第10話 私と優しい王様?
私は事務室を出て自殺を促していると言われている下水道に向かいました。
”
他には窓ガラスの下に花壇が置いてあって花がレンガの単調的な色に華やかさを付けていてとても綺麗です。
しかし、道はかなり複雑に入り組んでいて地図を見ながら歩いていますが時々迷子になってしまいそうになります。
だけど何とか目的地に到着しました!
到着したのですが…
肝心の下水道へと繋がるような穴がありません。
地図に示していある場所には橋が架かっているだけでした。
橋の下を見ても川が流れていて地面が見えない状態でした。
私は周りを探索してみることにしました。
橋の周りには民家がほとんどでした。
しかし民家の中に一軒だけお店がありました。
そのお店の外見はオレンジ色のレンガにステンドグラスでヒメギソウが作られていました。
また、扉の上のレンガに白色の文字で『喫茶店ハーデンベルギア』と書いてありました。
どうやら喫茶店のようです。
気になって入ろうとしましたが今はお金を持っていないので止めました。
その以外にお店が無いか探してみましたがやはりありませんでした。
私は結局橋に戻ってきてしました。
これからどうしようかなっと悩んでいると
「おねえさん。こんなとこでなにしてるの?」
突然声を掛けられ振り返るとそこには小学校低学年くらいの男の子がランドセルを背負って立っていました。
見た目は白い半袖のシャツに青い短パンで見た目から元気な雰囲気を放っています。
「おねえさん僕の話聞いてる?」
「え、あ。うん。聞いてるよ。僕こそここで何してるの?」
私がそう答えると男の子は表情を一切変えずに答えてきました。
「今からお家に帰る所だよ~。」
「お家この近くなの?」
「そうだよ。」
この子の家がこの近くなら下水道の事何か知ってるかもしれない。
「ねえ僕?この近くに下水道の入り口ってある?」
そう聞くと男の子の表情は一気に暗い顔になりました。
まるでどこか私を警戒しながらも慎重に言葉を選ぼうとしているように感じました。
「下水道の入り口?どうしてそんなこと聞くの?」
「えーと。そこにちょっとした用事があるからだよ。おねえさんね。そこに行きたいんだけど入り口を探してもどこにも見当たらないから君に聞いてみたんだよ。」
そう言うと男の子は暗い顔をしながらも警戒心を解いたように感じました。
「では、ご案内します。こちに来てください。」
突然男の子は丁寧な言葉遣いになり戸惑いましたが男の子についていくことにしました。
男の子は橋の近くにあったさっきの喫茶店の前に立って言いました。
「今から下の世界でのルールを説明します。まず向こうでは必ず本名を名乗て下さい。」
「はい。」
なるほどだからトカゲは追い出されたんだ。
本名を名乗ってないから。
私が返事をすると男の子はくるりと回り喫茶店の向かい側にある川の前に立ちました。
すると突然…
男の子は叫びました。
「
男の子が叫んだのは魔法の詠唱でした。
魔法を使う時に自分の魔力が足りない場合。
魔法の前に特定の言葉を言って空気中の魔力を普段より多く使えるようにして足りない魔力を補うのが詠唱です。
男の子がそう言うと川の中から突然透明な階段が出てきました。
そしてその階段の先には一つの土管が横にして置いてありました。
男の子は無言で階段を降りていったので私も階段を下りていきました。
そして
そのまま土管の中へと入っていきました。
土管の中には道が続いていました。
道は薄暗く。所々に街灯のような物が置いてあるだけでした。
そんな中歩き続けていると。
そこには1つの扉がありました。
その扉は赤い木製の扉でそれ以外はコンクリートで固められていました。
そうです。
トカゲが言っていた扉です。
男の子は扉をノックしました。
すると奥から声がしてきました。
「何の用でここに来た?」
トカゲが言っていた通りの言葉でした。
男の子は淡々と答えました。
「黒い王よ。お客様をお連れしました。」
男の子がそう答えると扉が開きました。
そして男の子は扉の奥へと入っていったので私も中に入っていきました。
するとそこにはトカゲが言っていた通りの光景が広がっていました。
「国王がお待ちです。ついてきてください。」
そう言うと男の子は奥にあるガラクタで出来た城へと進んでいきました。
遠くからだと分からなかったのですが城壁には廃車が使われており突破が難しそうな見た目になっています。
私はそんな城壁を横目に見ながら中へと入っていきました。
そして私は目の前の光景に驚きと困惑を隠しれず、動揺してしまいました。
目の前にはお城があります。
そのお城の壁は城壁と同じように廃棄されたのであろう白いレンガを使って出来ていました。
白いレンガは所々が欠けていたり、そもそも色が違うレンガが使われていたりしていたのでそれが廃棄された物だとすぐに分かりました。
またお城の扉にはボロボロの板材を錆びた釘でなんとか繋ぎ止めれているだけの状態でした。
男の子はお城の中へと無言で入っていきました。
私も後を追いかけるようにお城の中へと入っていきます。
お城の中もトカゲの話と全く同じでした。
「ここで少しお待ちください。」
そう言うと男の子は奥の部屋に入っていきました。
その後、折り紙で出来た王冠をつけて出てきました。
そして男の子は玉座に座ってからこう言いました。
「ようこそ我が国”
この子が黒沢!?
トカゲの話だと中学生くらいだと思ったのに全然違う!
なんで!?
とりあえず、質問に答えないと怪しまれる。
「えーと。私は黒宮 玲と言います。えーとここに来たのは、その~あの~。」
ヤバい。
言葉が頭に浮かんでこない。
どうしよう。
「何か言えない事情でもあるのか?まぁいい。君、どこから来たの?」
私が悩んでたら勝手に話が進んじゃった…
結果良しかな。
とりあえず桜木村の事は言わずに進めよう。
「遠い所から来ました。」
「そうか。ではここがどういう国なのか説明した方が良さそうだな。」
その後黒沢が”箱舟”とはどういう所なのか説明してくれた。
「ここは住む家が無くなって困っている人が集まり協力して暮らす場所。国を名乗っているけど実際はただ人が集まって出来た集落だ。この国にはお金という概念は無い。だからこそ皆助け合いながら生活している。
ここでのルールは3つだけ、
1つ助け合わないニートは追放して二度と帰ってこれなくする。
2つ自分の命を第一に考えて行動する。
3つ自分から出て行った場合また帰ってきても良いようにこの場所を守り続ける。
以上がこの国の説明ってところだな。何か質問はあるか?」
凄い…
ルールがしっかりと作られている。
作られているのだけど、
「ルールにある助け合わないニートってどんな人の事を言うの?」
このルールだと誰を基準として助け合っているのか決めるのかが分からない。
そう思い質問してみると黒沢は表情を変えることなく答えてきた。
まるでそう答えているのが目に見えているかのように。
「基本的には皆が助け合ってないと感じれば後日私が1日監視してそれでも何もやらないなら追放する。例外を挙げるとしたら殺しや自殺の手助けをしたら即追放としている。」
!!?
え?
自殺の手助けが追放対象?
なんで?
だって黒沢は自殺の手助けをしてるんじゃないの?
じゃあなんで自殺の手助けをしてはならないというルールを作った?
私は何が何だか分からなくなり困惑していると黒沢は話を続け始めた。
「やはり何か警察から変な噂でも流されていたっぽいな。まあ今訂正すれば良いか。私たちにとっての自殺とは…」
『最悪の救済だ。』
「最悪の救済…」
黒沢は暗い顔をながらも話を続けた。
「そう。最悪の救済だ。自分の現状に耐えられなく、さらに今後の未来にも希望が無い者がすること。だから自分の力だけで自殺をして他の者にその最悪を振り撒かないように手助けをしてはいけないんだ。」
なるほど…
ここはトカゲが言った自殺したい人が集まる場所ではありませんでした。
ここはどんな境遇だろうと必死に生きようとする人たちが住む場所。
黒沢はそう言いましたが、まだ信じきれない…
そう思い黒沢の事を疑っていたら黒沢は笑顔で言いました。
「まぁいきなりこんな話されても信じきれないだろう。だったら少しこの国を歩いてみて回ると良い。きっと理解してくれるはずだ。案内しよう。」
そうだ確かに黒沢の話が嘘とも言い切れないのなら自分の目で見て確かめたい。
黒沢は奥の部屋へ行き王冠を外してから私たちは城の外の様子を見に行きました。
最初に畑を見に来ました。
畑では数十人が畑仕事をしていました。
「おおぉぉい!黒沢さぁーん!そんなとこで何してるんですかー?」
黒沢が畑を通り過ぎようとした時に一人の男が黒沢に気づいた途端大きな声で呼び止めた。
黒沢は分が悪そうにしながらも大声で
「国紹介だよぉ!」
と叫んだ。
「そりゃありがとう!お客さん!じっくり見て行ってくれ!」
黒沢は男が話終えると同時に立ち去ろうとした。
しかし、
振り返った所に野菜を沢山籠に入れたおばさんが立っていた。
おばさんは黒沢に向かってキュウリを差し出しながら
「これいるかい?」
黒沢は嫌そうにしながらもキュウリを受け取りその場で頬張った。
するとおばさんは私にもキュウリを差し出してきた。
「あんたもいるかい?」
「私は大丈夫だよ。お気遣いありがとうございます。」
私はお腹が空いていなかったので断った。
そこで私はようやく自分の周りの景色に気が付いた。
私の隣にとてつもない程の人集りが出来ている。
姿や格好からしてさっきの畑の人達が集まって来たみたいです。
そしてその中心部で黒沢の声がします。
「人を待たせているんだ。そこをどいてくれ。」
そう言いながら黒沢は大量の人を押しのけてこちらに来ました。
そして私の真後ろまで来るとこう言いました。
「すまない。ここから一人で見てくれ。」
振り返ったがそこにはもう黒沢の姿はありませんでした。
畑の人も黒沢を見失ったようで辺りを探していましたが近くにいないと分かると皆畑に戻って行きました。
私もこの国の事を知りたいのでその場を後にしました。
私が次に来た所はさっきの畑の反対側にある住宅街のようなところに来ました。
そこは木に布を被せただけのテントやレンガと藁で出来ている簡易的な家、コンクリートで出来た家など、色々な家がありました。
本当に色々な人が住んでいることが分かるような街並みです。
私はそのまま中に入っていきました。
しばらく歩いていると”
どうやら商店街に着いたみたいです。
商店街の中はレトロな雰囲気がしながらもとても活気があってここが下水道の中だとは到底思えないぐらいです。
商店街の中から焼き鳥の良い匂いが漂ってきました。
私は匂い釣られるように商店街の中へと入っていきました。
ガラス細工屋や食堂、飲み屋に荷車を改造して出来たおでん屋など色々なお店があります。
私はここで黒沢の言う自殺が本当に最悪の救済として認識されているのか知りたい。
そう思っていざ商店街の人に声を掛けようとしたその時だった。
「すみません。少しお話伺ってもよろしいでしょうか?」
「はい?」
突然女性が私の前に立ってきました。
そして私はその人に驚きを隠しきれなかった。
そして泣いた。
女性も泣きそうになっているがぐっと堪えている。
「あなた玲よね?黒宮玲よね?そうよね?」
私は素直に頷くことしか出来なかった。
今私の目の前にいる女性は
ずっと会いたかった人だ。
私はその人を一人残して先に逝ってしまった。
ずっと私を慕ってくれて愛してくれた人だ。
私の母は私がいじめられていることに気が付いて母に相談し間もない時に交通事故で死んだ。
いじめも重なって自分がどうしたいか。
何がしたいのか分からなかった時があった。
そんな中でもずっと私を支えてくれた人。
それは私の姉だ。
「なんでお姉ちゃんがこんなところにいるの?」
「黒沢に呼ばれて来てみたらあんたがいたんだよ。」
黒沢がそんなことをしてくれたんだ。
ありがとう。
おねぇちゃんに会わせてくれてありがとう。
お姉ちゃんは私が泣き止むのを待ってからこう言った。
その一言は私を現実に引き戻す
冷たくお姉ちゃんの面影など無い一言だった。
「ねぇ玲?このまま私と一緒にもう一度死なない?」
「…は?」
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