第16話 得意と不得意
結局、国際親善試合の話を受ける事にした俺はそのまま真っ直ぐ自宅へと戻って来た。対戦相手の名前は聞きそびれたが、対戦相手国はイギリスだと聞かされた。
ちなみに、決闘の際は日英関係なんか気にせずに全力でやっていいと言われた。むしろ手加減をするのは失礼にあたるので、例え相手がS級魔法師であったとしても、殺さなければ全力でやっていいと言われた。
まぁ、そんな事はともかくとして、俺はやっとの思いで我が家へと戻って来た。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
「あ〜今日も疲れた〜」
玄関の扉を開けると、エプロン姿のルーシアが俺を出迎えてくれた。いつもの赤色の制服に、黄色い生地に水玉模様のエプロンを着たその姿は可愛らしく、とてもよく似合っていた。
「今日も遅かったわね。」
「おかげさまでな。」
ルーシアの何気ない一言に対して、俺は彼女の目をしっかりと見ながら真剣な表情で答えた。
「その様子だと、気付いていたようね。」
「あぁ、今回の一件、俺の所属する懲罰委員会を中心に風紀委員会と部活動連合会は生徒の避難誘導や付近の警戒をしている中、生徒会だけは明らかに対応がおかしかったからな。流石の俺でも、違和感には気がついたよ。」
「・・・・・・」
普通なら、学校内に侵入者が現れたなら、4つの組織と教師陣が協力して問題に対処するのが一番効率がいいのだが、生徒会だけはまるで最初から侵入者の目的と正体が分かっていたかのように沈黙を貫いていた。まぁ仮に姿を見せて協力の姿勢をとっていたとしても、戦闘には参加させずに避難誘導をお願いしていたと思うが・・・・・・
「それで、風紀委員会に頼んで監視カメラや生徒会の記録をあらかた調べて貰ったら、ビンゴだったってわけだ。まぁ、どうやら生徒会の方も隠す気はさらさら無かったようだがな。」
「一応謝っておくわ。ごめんなさい、助けになれなくて・・・・・・」
「気にしなくていいし、元から期待していないよ。」
「健斗・・・・・・」
篠原桜太との戦闘は、実を言うとそれなりに余裕があった。最初に相対した時は魔力操作技術の高さから厄介な相手と評価したが、想像よりもずっと楽な相手であった。ただ硬く一撃一撃が重いだけ、回避は案外簡単だし動きもそんなに早くない。代物攻撃に特化したこの男の魔法は、強くはあるが対人戦には向いていない。
だから俺は、数回撃ち合っただけで自身の勝利を悟った。まぁ相手に殺意が無いことは既に分かっていたので、こちらも本気で殺すつもりはなかった。まぁ、気を抜いたらやられそうな場面もあったので、集中するところはちゃんと集中したが・・・・・・
「そんなことより、今日はもう疲れた。ご飯にしようぜ。」
「でも・・・・・・」
「このぐらい気にするな、ルーシア。俺にとっては、困っている外国人に道を尋ねられたぐらいのハプニングだ。」
「ふふっ、何それ。」
「大したこと無かったから気にするなということだ。」
心配そうな顔をしていたルーシアに対して、俺は彼女を安心させるようにそう言った。この件に関しては、既に終わった話であり俺はもう別に気にしていない。
ただ、それでは納得していないようだったので、俺は彼女に対して和解案を出した。
「そんなに気にかかるならこうしよう。食事当番は1週間ごとに交代制と決めたが、ルーシアの気が済むまでずっと任せる。それでどうだ?」
「別に良いけど・・・・・・」
「自慢じゃないが、料理は苦手でな。任せれるなら凄く助かる。頼めるか?」
「う、うん、わかった。私が担当するよ。」
ルーシアの了承の返事を聞いて、俺は平素を装いながらも心の中ではガッツポーズしていた。真面目な彼女の事だ、おそらくこれから先、俺が料理を作るハメになる事は永遠にないだろう。
それにしても、今日も色々とあった。今日は肉体的にも精神的にも疲れの溜まる一日で、俺は今すぐにでもご飯を食べたい気分であった。風呂は、ご飯を食べた後にゆっくりと入るとしよう。今日は何もやる事がないので、お風呂から出たあとはベッドに直行できる。
俺が家に着いた時には既に、ルーシアは暖かい夕ご飯を既に用意してくれており、俺はそれを美味しくいただいた。
そして、あとは寝るだけと言ったタイミングで、ルーシアはふとこんな事を呟いた。
「そーいえば健斗、あなた今寝る気満々なようだけど、学校の課題は終わったの?」
「え?課題?」
「その様子じゃ、何もやっていないのね。」
はて、目の前のこの女はいったい何の話をしているのだろうか。カダイ?何だそれは?食べ物か?
「今なら教えてあげるけど、どうする?」
「お願いしますっ!先生っ!」
俺はその場で土下座した。明日人に教えてもらうつもりであったが、明日人の教えはわかりにくいので俺は新たな先生を求めていた。
だから、このビックチャンスを逃すわけにはいかない。
「何処がわからないの?」
「全部です。」
「え?」
「全部、何もわからないですっ!」
俺は正直にそう伝えた。何よりも、誠実さが大切だと思ったからだ。
「仕方ないわね。全部教えてあげるわ。」
「ありがとうございます!」
その後俺は、ルーシアから付きっきりで勉強を教えてもらうことになった。ちなみに、俺に勉強を教えたルーシアからは、中学1年レベルという評価をいただいた。
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どうでもいい話
前半と後半の落差が激しい。
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