第18話 私と戦闘
『ねえ。村長さん。一つお願いがあるの。』
『なんじゃ?』
『もし私の妹…。黒宮玲がこっちの世界に来たとしても私の事は秘密にしておいてほしいの。』
『……何故?』
『だってそうしないと………。』
<現在>
(夏海よ。おぬしの妹は立派に育っていそうじゃぞ…。)
訓練場はまるで牧場かと思わせるように芝生が丁寧に整えられている。
そこに雲一つない青空が相まって心地の良い空間が作り出されている。
「今日は天気が良いのう。」
目の前には殺意を包み隠さず出している少女がいる。
「なぁ。そうは思わんかね?玲?」
少女は黙ってオーブから黒と白の板を交互に出した。
そして一言。
「さっさと始めましょう。」
(ああ。この子はこんなにも傷ついてしまったのか。)
「…分かった。それじゃあ始めようか。」
<玲目線>
(なんでお姉ちゃんだってことを村長は教えてくれなかったのだろう?)
「もうそんなことどうでも良いか。」
(ただ目の前の人を倒すだけ)
そう思い私は一歩踏み出した。
村長はそれに合わせて一歩下がる。
その瞬間
体が重くなった。
多分村長の”*
岩を背負っているかのように重い。
「だったら…」
私は鍵盤を弾いた。
その音色は優しくも悲しいだ。
すると体が軽くなった。
「歌曲集’ミルテの花’ ”献呈”」
村長は目を見開いた。
「なんじゃそれは!本当に魔法なのか!?」
「…うるさい。」
そのまま私は瞬時に村長に近づいて鍵盤の一つを解体して剣のように振り回した。
(何だろう曲に合わせて踊ってるみたいな感覚。)
村長は私の攻撃をただ避け続けた。
その二人の姿は本当にダンスをしているように見えた。
(なんで避けてばっかなの?)
私は一度鍵盤の所まで下がった。
(鍵盤を解体すれはもっと早く攻撃できる。)
しかし村長は下がろうとせず私と一定の距離を保ったままでいた。
私はさらに距離をとろうと鍵盤と共にさらに後ろへと行った。
それでも村長は付いてきた。
「…!。なんなのよ!もう!」
私はそのまま鍵盤を解体してそのまま村長に向けて無数の弾丸のように撃った。
避ける。
村長はただひたすらに鍵盤だったものを避け続けた。
通り過ぎた鍵盤は後ろから村長を襲うようにしてあるのに…
それすらもすべて避け続けている。
掠ることもない。
途中攻撃すれば私に致命傷を与えれるという所まで近づいたがそれでも村長は私を襲ってはこなかった。
「なんで攻撃してこないのよ!」
村長は黙って私の攻撃を避け続けた。
(このままじゃまずい。)
そう思い私も自分の攻撃に拳で参加した。
鍵盤の隙に合わせて蹴りを入れる。
それすらも村長は避けてしまう。
その時村長と目が合った。
その目はまだまだ未熟だと言わんばかりの目をしている。
私は一度攻撃の手を止めた。
「なんでさっきから避けてばっかなんですか。」
村長は静かに答えた。
「なぜお前さんと戦わなければいけないのじゃ?」
(とうとうボケ始めたのかこの爺さんは。)
「そんなの決まってるじゃないですか。私はもう弱くないってことを証明するためですよ。」
「なぜ証明する必要があるのじゃ?」
「なぜってそれは村長が私が弱いって言うからじゃないですか!」
「なぜわしが弱いって言ったか分かるかのう?」
「なぜって…」
村長は話を続けた。
「たしかに玲は強くなった。戦闘力方面ではな。しかし心はどうじゃ?」
「心?」
「今だってそうじゃろう。お前さんはわしが話そうとしても攻撃し続ける。相手に話させようとしておらん。それなのに話せと言ってくる。それこそ玲の心の弱さを表しているのではなかろうか?」
私は何も言い返せなかった。」
「お主はなぜ強くなろうとしたのじゃ?」
「お姉ちゃんと一緒に戦うため…」
「やはりそうなってしまうじゃろ。」
「え?」
「夏海はそこを懸念しておったんじゃ。」
「お姉ちゃんが?」
「そうじゃ。夏海はこう言っておった。」
『だってそうしないと玲の本当にやりたい事をあの子はやらなくなってしまうもの。それは姉としてしたくないこよ。自分の妹の夢を潰したくない。』
「それがわしの聞いた夏海の最後の言葉じゃ。」
「…お姉ちゃんそんなこと思ってたんだ。」
「今の玲の状態になるのが夏海は怖かったのじゃよ。」
私はただその場に立ち尽くすことしか出来なかった。
村長は話し続けた。
「夏海はお前さんの姉なんじゃろ。それだったら妹の良い所も悪い所も全部知ってるもんじゃよ。…さて玲。お前さんに質問じゃ。」
「「玲の本当にやりたい事ってなんだい?」」
その言葉は一瞬村長とお姉ちゃんの声が重なって聞こえた。
「私の本当にやりたい事は…。」
お姉ちゃんと一緒にいる事じゃない。
私の本当にやりたい事は
「皆を笑顔にしたい。」
「ならやるべき事は決まっておるじゃろ?」
「うん。」
そう言うと私は村長の事を真っ直ぐ見つめた。
「ホホホ。なら結構。」
村長は私の顔をみて笑ってくれた。
「それでは玲を
「旅人?」
「そうじゃ。桜木村を拠点として自由に世界を旅して困っている人たちを救ってあげなさい。辛くなったら帰ってこれば良い。ここはお前さんの実家のような場所じゃ。」
「うん。分かった。」
「それじゃあ。出発は明日にして今日はもう寝んさい。」
「ほらもう辺りが暗くなっておるじゃろ。早く帰らないとトキハが心配するぞ。」
本当だ戦い続けて気が付かなかったけど太陽が沈みかけてる。
「本当だ。早く帰らないと。」
「それじゃあまたいつか会おう。」
「はい!ではまたどこかでお会いしましょ!」
「そうじゃな。それでは。」
「「さようなら。」」
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