第4話  私とサンタ

光がだんだんと弱まってきて辺りが見えるようになってきた。


どうやらあの泉に帰ってきたみたいだ。


泉の横でレオさんが木製の椅子に座ってくつろいでいる。

椅子の隣にはテーブルがありティーポットとティーカップが置いてある。


そして…


テーブルを挟んでもう一人鬼族の人が座っている…


見た目は80歳ぐらいの男性で顎から白い髭が首の所まで伸びている。

まるでサンタクロースを見ているような気分になった。


そんなことを思っているとレオさんが


「お疲れ様、無事救えたみたいだね。」

 っと言ってきた。


そうだ

そのことについて聞かないと


「あの家は何だったんですか?

 私がもう一人いるし、そもそもあの家は私が元いた世界のものじゃないのですか?」


すると座っていた老人が立ち上がってこう言ってきた。

「あれは、お前さんの中にあるじゃ」


「感情を具現化?」


「そうじゃ、実は生きている者なら皆必ず心の奥底に閉じ込めてある感情がある。その感情は人それぞれ違うものでな、人によってはなんかだったりもするが、お前さんはが閉じ込めてあったみたいじゃな。」


私の中にあるを具現化…


老人は話を続けた

「あの世界には何がいた?そして、どんなことをしようとしていた?」


「…もう一人私がいて自殺しようとしていました。」


「そいつはどんな理由で自殺をしようとしていたのじゃ?」


「いじめを受けていて、それが嫌になって自殺しようとしていました。」


私の声はいつの間にか小さく震えていた。

そして眩暈や吐き気がする。


それでも老人は話を続ける。

「つまり、お前さんは自分がいじめに耐え切れなくなって自殺したことにしているという事になりますな。実際の所どうですか後悔していますかな?」


私は後悔して…


「…ました。

 確かに私は後悔していました。だけど、今は違います。今は自殺をして良かったとまではいかないけど、自殺したことによって感情を具現化したものだろうと私は私の自殺を止めることが出来た。私が誰かの幸せを守ることが出来た。そう思うと私自身が救われたかのような気持ちになれたの。だから、自殺して後悔はしていません。」


私の声はまだ小さかった。

だけど、今目の前にいる二人には届いたみたい。

二人は静かに私の話を聞き、それから顔を見合わせて頷いた。

その後、老人が静かに話をした。


「お前さんの気持ち。しっかりと届いたぞ。合格じゃ。ようこそ、サンタの世界へ」



え?



まだサンタになれてなかったの?


そう戸惑っていたら、レオさんが説明してくれた。


「良かったな黒宮、お前はまだサンタになれるかどうか分からなかったのだぞ。正直サンタは全てが過酷な仕事だ。特に自殺しそうな子供を自殺させてしまった時にサンタも一緒に自殺する。っということが稀にある。人間の心は弱いから村長の”*威圧いあつ”にも耐えれないのにお前はよく耐えたな。」


威圧?

なにそれ?

私そんなの受けていたの?

まぁけどサンタになれて良かった!


そう思った瞬間





バタッ




あれ?

突然力が抜けて…

倒れた?

遠くから声がする。


「おい!大丈夫か!しっかりしろ!おい!」


ああ…


レオさんが呼んでる…



だけど…





意識が…






遠のいていく…








「村長手を貸してください!」


「とりあえず村に連れていくのじゃ!」


「はい! 頑張れ耐えろよ!」



もう駄目だ…




意識を保てない…


















目が覚めると知らない天井がそこにあった。

木製の天井だ。

どうやらベットに寝ている状態のようだ。

右側の壁に窓が開いていて、そこから青空が見えた。

左側には木製の扉がある。

ベットの横には木製の椅子とテーブルが置いてあった。

それ以外は何もなさそうだ。


「とうとう天国に来てしまったみたいね。」


「あなたの中の天国はどんな所よ…」


誰もいないと思って放った言葉に返事が返って戸惑いながらも恥ずかしくなっていると扉から小太りで左耳に青い宝石のピアスをつけている女性が入ってきた。

彼女の姿はまるで中世ヨーロッパの酒場の店員のような姿だ。


「目が覚めたみたいね。」


そう言うと彼女は私の寝ているベットの隣まで来た。


「動けは…できなさそうみたいね。待ってて今動けるようにするから"#解除かいじょ"」


彼女がそう言った瞬間

体が動かせるようになった。


とりあえず体を起こした。


「ここは病院ですか?あなたは誰ですか?」


「質問が多いわねぇ、まあいいわ。ここは”ライク”の中心の町、桜木村さくらぎむらにある酒場の二階。あんたはサンタになるテストを受けていたら倒れたのよ。覚えてる?」


テスト中に倒れた?


テストを受けていたのは覚えているけど、倒れた事はまったく覚えてない。



「あたしは、トキハ・ランコントレ。鬼族よ。トキハと呼んで頂戴。」


「トキハさん、私と一緒にいた鬼の二人はどこにいったのですか?」


「ああ、あの二人ね。それなら下で待ってるよ。そいつらがあんたを運んだんだよ。だから後でお礼言っときなさいね。」


レオさんとあの老人が助けてくれたんだ。

ありがたい…


「食欲はあるかしら?なにか食べ物を持ってくるから待っていなさい。」


そういってトキハさんは扉から出て行った。


さて、現状を整理すると


レオさんたちが泉で倒れた私を酒場バルまで運んできてくれた。

なんで倒れたんだろう…


そうだ! たしか威圧をあの老人が使って私が倒れたんだ!

それで二人でここまで運んでくれたんだった!!

あのレオさんたちには感謝してもしたりないや…


そんなことを考えているとトキハさがコップに入った水とおにぎりを持ってきてくれた。


そしてその後ろにレオさんとあの老人がいた


トキハさんは水とおにぎりをテーブルに置くと

「すこしは落ち着いたかい?」

と聞いてきた。


「はい。だいぶ落ち着けました。」


そういうとトキハさんは笑いながら話をした。


「それはよかった。うしろの馬鹿二人がすまないことをしたね。特にこっちのジジイが世話をかけたね。ほら村長さんや何か言ったらどうだい?」


そういわれると後ろの老人がしょんぼりとしながら話始めた。

「わしの固有スキル”*威圧いあつ”、これは相手に精神的圧力をかけて行動を制限するスキルなのだが、普通の人間は10%の力で気絶するのにお前さんは倒れないから楽しくなって調子に乗って鬼族が動けなくなる30%まで出したらお前さんが倒れてしまったのじゃ。調子に乗ってすみませんでした。」


えー

なんで楽しくなっちゃった?

なんで調子に乗った?

もしかしてこの人戦闘狂?

あとサラッとトキハさんが言ってたけどこの人が村長さん?


「とりあえずあなた誰ですか?」


「自己紹介がまだじゃったな。わしは桜木村さくらぎむらの村長のカンバ・スホジャじゃ。皆からは村長と呼ばれておるぞ。」


「私は黒宮玲といいます。日本という所から来た異世界人です。」


「話はレオから聞いておる。さてではこれからサンタについての話をしようかね。なにおにぎりを食べながらにでも聞いておってくれ。」


そういわれたので私はトキハさんが持ってきてくれたおにぎりを一口食べた。

中に具は無く塩おにぎりでおいしい。


私がおにぎりを食べ始めると村長さんは話始めた。


「さて何から話そうかのぅ。まずはわしら鬼族の歴史となぜ鬼族と呼ばれているのかを話すとしようかね。わしら鬼族はもともと族と呼ばれていてプレゼントの精霊とも呼ばれていた。しかし、ある事件を境にわしらは鬼族と呼ばれるようになった。その事件の内容はkdmttがsntnoGegenwartを받다途端に〇〇したというものじゃ。この事件を아이ταυτόχρονος〇〇事件という。」


え?

何って言った。急に言っていることが理解できなくなった。

聞き直そうと口の中のおにぎりを飲み込んで声をだそうとしたその時



目の前が真っ暗になった。



何が起きてるの?

助けを呼ぼうとしても声が出ない


そうやって何が起きているのか分からず混乱していると突然が出てきた。




_________警告________


天使系鬼族のカンバ・スホジャが一部の種族の大罪について説明をしたので”*世界言語理解せかいげんごりかい”を一時的に停止しました。

黒宮玲はこの大罪についての言及を禁止します。言及した場合、黒宮玲の心臓を消滅させます。


___________________



転生した時に出てきた画像が出てきた。

村長さんが説明しようとしていた事件が大罪だった?

世界言語理解って何?

分からない事だらけだ


だけど一つだけ分かることがある。


この事件について質問をしたら私が死ぬ。

それだけは分かった。



そう思った瞬間に辺りがだんだんと明るくなっていった。



周りを見渡すと村長が事件の説明をした時に戻ってきたのだと分かった。

手に持っているおにぎりの形が事件の話をした時の形をしていたからだ。


そして

村長は何事もなかったかのように話を続けた。


けど…

だけどやっぱり気になる

なぜ系統や種族が変わるほどの事件を隠したのか。

そもそも事件の内容は何だったのか。

分からないことだらけだ。


それだけど私はサンタになれた。

これからはサンタとして頑張ろう。

そうやってサンタをやりながらこの事件について調べていこう。


ゆっくりと確実に一歩ずつ進んでいこう。



そう思っていると窓から心地良い風が入ってきた。


まるで私を応援するかのような風だ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る