第6話 私とレオ・マールン

 あれから3日経った。


 あの後ノームさんは武器の製作をすると言って鍛冶場に引きこもってるらしいです。


 レオさんは自分の仕事に戻って行きました。


 私はトキハさんの酒場バルに泊めさせてもらいながら武器を使わない簡単な薬草採取などの仕事を手伝うことになりました。


 どうやら自殺したい子供を救う役割のサンタは何人もいるらしく中々私の所まで仕事がこないです。



 今日も薬草採取をすることになっている。


服装は白い長袖の服に紺色の長ズボンを穿いています!

この服装だと毒草の液が服に付いても一目で分かるからと他の採取の人におすすめされたものです!


 薬草は村の西側に広がっているで同じ薬草採取の人たちと馬車に乗って行ってます!


 ウィースト平原はのどかな場所でモンスターが出た事例もなく安全に薬草採取が出来る場所となっているのです!



 馬車の中は暇なのでこの3日間で覚えたことを話していきます。


 まずはについて覚えました!

 魔法には3種類あり

 1つ目は常に発動している常時発動型魔法じょうじはつどうがたまほうという魔法で基本的には「*」で表す魔法です。これは本人が意識しなくても発動してしまう魔法で力のある人なら魔法の出力を調整できるみたい。村長さんの”*威圧いあつ”が良い例でどれだけ抑えても発動させないのは無理だが調節が可能という魔法です!

 

 2つ目は一般的な魔法で共通型魔法きょうつうがたまほうという魔法でレオさんが使った”#転送てんそう”がそれに当てはまるみたいです!


 3つ目は自動で発動する魔法で自立型魔法じりつがたまほうというらしいです。これは本人と魔法が友好関係を築かない限り自分の意志で発動できない魔法で、どうやら私の武器のピアノにこの魔法が付与されるみたいです。なぜか私の武器だけその魔法を付与しないと動かないらしく仕方なく付与するみたいです。


さてそんなことを話していたら馬車が目的地についたみたいです。

ウィースト平原で薬草が良く採れる場所に到着しました!


ササっと必要な分だけ薬草を採ったら長居はせずに素早く馬車に戻ります。

もしモンスターに会ったら私たちは武器を持っていないので襲われて死亡なので素早く薬草採取を行う必要があるのです。


その後他の人たちも採取を終えて村に戻ってきました。

私は馬車から降ろしてしらってから村の門の近くにある薬屋に薬草を届けてからバルに戻る。

これが最近のいつもの動きでした。



しかし、今日は違いました。



バルの前にノームさんが仁王立ちしていたのです。

この3日間こんなことなかった。

つまりが完成したんだ。


そう思いながら私はノームさんの前で立った。


するとノームさんは

「ついてきなさい」

とだけ言って鍛冶場の方に歩いて行った。


私は後を追いかけた。


鍛冶場につくとノームさんは白い玉を持っていた。


「これは?」


私が質問するとノームさんは残念そうに答えた。


「これはお前さんの武器になるかもしれない物。変形型オーブ002番だ。」


!!


これが私の武器?

ただの玉が?


ノームさんは話を続けた。


「しかしこいつはまだ完成してない。玲の武器の構造上では長方形を浮かせながら魔力を音に変えて出さないといけない。お前が全部出来ればそれで解決なのだがそれだと玲の魔力が早々に底を突いてしまう。そうしないためにこのオーブに武器の形を記憶させて浮かせるのと音の増幅をさせなければならなかった。結果そんなことが出来る魔法なんて自立型魔法しかない。後は言わなくても分かるだろう?」


「自立型魔法を自分の意志で発動させれるようにするには魔法と友好関係を築かなければならない。だからまだ私の武器になると確定したわけではないってことですよね?」


ノームさんはこっくりと頷いた。


「自立型魔法と会話するには魔法を使って魔法とお前を繋げる必要がある。繋げたら魔法とお前だけの世界で会話が出来るがそれがどんな場所なのかは誰にも分からない。準備が出来たら言ってくれ。すぐに繋げる。」


魔法と私だけの世界…

一体どんな世界なのだろう?


不安だ…


どんな世界なのか怖い…


だけど行かないと何も始まらない。


「準備出来ました。」


ノームさんは頷いた後にこう言った。


「”#接続リンク”」


ノームさんがそう言うと辺りが光に包まれた。














少しすると光が弱まって辺りが見えるようになってきた。



なってきたのだが…



何もない空間にいる。


白い地面がずっと続いている。


ただそれだけの空間だ。


「ここどこ?」


武器の姿も見えない。


とりあえず前に進んでみることにした。








どのくらい歩いただろうか


景色も変わらず武器もいない


疲れたので立ち止まって振り返ってみた。


!!


人が二人隣り合わせに立っていた。


左側にいる人は男の子のような顔つきで背中に悪魔のような禍々しい翼が生えている。


右側にいる人は女の子のような顔つきで背中に天使のような翼が生えている。


どちらも白い布一枚だけが服の役割をしている。


もしかしてこの人たちが私の武器についてる魔法?


「あなた達がこの武器の魔法なの?」


そう聞くと二人は口をそろえてこう言った。


「チガウ。オマエジャナイ。アイツヲツレテコイ。」


「あいつって?」


「オマエニハカンケイナイ。ココカラデテイケ!」


そう言った瞬間突然強烈な向かい風が吹いた!


まずい!

このままじゃ吹き飛ばされる!


今は何とか持ちこたえてるけど飛ばされるのは時間の問題だ。



そう踏ん張っているとふと二人の顔が目に入った。



私は

 その表情に

 その時に言った二人の言葉に

はっと息を飲んだ。


その時だった


私は力が抜けて吹き飛ばされ気絶してしまった。











次に目を覚ましたのはバルの二階のベットの上だった。


どうやら私が向こうの世界に行った途端倒れてしまったらしい。



その後医者が来て診察をしてもらったが異常はなかった。


医者が帰ってからノームさんとトキハさんに向こうの世界について話した。


話し終えると二人は顔を見合わせてゆっくりと頷いてからトキハさんは無言で部屋を出ていきノームさんは椅子に座って深いため息を吐いた。


「お前さんには話さないといけない事がある。あのオーブは元々マールン。レオ・マールン専用武器だったんだ。」


「レオさんの専用武器?どういうことですか?」


「お前はマールンの仕事内容を知っているか?」


そういえばレオさんは自分の仕事内容を教えてくれなかった。


ノームさんは話続けた。


「マールンは元々軍人だったんだ。あいつの正式な身分は第一〇鬼人大隊だいいちまるきじんだいたい別名”赤いサンタ隊”隊長レオ・マールン中佐。それがあいつマールンだ。それが今では副村長だ。」


え?

”ライク”に軍なんてあったの?

レオさんが軍所属で中佐?

なんでレオさんは隠していたの?


分からない。

分からない事だらけだ。


「ここからは自分の口で話させてほしい。」


突然扉の奥から声がした。


ゆっくりと扉が開く。


そこにいたのはレオさんと汗だくになったトキハさんだ。


トキハさんが息を切らしながら

「こいつの…はぁはぁ、こいつの過去だ。あんたが全部話していい訳ないでしょ。はぁはぁ。だから、本人を連れてきたの。」


ノームさんはレオさんに席を譲った。

まるで自分はここまでだと言うかのように


レオさんは椅子に座った後少ししてから話始めた。


「まだ俺たちがサンタ族から鬼族になったばかりの時の話だ。昔の”ライク”は周りを覆う霧もなくいつでも他の国が攻めて来れる状態だった。そのせいで他の国が領土欲しさに攻めてきていた。俺たちは故郷が奪われるのを黙って見ているはずもなくすぐに軍を作り防衛に全力を尽くしていた。その時は殺さなければ殺されるそんな世界だったから沢山の人を殺した。俺たちの服は敵の返り血で赤く染まっていった。その姿を見た敵軍からと呼ばれるようになった。そしてその時の先頭にいたのが俺レオ・マールンだ。」


”ライク”にそんな過去があったんだ…


レオさんは暗い顔になりながらも話を続けた。


「その時に使っていた武器が変形型オーブ002番だ。あいつは88枚の板で出来ていて魔力を入れるとオーブが変形して板になるんだ。俺は唯一アイツらを使いこなすことが出来た鬼族だ。アイツらは凄い武器だった。上手く使えば空も飛べた。良い相棒だった。それなのに...」


レオさんは両手で顔を覆い隠した。


微かにたけど声がする。


今にでも消えてしまいそうな小さな声だ。


「あの武器は自立型魔法なんて最初から付与されてなかった。使っていく内にあの武器自身に自我が出来たんだ。」


ノームさんが驚いたような顔をしながら話した。


「なんだと!武器が自我を持つなんて話は聞いた事はない。多分物を大切に思うマールンの気持ちと敵兵の血、そして色々な種族の魔力。これらの条件が全て揃ったからこそ起きた現象だ。てっきり自立型魔法が付与されているものだとばかり思っていたわ。」


ノームさんが話終えた所でトキハさんが水を持ってきてくれた。


レオさんは水を一口飲んだ所で続きを話してくれた。


「ある日の事だった。その日は妙に冷えていた日だった。俺はいつものように来た敵を殺していった。」



 その時だった。



 「突然空から霧が降ってきた。俺はその霧に飲み込まれた。目が覚めるとそこは病院で俺は”魔法拒絶病”という病気に罹っていた。」



魔法拒絶病…

それは名前の通り自分の体に魔法が当たると通常以上の痛みがする病気で魔力が使われている物に触るだけで激痛がするという事例もある病気だ。


「俺はその病気のせいでオーブに触れる事すら出来なくなってしまった。オーブは俺が病気に罹った事などつゆ知らず今も俺を待ち続けている。だからどんな人が”#接続リンク”しても姿に突風を吹かして強制的に解除してしまうんだ。」


え?


話が違う。


「私の時は違いましたよ。」


私がそう言うとレオさんは口をポカンと開けた。



その後

私は向こうの世界で起きたことを話した。


「そうか…あいつらが姿を見せた。それだけではなく喋った。」


そうレオさんが言うとトキハさんが後に続いてこう言った。


「もしかしたら薄々気付いているのかもしれないわね。レオはもうここには来ないってことに気づいて新しい人を探しているのかも。」


そうトキハさんが言うとレオさんは顔を暗くしていた。


だけど、多分トキハさんの考えは違うと思う。

私が最後に見たあの顔はそんな表情じゃない。


「もしかしたらレオさんの事を今も待っているのかもしれません。」


そう言うとレオさんは不意を突かれたような顔をしていた。


それでも私は続けた。


「私が気絶する直前に二人は泣いていました。その時に声が聞こえたんです。風で聞き取りにくかったけどそれだけはハッキリと聞こえてました。」


泣きそうになりながらも私に聞いてきた。


「何と言ったんだ?」


私は答えた。


「二人はこう言いました。」



 『オネガイアカイサンタヲツレテキテ。』



私がそう言った途端レオさんは泣き崩れた。


「そうか…。あいつらはまだ待っていてくれているのか。ごめん。ごめん。ごめんな。10年間も待ってもなお、まだ待ち続けてるつもりなのか。まだ俺が帰ってくると信じているのか。ごめん。ごめんな。」



それからレオさんはただただ泣き叫んだ。



10分くらいだろうか。

レオさんが泣いていたのは。


レオさんは落ち着いたみたいだ。


「赤いサンタ隊であの武器を使っていたのは俺だけだから多分俺の事だと思う。」


そうレオさんが言うとトキハさんは呆れた顔をしていた。


「もっとシャキッとしなさいよ。それでもあんな武器と7年も一緒に戦ってきたんだから。」


そう言いながらトキハさんはレオさんの背中を思いっきり叩いた。


レオさんは痛そうにしているがそれでも話をしてきた。


「力強いよトキさん。まぁそれはさておき玲、トキさん、ノーム、皆に頼みがある。」


レオさんが頼むこと?

なんだろう?


「もう一度だけ。俺はもう一度だけアイツらに会いたい。だからあの世界に行く方法を一緒に探してほしい。」


レオさんがそう言うと私達は全員が全員の顔を見てから頷いた。

トキハさん、ノームさん、私、そしてレオさん。

この4人でならレオさんと武器を会わせれる。


そんな気がする。



どうやったら会わせれるか分からない。


だけど私はレオさんとあの武器を助けたい。


その思いはここにいる全員が同じだ。




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