第2話 4つの委員会

「つまり、あんたら風紀委員が昨日の痕跡を全て消してくれたということか?」


「あんたらではない、4年の東堂だ。風紀委員会副会長をしている。」

「副会長。澤村。3年。よろ。」

「書記の城ヶ崎です。あ、一応3年です。」


「昨日ここに転校して来た本条健斗だよろしく。」


俺はそう自己紹介すると、風紀委員メンバーの3人と握手をした。その際にコソッと魔力のパターンを除いて見たが、3人とも非常に優秀な魔法師である事がわかった。少なくとも、俺のクラスメイト達よりは数段強い。

流石は風紀委員だ、その副委員長ともなればそれなりの実力を持っているのだろう。

ただ一つ疑問に思ったのは、どうして4年の東堂先輩ではなく2年の衣夜が風紀委員長の座に着いているのだろうか。どんな理由があるかは知らないが、おそらく碌な事じゃないだろう。


「風紀委員はこの4人で全員なのか?」


「いーや幹部メンバーはこの3人+私の4人で、一般のメンバーがあと8人いるから合計12人だね。」


「なるほど、12人か。たったの12人で学校の警備システムに侵入して俺の映像を消去するとは、優秀な部下が多いんだな。」


「いーや、あれは私が1人でやったんだよ。こう見えて、ハッキングは得意なんだ。」


「昔はスマホすら満足に使えなかった衣夜がか?」


「えっへんっ!」


つまりはこういう事だった。転校初日に俺が色々とやらかした事を知った明日人は、衣夜に頼んで風紀委員会を動かしてもらい、全力で揉み消しを行ったらしい。衣夜やその仲間のおかげで、魔力感知を誤魔化す事はできなかったものの、監視カメラの映像を全て無かった事にする事には成功した。それにより、俺は学校の警備システムの目を掻い潜る事ができたというわけだ。


「でも、どうしてこんな事を?」


「転校2日目から、懲罰委員会送りは健斗も嫌でしょ?だから助けてあげようと思ってね。」


俺が衣夜に尋ねると、明日人は笑いながら答えた。どうやら、今回の件は明日人の手助けによって救われたらしい。これは後で何か奢らなきゃいけないかもしれないな。


「懲罰委員会?そんなのもあるのか?」


「うん、生徒会、風紀委員会、懲罰委員会、部活動連合会、まぁ三権分立みたいなモノだね、4つあるけど。」


明日人はここ育成学校を支配する、4つの組織をそれぞれ紹介してくれた。生徒会、風紀委員、懲罰委員会、部活動連合会、まぁ字面を見れば何となく理解できたが、明日人の説明によってより理解が深まった。この学校では基本的に、教師陣は犯罪行為で無い限り無干渉を貫いているそうだ。そして、何か揉め事が起こった際はそれぞれの組織が連携して対処しているらしい。同時に、お互いにお互いの組織を監視し合う事によって学校の治安を保っているそうだ。

もっと早い段階で教えてくれていれば、と思ったがその辺は明日人クオリティなのでしょうがないと判断した。ちなみに、明日人は無所属であるが、俺のお隣さんであるルーシアは生徒会に籍を置いているそうだ。何となくそんな気がしたのは俺だけではないだろう。


「システム面の事はわかった。明日人自身はこれらの組織をどう考えている?生活する上で気をつけた方がいい組織はあるか?」


「う〜ん、この中でも特に気をつけなければいけないのは、生徒会と懲罰委員会かな〜風紀委員会はこの通り良い人が多いけど、この2つは頭の硬い連中が多いからね〜健斗お得意の言い訳は通用しないと考えた方がいいよ〜」


「なるほどな・・・・・・」


確かに、見るからに頭の硬そうな連中がうじゃうじゃいそうな組織だ。生徒会はともかく、懲罰委員会に入っているやつは大抵碌な奴がいないだろう。絶対に関わらんとこ。


「それじゃあ、そろそろ本題に入ろうか。」


「本題?映像データを消してくれた事じゃないのか?」


「うん、実は別にあるんだよ。衣夜、説明してあげて。」


明日人に促されて、衣夜は俺をここに呼んだわけを話した。


「うん。実は今風紀委員会って、4つの委員会の中で一番校内ランキング上位者がいなくて、それで・・・・・・」


「俺を勧誘したいと?」


「うん・・・・・・」


先ほど、明日人は4つの組織がお互いにお互いを監視しているという説明をしていたが、実は風紀委員会だけは肩身が狭い思いをしているらしい。学校が発表している校内魔法師ランキングによると、風紀委員会だけはランキングトップ10に1人もランクインしておらず、風紀委員会の中で一番上位に位置している東堂が14位と他の3つの組織に大きな差をつけられているそうだ。

そこで、ルーシアとの一件で4位に上昇した俺に是非とも風紀委員会の後ろ盾になって欲しいと考えたらしい。

ちなみに、明日人と衣夜はランキング3桁、つまりランク外で、ルーシアは5位らしい。どうやら、俺の一件で組織間のパワーバランスが色々と崩れてしまったらしい。うん、俺は悪く無い。


「悪いが少し時間をくれないか?」


「もちろんあげるよ。でも、できるだけ早くお願いね、健斗の争奪戦はもう始まっているから。」


「あ、あぁ。わかった。」


______________________________

どうでもいい話

相変わらず、雨の日に傘を持たずに家を出るというアホでした。

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