第4話 賭け事

スキンヘッド先輩に先導されて、俺たちは第二アリーナへとやって来た。ここは以前、ルーシアと戦った場所であり、以前と違うのは目の前に立つ相手と観客の人数だろうか。どうやらかなり注目されているらしく、以前よりも観客が多い。

まぁ、外野がいくら増えた所で、やる事は変わらないが・・・・・・


「さてと・・・・・・じゃあまずは、ルールを決めようか。」


「ルールだと?」


「あぁ、こっちにはあんたと戦う理由が無いからな。俺が勝ったら、俺の要求を一つ飲んでもらう。それでどうだ?」


「わかった良いだろう。それで?その要求というのは?」


このまま、何も賭けずに戦っても良かったが、どうせ戦うなら何か旨みがあった方がやる気がでるというものだ。まぁ、やる気が無い状態でも負ける気がしないが、どうせならと欲が出た。


「さっき知り合いに聞いたんだが、あんたは部活動連合会の会長なんだよな?」


「あぁそうだが、それがどうかしたか?」


どうやら先ほど衣夜に聞いた情報は正しかったようで、この男こそが部活動連合会の会長で間違いないようだ。校内ランキング6位に位置していると聞いた時から、それなりの大物であるとは思っていたが、まさか部活動連合会の会長さんがお出ましとは思っていなかった。

どうして俺の所には、こうも面倒な奴らばかり集まるのだろうか。やはり、誰かが糸を引いているとしか思えない。だったら、俺は逆にこの状況を利用してやる。


「じゃあちょうどいい。俺が勝ったら、会長の座を誰かに譲って、風紀委員会に入ってもらう。もちろん下っ端としてな。」


「なんだと?!」


「風紀委員会には借りがあってな。ランキング5位が下っ端として加入してくれるとなれば、少しは喜んでくれると思ってな。」


思いついたのはつい先ほど、勝てば風紀委員会弱すぎ問題を解決できる上、風紀委員会への借りもチャラにできる。これを、一石二鳥と言わずして何という。


「ふざけているのか?」


今のスキンヘッド先輩の怒りマークの数は5つ、どうやら明日人の挑発よりも俺の挑発の方が効いているらしい。まぁ、あんまり嬉しい情報では無いが・・・・・・


「嫌なら、尻尾巻いて逃げてもいいんだぜ?今なら誰も止めない。」


「いいだろう、かかって来い!」


さて、何秒待つかな。





「アレが、例の少年か?」


「はい、2年Aクラス所属の本条健斗に間違いありません。」


「戦っているのは?」


「3年Aクラス所属の豪山太郎という生徒です。典型的なパワー特化型の槍使いで、校内ランキング5位に位置する生徒です。」


「ふむ・・・・・・どうやら、学生レベルでは相手にならないようだな。」


「そのようですね・・・・・・」


日本魔法協会からの視察団は、第二アリーナの上部に設置されいる特別観戦室から、今回ここにきた目的でもある本条健斗の視察を行っていた。

特別製の強化ガラスの向こう側では、一方的な戦闘が繰り広げられていた。本条健斗の実力を確かめにここに来たが、対戦相手とのレベルが違いすぎて、計測は難航していた。そもそもただの学生が、この世界の頂点の証であるS級を授与するかもしれない少年に対抗できるわけがなかった。両者の間には決して埋まる事の無い絶対的な差が存在しており、対戦相手の男は一方的に殴られ続けるだけであった。


「どうやら、終わったようだな・・・・・・」


「そのようですね・・・・・・」


実力の差を、これでもかと見せつけられた対戦相手の男は、遂には降伏を選んだ。もはやそれ以外に道はなく、白旗を挙げる事を選択した。


「昨日の映像が本物であった事は間違いないようですね。」


「あぁ、少なくともA級以上、もしかしたらS級、か。久しぶりに、心躍る話がやってきたな。」


「はい、真相はまだわかっておりませんが、現地調査からこの少年が『ゲルマンの雷神』にどんな形であれ勝利した事は間違いないようです。」


「そうか・・・・・・」


既に、色々な方面から調査が行われており、現場検証はもちろんのこと、MSSや衛星からのデータも取り寄せて分析が行われている。日本の未来に大きく関わる内容だ、これを放置する手は考えられない。


「いかがいたしましょうか。」


「自衛隊や政府の出方はどうだ?」


「いずれも様子見を貫いております。」


「ふん!相変わらず、頭の硬い連中だな。」


男は、自衛隊と政府の対応を鼻で笑った。これは競争だというのに、自ら後手に回るとは悪手としか思えない。


「それではやはり・・・・・・」


「あぁ、このまま本条健斗に接触する。予定を全てキャンセルしてここにやって来たのだ、今さら引くような真似はしない。」


男はそう決断した。魔法協会としてもこのような戦力を見過ごすわけにはいかないし、何より興味があった。


「わかりました、ではそのように手配いたします。」


「あぁ、頼んだ。」


健斗の知らないところで、事態は悪い方向へと動いていた。

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どうでもいい話

一番良く食べるお菓子は?

A・・・ラムネ

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