第17話 私と現状

目が覚めるとベットの上にいた。



ここは酒場バルの二階にある寝室だ。


夢の世界で見た光景とだいたい同じだ。



ただあの世界とは違う所がある。



ベットに伏せるようにしてトキハさんが寝ている。


多分私が”現代ナウ”から来てから色々お世話をしてくれていたのだろう。


(感謝してもしきれないや。)



窓の外を見ると太陽の光が窓から元気よく入ってきていて、見ていると私まで元気になってきそうなくらいだ。




しばらく窓の外を見ているとどうやらトキハさんが起きたみたいでゆっくりと顔を挙げた。


まだ寝ぼけているみたいでうとうとしている。


「トキハさん。おはようございます。」


「う~ん。玲おはようー。…って玲!?」


トキハさんは目を大きく開けた。


「玲!あんた2日間も寝っぱなしだったんだよ!もう大丈夫なのかい?」


「うん。大丈夫だよ。心配かけてごめんなさい。」


「とりあえず皆を呼んでくるから待ってて。」


そう言うとトキハさんは部屋を出て行った。


それから20分くらいたった頃に村長が部屋に入ってきた。


「起きたのじゃな。調子はどうだ?」


「もう大丈夫です。」


「そうかそれなら良かった。で、トキハはどこに行ったのじゃ?」


「皆を呼びに行くって言って出ていきましたよ。会ってないのですか?」


「ああ。ちょうどすれ違いで来てしまったんじゃな。じゃあ話は何も進んでいなさそうじゃな。」


「?。話って何ですか?」


「まぁ。わしも皆が来てからするから少し待っておれ。」




それからまた少し待つとトキハさんがヤートとノームさん。そしてレオさんを連れて帰ってきました。


「全員揃ったようじゃな。」


「ええ。全員集めたわ。それでこれから何をするつもりなの?」


トキハさんは真面目な顔で村長にそう聞いた。


「待て待てそう慌てるでない。まずは玲に状況説明をしてからじゃろ?」


村長がそういうとレオさんは静かに頷いた。


「確かにこのまま話を進めても玲からしてみれば訳が分からないだろうからな。」


「…で、結局私が倒れている間に何が起きたんですか?」


私がそう皆に質問すると一斉に青が暗くなった。


そして少しの間沈黙の時間が続いた。




この沈黙を破ったのはレオさんだった。


「事の始まりは玲が帰ってきて数時間後に起きた。まず、玲は突然村の門に転送されてきてからすぐにバルに運ばれてトキハが看病していたからトキハも知らないと思うが、あの後すぐに号外新聞が町中に配られたんだ。」


「号外新聞?一体どんな内容だったの?」


トキハさんは不思議そうに質問した。


レオさんは淡々とそれに答えた。


「”現代ナウ”の戦争についての事だ。結論から言うと”現代ナウ”の中央都市が”新秩序ニューシステム”の襲撃に遭った。そのせいで今”現代ナウ”は都市部は壊滅状態、国全体は混乱状態という酷い状態となってしまっている。」


「どうして”新秩序ニューシステム”って分かったのですか?」


「”新秩序ニューシステム”が世界新聞でそう公表したからだ。」


世界新聞…

世界の国々が様々な情報を各国に伝えるために出来た新聞で普段は災害情報などを伝えるために使われている。


(そんな新聞がこんなことを伝えるために使われるなんて…)


ヤートは爪をいじりながら質問した。

「それで”現代ナウ”はどんな攻撃に遭ったの?」


「詳細は分からないが都市部が壊滅状態という事だけが分かっている。」


「都市部と言えばあのクソトカゲがいたよね?どうなったの?死んだ?」


ヤートはそう言った瞬間ハッとっしたような顔をしながらこちらを見た。


レオさんはそれでも話し続けた。


「”現代ナウ”の事務所の人たちは全員生死不明だ。」


「事務所の皆さんは全員死亡しました。」


私がそう言うとその場にいる全員が私の方を見た。


「襲撃が始まった時に地下室に逃げ込んだのですが、そこに敵が一人で入ってきて全員を殺しました。」


村長は驚いた顔をしながら聞いてきた。


「何!?それは本当なのか!?」


「はい。」


「にわかには信じられん話じゃ。タンはレオと対等に戦える数少ない奴だったのにそれがたった一人にやられるなんて。」



私は少し間を置いた後に質問した。



「村長は知ってたんですか?」


「…何じゃ?」



「茜さんが…。私の姉が”現代ナウ”の事務所にいるってことをしていたのですか?」



「…ああ。知っておった。」


「…じゃあ何で教えてくれなかったのですか。私はお姉ちゃんに会いたかったのに何で教えてくれ中田のですか。なんでもっと早くに”現代ナウ”に私を連れてってくれなかったのですか。そのせいで…そのせいで殺される直前にようやくお姉ちゃんだと分かって、色々話したかったのに…何でいってくれなかったのですか!」


私がそう言い切ると村長はこう言った。


「貴様に何が出来たというのだ!」


「!!」


「はっきり言わせてもらおう。お前は弱い。そんなお前が”現代ナウ”に…今戦争中の”現代ナウ”に行って何が出来た?何も出来ないじゃろ!そんな足手纏いな状態のお前をもっと早くに”現代ナウ”に行かせろ?ふざけるんじゃない!お前が行っても犬死するだけじゃ!今回は奇跡的に帰ってこれたから良かったもののあの”#転送”が無ければお前は死んでいたのじゃぞ!分かっているのか!」


「もう私は弱くない!確かに昔は弱かったけど今はもう弱くない!」


「ならばそれを見せてみよ!玲!外に出ろ!わしが相手になってやる!」


「分かったわ!やってやろうじゃないの!」


そう言って私と村長は外にある訓練場に出た。


もう私は弱くない。


だから負けない。



絶対に分かってもらう。




次回 私と戦闘

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