第6話 お隣の事情
『最強の転校生、転校4日目でまさかの生徒会長と副生徒会長をまとめて撃破!』
『ついに校内ランキング1位へ!不敗の生徒会長、何もできずに敗北!』
『まさかの魔法陣?!転校生が使用した魔法を一挙解説っ!』
「『今や、育成学校の注目の的となっている無敵の転校生、本条健斗は、今日行われたスペシャルマッチにて、生徒会長と副生徒会長を同時に撃破、それにより校内ランキング暫定一位に躍り出た。転校4日目で校内ランキング1位に躍り出た前例はもちろんなく、来週の月曜日に行われるランキング更新まで順位を守り切れば、史上最速のチャンピオンが誕生する事になる。』だってさ、いや〜凄いね〜もう記事ができでるよ。」
風紀委員室のソファに寝っ転がりながらタブレット端末で校内SNS『RSW』を見ていた明日人は、俺についての記事を見つけると音読しながら笑った。まだ決闘が終わってから1時間ほどしか経過していないのにも関わらず、既に『RSW』内には、様々な写真や動画の投稿がされており、トレンドの上位を独占していた。『RSW』では現在、一種のお祭り騒ぎのような状況となっていた。
「まさかあの健斗が、育成学校最強の座を獲得するとはね〜」
「意外か?」
「少なくとも、昔の健斗をよく知っている僕からすると考えられないよ。衣夜もそう思うよね。」
「うん、私たちの中で一番弱かったもんね〜模擬戦じゃ、いつもお兄ちゃんにボコボコにされていたし・・・・・・」
「いいだろ、昔の事は。」
明日人と衣夜の言っていることは全て事実だ。同級生に比べたら、それなりに魔法が使える方であったが、俺は一度もこの双子に勝てた事がなかった。
言われて、ふとこんな事を考えた。
では、今はどうだろうか。異世界で鍛えられて強くなった今の俺は、この双子に勝つ事ができるだろうか。いや、考えるのは辞めておこう、ただの学生が相手なら、俺が負けるわけがない。少し気になったが、俺はそう自分に言い聞かせて、考えるのを辞めた。
「それで?どうして俺をここに呼んだんだ?まさか、煽るために呼んだってわけじゃないだろうな。」
「実は一つ、健斗にはやって欲しい事があってね。」
「なんだ?面倒事じゃなければ聞くぞ。」
明日人からお願いされることなんて、今まで無かったので俺は驚きながら答えた。まぁ、俺から明日人にお願いをしたことなら何度かあるが・・・・・・
「まぁ、面倒ではあるかな。でもこれは、半分くらいは健斗のためになるお願いなの。」
「俺の?」
「うん、まぁ正確には、健斗のパートナーのルーシアさんの事なんだけどね。」
「え?ルーシア?」
俺は、明日人の口からルームメイトの名前が出た事に驚きつつ、話を聞く事にした。スルーしても良かったが、お隣さんが機嫌を損ねれば、俺も少なからず被害を被る事になるため協力することにした。
「ルーシアさんは今、どうして日本にいるかは知っている?」
「確か、父親から逃げるためって聞いたが?それでわざわざ日本に留学しに来たって。」
聞いた時は、お父さん可哀想だな〜ぐらいにしか思わなかったが、どうやら別の理由があるようだ。
「そうなんだけど、実は複雑な事情があるんだよ。」
「複雑な事情?」
「うん。実はルーシアの父親はドイツ人なんだけど、母親の方は日本人なんだよ。その場合、その子供は基本的に生まれた場所がその人の所属になるのが普通なんだけど、ルーシアは高校生になる際にドイツじゃなくて日本に所属する事を希望したの。そういう場合、普通の子供なら見逃されるんだけど、彼女の父親はS級魔法師だから色々と問題になったんだよ。」
話をまとめると、ドイツを代表するS級魔法師を父親に持ち、将来が有望視されているルーシアを巡って、日本とドイツで取り合いが行われているらしい。ドイツ生まれではあるが、本人は日本所属を希望しているということで色々と揉めているそうだ。
正直、本人が日本を希望しているなら、日本でいいだろ、と言いたいところだが、実は彼女が生まれる直前にも、どちらの国で生むか日本とドイツは揉めた過去があったらしい。その際、ドイツは日本政府に対して少なくないお金を払い、ルーシアをドイツ生まれにする事を納得させた。
ルーシアの育成学校入学が決定的になったため一度は収まったが、日本に新たなA級魔法師が誕生したというニュースを受けて、最近その問題が活発化しているらしい。
「話はわかった。でも、どうすればいいんだ?」
「とりあえず健斗は、できるだけルーシアさんの近くにいるようにしてあげて。」
「わかった。」
「ルーシアさんの強さは僕もよくわかっているけど、彼女だってプロが相手だと厳しいかもしれない。だから、健斗が守ってあげて。」
「わかった。できる事はしよう。」
「頼んだよ、健斗。」
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どうでもいい話
ドイツ、いいですよねー
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