第5話 勝者と敗者
「こ、降参だ・・・・・・」
「そうか。」
そう言いながら、スキンヘッド先輩は自身の槍を地面へと置いた。その表情から推測するとに、俺に勝てる未来が全く見えなかったため自ら敗北を選んだのだろう。
「まぁ、それなりに楽しめた。」
「・・・・・・」
俺たちのいる第二アリーナは、異様な雰囲気に包まれていた。決闘が始まるまではあんなに盛り上がっていた観客席であったが、今では誰一人として声を出す事なく俺たちの様子を見つめていた。既に勝負は決したというのに、拍手すら聞こえて来ない。
「じゃあな、あんたが風紀委員会に自分から入ってくれる事は、後でこっちから知り合いに伝えておくからそのつもりで。」
「・・・・・・」
「あれ?返事ができないのか?」
どうやらやり過ぎてしまったようで、スキンヘッド先輩は完全に心が折れてしまっていた。もう何も、言葉を返す事もできないようで、彼は下を向いたままその場にうずくまった。
「まぁいいや、じゃあな。」
これ以上話す事は無いと判断した俺は、スキンヘッド先輩に背を向けた。そして振り返る事なく、アリーナを後にした。
俺の実力を学校中の奴らに印象付ける事はできた。もう、俺に喧嘩を売ってくるようなアホな奴はいないだろう。そして同時に、俺自身が風紀委員会に入る必要性も無くなった。なんせ、ちょうどいい代わりが見つかったのだ。
「素晴らしい決闘だったな。」
「っ!なんだ、先生ですか・・・・・・」
俺がアリーナを去ろうとした直後、背後から声をかけられた。咄嗟の事で警戒心を高めたが、相手が桐山先生であった事を知り警戒を解いた。
「なんだとなんだ。」
「また面倒な客に絡まれたんじゃないかと思って冷や冷やしただけですよ。」
まぁ、どちらにせよ面倒な相手である事は変わりないが、俺は荒波を立てないように言葉を濁した。この先生の事はよく知らないが、このタイミングで接触してくる事を考慮すれば、あまり良い内容ではないだろう。
「まぁよかろう。それにしても、とても学生とは思えない素晴らしい動きだったな。」
「ありがとうございます。」
「正直言って、もう教える事は無いように思える。間違っていたら申し訳ないが、お前に魔法を教えたのは、
「結人さん?まぁ、結人さんには少しだけ教わりましたけど・・・・・・」
どうして急に、俺の中学校の頃の担任の名前が出てきたのだろうか。まぁ、教わっていない事もないが、1年生の夏休み前には異世界に飛ばされているので、期間はかなり短かったと思う。
藁科結人、彼は明日人と衣夜の父親であり、俺をこの学校に通わせてくた張本人だ。俺を転校生として無理やりねじ込む事ができたという事は、育成学校とそれなりにコネクションがあるのだろうか。だとしたら、桐山先生が結人さんを知っていてもおかしな話ではない。
「そ、そうか、違うならいい。どうやら、私の考えすぎのようだ。」
「は、はぁ・・・・・・では、失礼しますね。」
話が終わったと勝手に判断した俺は、再び歩み始めた。さっさとこの場から離れて、一人でゆっくりできる所に行きたいと思ったからだ。だが、全てが俺の思い通りに、とはならなかった。
「ちょっと待て、まだ本題が残ってる。」
「何ですか?」
「お前に会いたいとおっしゃっているお方がいる。」
「誰ですか?」
一体誰なのだろうか。誰なのかはわからないが、正直面倒事の予感しかしなかった。
「日本魔法協会会長の有栖川氏がお前をお呼びだ、特別応接室へと向かってくれ。」
「わかりました。」
先生の口から出た名前に、俺は思わず耳を疑った。それは、俺でも覚えのある有名人だったからだ。
「もっとごねると思ったが、案外聞き分けがいいな。」
「
今時の若者なら誰でも知っている有名人であり、正直俺からすれば雲の上のような人だ。
そんな人が俺に興味を示すとは、もしかしたらルーシアの父親に勝ってしまった件を気付かれてしまったかも知らない。
「正しい選択だな。わかっていると思うが、失礼の無いように頼む。」
「わかってますよ。」
喧嘩を売るような事をすれば、最悪葉子さんにまで迷惑がかかってしまうかもしれないので、そんな事は絶対にしないしできない。どんな話をされるにしろ、そこだけは気をつけないとだなと思った。
頭の中で考えをまとめた俺は、早速特別応接室へと向かうことにした。
「ところで、特別応接室ってどっちでしたっけ?」
「あっちだ、案内しよう。」
「お願いします。」
「早速、お偉いさんの目に留まったようだな本条。」
「あんまり嬉しくないですけどね。」
「ははっ、どうやらそのようだな。」
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どうでもいい話
私は抹茶好き
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