第4話 色々な戦い方

「まずはこの俺様から行かせてもらうっ!」


 最初の攻撃は、俺様口調の方から始まった。男の武器は長剣、俺は男が放った真上からの縦方向の攻撃を正面から受け止めた。剣と剣が正面からぶつかり、鈍い金属音が鳴り響いた。


「声を出す余裕があるならば、そのリソースを攻撃のために使えよ。」


「黙れっ!」


 男は防がれた事を理解すると、すぐさま俺の背後へと周りこみ、視覚の外側からの攻撃を繰り出した。

 中々にゴツい身体付きをした先輩であったが、彼の魔法はちゃんと現代魔法師らしく速さに特化した構成になっていた。だが、速いと言っても所詮は学生レベル、来るとわかっている攻撃の一つや二つ、受け切るのは容易だ。


「攻撃がノロ過ぎて、思わず欠伸が出そうだな。」


「ぐっ!」


「おっと、そっちもバレてるぜ。」


「っ!」


 背後から飛んで来た一撃に対して、俺は振り向く事なくその攻撃を魔力障壁によって防いだ。スピードに特化した魔法式を組み合わせている分、威力はそれほど大きくなく魔力障壁によって容易に防ぐ事ができた。

 同時に、俺は下方向から飛んで来たもう1人の攻撃を右手に持った愛剣で弾いた。片方が俺のヘイトを稼ぎ、もう片方が気配を消しながら俺に近づいて攻撃を繰り出す。確かこの2人は、育成学校の生徒会長と副生徒会長であったはずだ、そのためか2人は中々に連携が取れていていた。

 だがそれでも、俺が脅威として認識するほどじゃない。


「くそっ!腐ってもA級、そう簡単にはいかないか・・・・・・」


「俺は別に腐っていないつもりだけどな。」


 確かに俺は、色々と特殊な事が連続した結果、A級魔法師に昇格する事になったわけだが、別に腐っているつもりは無い。これでも俺は、向こうの世界で8年間ほど勇者をしてきた。もう一度言うが、腐ってはいないはずだ。


「今日遅刻した件については、どう説明するつもりだ?」


「アレは俺じゃなくて、ウチの委員長に言ってくれ。」


「なるほど、六道の仕業か。それなら納得だな。」


 俺が原因を伝えると、2人は何故か頷きあっていた。どうやら2人も、ロリ先輩、正確には有栖川さんの突然の思い付きに振り回されていた側のようだ。何というか、親近感を感じる。


「せっかくだ、俺の本気の魔法を見せてやろう。」


「本気の魔法だと?」


「あぁ、魔法使いとしての、俺の力を。」


「っ!」


 左手を前へと突き出した俺は、自身の周囲に魔法陣を描いた。背丈と同じくらいの大きさの魔法陣を16個、アリーナのバトルフィールドを囲むようにして空中に描いた。当然、魔法陣の完成を防ごうと、2人は俺に対して攻撃を繰り出した。


「フルアタックだっ!奴が魔法陣を完成させる前に畳み掛けるぞっ!」


「っ!」


 魔法陣は構築するのに時間がかかるという明確なデメリットが存在するが、一度完成してしまえば、魔力回路に魔力を流すだけの魔法よりもずっと高威力、高効果、広範囲の魔法を行使する事ができる。だが今現在、魔法陣は魔法師達にあまり普及していない。というのも、この時間がかかるというデメリットは高速化が進む魔法師にとって、無視できないものであったからだ。

 敵が魔法陣を構築し始めた際の対処法は大きく分けて3つ、1つ目は一番簡単な方法で効果が及ばないところに逃げること、2つ目は同じく魔法陣を構築して対抗すること。そして最後、最もオーソドックスかつ多くの魔法師が採用している方法、それは敵が魔法陣を完成させる前に敵魔法師を戦闘不能にすることだ。

 魔法陣の構築にリソースを割きつつ、俺は残された少ないリソースで受けに徹する。


第一段階ファーストステージ加速連撃アクセルラッシュ〉っ!」

第一段階ファーストステージ霧水隠密スモーキングインビジブル〉」


 2人はそれぞれ、固有魔法を行使した。育成学校の頂点に立つ男達は、一瞬で魔法式の構築を終わらせると間髪を入れずに俺に向けて放った。

 俺はそれを、あまりリソースを必要としない簡単な魔法と体術でいなす。強力ではあるが俺の対応の範囲内だ。


「良い事を教えてやろう。今の俺の魔法陣構築スピードは、あの大きさなら1個につき1秒弱だ。だからざっと、10秒あれば魔法陣が完成する。」


「そんなに早くっ!」


 学生レベル魔法師なら、全てのリソースを魔法陣の構築に注ぎ込んだとしても1個につき10〜20秒ほどの時間が必要だ。もちろん、大きさや使う魔法の種類にもよるが、普通なら自身の防御にリソースを割きつつ、魔法陣を1秒足らずで構築するのは不可能だ。だけどそれは学生の話、俺の魔力操作技術ならばそれも可能だ。

 そうこうしているうちに、10秒が経過した。


「さて、完成したぜ。」


「ぐっ!」

「っ!」


 完成と同時に、魔法陣が青く輝いた。あとはこの魔法陣に魔力を流せば、魔法陣に書かれた通りの効果が発動される。固有魔法を使える事は、戦闘において大きなアドバンテージとなる。

 だが、魔法陣が完成した以上、俺の勝ちは確定した。


「何か言い残す事はあるか?」


「受け切ってみせる。」

「っ!」


 そう答えると、2人はそれぞれ自身の自身を強力な魔力障壁で覆った。何重にも魔力障壁を重ね、防御力を高める。

 2人の魔力障壁の硬さを把握した後、俺は魔法陣に魔力を流した。


「<氷結世界スノーストーム>」


 手に持った愛剣を収納魔法で亜空間へと仕舞い、俺は左手でパチンと指を鳴らした。直後、魔法陣に囲まれた内側は一瞬のうちに氷の世界へと変えた。

 2人が死なない、ギリギリに調節されたその魔法は、彼らが張った魔力障壁を当たり前のように貫通し、空間内の全てを凍らせた。2人の身体や武器はもちろんのこと、フィールドや空気中の水分までも。

 俺の一撃は、2人を戦闘不能へと追い込んだ。


 ____________________________

 どうでもいい話

 次回のおまけの際に、魔法の説明しなきゃだなって思いました。今のうちに説明文を考えておきます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る