、どうやら彼女はただ俺の攻撃を防御するだけでなく、反撃のための魔法を練っていたようだ。それが、発動して俺を襲った。
「さて、反撃といこうか。」
改めて、相手が人類最強の一角であるS級である事を思い出す。先ほどの攻撃による疲れを感じながら、俺は身構えた。
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