風紀委員編

第1話 事件の行方

 登校2日目は慌ただしい朝であった。俺とルーシアが2人とも寝坊、まぁ俺の方は戦略的寝坊であるが、起きるのが遅れた結果、朝の支度が結構テキトーになり、一限目の始まりを告げるチャイムと同時に教室に滑り込んだ。


「転校2日目からブザービートとは流石だな、本条。言い訳があるなら聞くが?何かあるか?」


「な、ないです。」


「そうか。ならさっさと席につけ。授業はもう始まっている。」


「は、はい。」


 クラスメイトからの痛い視線を浴びながら、俺は指定された席へと座った。ちなみに、俺よりも一歩先に家を出ていた俺のお隣さんは既に席に座っており、知らないフリをしていた。


「流石噂の転校生だな、貫禄が違う・・・・・・」

「一撃で学校の序列4位に躍り出たその実力は本物だな。」

「絶対関わりたくない・・・・・・」

「なんだあの風格、こえ〜」


 席に座ると、前の方に座る生徒たちの話し声が聞こえて来た。まだ良く知らない相手なだけに、ダメージはそれほど多くないが、それでも心に来るものがある。なんとか表情を崩さずに、気づいていないフリを貫いているが、心はどんどんとすり減っていった。

 チラリとお隣に視線を向けると、彼女は何食わぬ顔で外を見ていた。どうやら、俺と関わる気は全くないらしい。次に明日人を探したが、彼の姿も見つからない。どうする事もできないと言うことを悟った俺は大人しく先生の授業を受けることにした。


「さて、そろそろ授業を始めようと思うが、その前に諸君らに伝えなければならない事がある。昨日の午後6時ごろ、学園の上空で固有魔法をぶっ放して暴れた馬鹿がいるらしい、心当たりがある者は名乗り出ろ。」


「・・・・・・」


 うん、めっちゃ心当たりある。そうだよな〜あれだけ激しくやり合ったのだ、学校側に気づかれていないはずがない。明日人が直してくれたとしても、魔力感知システムから逃げるのは無理だったのだろう。


「そうか、誰も名乗りでないか。良い事を教えてやろう、本条」


「え?」


「残念ながら、我が校に設置されているレベルの魔力感知システムでは、誰が犯人なのかまでは特定できなかった。じゃあ監視カメラはどうだったか。結果は白、学校中の監視カメラをあらかた探したが、犯人の姿は映っていなかった。」


「じゃあ、誰が犯人なのかはわからないですね。」


 監視カメラに映っていなかったのは幸運だった。それとも、何処かの誰かが俺の知らない所で痕跡を消してくれたのだろうか。どちらにせよ助かった、証拠が残っていないなら、上手い事言い訳ができる。

 と、この時は安心したのだが・・・・・・


「我が校の防犯システムの方はダメだったが、幸運な事に我が校の風紀委員会が独自に構築している防犯システムの1つが、犯人のモノと思われる魔力を感知した。」


「え?」


「というわけで本条、風紀委員会の奴らが大変お怒りのようだ。昼休みに風紀委員会に出頭してくれ。」


「あ、はい・・・・・・」


 風紀委員会、どのような組織かは字面を見れば何となくわかる。どうやら俺は、またもや厄介な存在に目をつけられてしまったようだ。


「それじゃあ、授業を始めるぞ、といきたい所だが藁科明日人、お前は今日も遅刻か。しれっと誤魔化そうとしていたようだが、騙されないぞ。」


「すみませーん。」


 いつの間にか俺の前の席に座っていた明日人は、その場で軽く謝った。心は全くと言って良いほどこもっておらず、慣れた様子であった。どうやら我が親友である明日人は遅刻常習犯なようだ。


「じゃあ、改めて授業を始めるぞ。」


 先生が改めてそう宣言すると、再び授業が始まった。



 *



 内容はさっぱり理解ができなかったが、午前中の授業が終わりお昼休みになった。今日の授業はいったい何だったのだろか、考えても仕方ないので後で頭良い組に聞くとしよう。

 明日人と一緒に昼食を食べた後、俺は言われた通り風紀委員会のアジト、いや風紀委員室へとやって来た。


「ほら、早く入りなって。何でぐずぐずしているのさ。」


「だって風紀委員会だぞ?」


「何?もしかしてびびっているの?」


「なわけないだろ。」


 いくつもの死線を乗り越えてきた俺が、今さらこの程度の出来事でびびるわけがない。まったく、舐めてもらっちゃ困るな。


「まぁいいや。お邪魔しまーす。」


「あ、おい。」


 俺が静止するも時すでに遅し、明日人は何も躊躇せずに扉を開けた。まだ心準備ができていないのに、と明日人に文句を言おうとした直後、何処かで聞いた事のある声が聞こえた。


「お兄ちゃーん!!!」


 直後、腰まで伸びた黒色のロングヘアに、白色のメッシュが入った美少女が明日人に抱きついた。一瞬誰かわからなかったが、すぐに誰なのかわかった。


「やぁ衣夜!健斗を連れて来たよ。」


「4年ぶりだね健斗、久しぶり!」


「確かに久しぶりだな、衣夜・・・・・・」


 彼女の名前は藁科衣夜わらしないよ、明日人の双子の妹であり、俺の幼馴染の1人だ。最後に会った4年前とはまるで別人のように成長していたが、所々に面影は残っている。


「だけど、どうしてこんな所に衣夜が?」


「実は私、風紀委員長なんです!」


 久しぶりに再会した幼馴染は、肩に嵌めた腕章を見せつけながら、俺にそう宣言した。


 ___________________________

 どうでもいい話

 やっと衣夜ちゃんの登場です。

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