第5話錬金術

 「母さん、今何してるの?」

 

 父であるレオは辺境伯家騎士団の指南役をしているが、母は今装飾士として店舗を経営している。


 そんな母が今、素材に何かを刻んでいるのが見える。


 「あら、今は付与をしているのよ。」

 「付与?」

 「付与は装備や道具に刻印や魔法陣を刻んで力を付与する技術のことよ。錬金術の技術の一つね。ネロも興味があるの?」

 「うん、やってみたい!!」

 「そうね・・・なら少しやってみましょうか。」


 母は作業を辞めると、綺麗な赤い石を取り出す。

 

 「この宝石を使って練習しましょうか。」

 「この宝石は?」

 「これはルビーよ。錬金術と宝石は相性がいいの。今日は最近寒くなってきたし、暖かい風を発生させるアクセサリーでも作りましょうか。」

 「わかった、やってみる!」


 

 ♦ ♦ ♦


 

 「さて、まずは宝石に刻む刻印を覚えないとね・・・今からこの印を刻むわよ。」

 

 母は分厚い本を取り出し、描かれた印を見せる。

 

 「どうやって刻むの?」

 「慣れてきたら魔力を使って描くのだけど・・・今回は初めてだから魔導液を使って付与するわ。」


 母は瓶に入った赤黒い液体を取り出した。

 

 「これを使ってこの印を宝石に描くのよ。印は覚えたでしょ?」

 「うん!!」


 俺は母の指導の下宝石に印を描いた。


 「よし、初めてにしては上出来ね。後はこの印全体に魔力が流れることを意識して魔力を流すと風が出るわ。」

 「やってみるね!」


 最近始めた魔法の練習のおかげで日々魔力の操作は上達しているため、難なく魔力を通し終えた。

 

 すると、宝石から暖かい風が発生した。


 「わぁ~凄い!」

 「ええ、ちゃんと発動したわね。これで錬金術師に一歩近づいたわね。」

 「そういえば・・・母さんは何で錬金術を使えるの?」

 「あら、そういえば知らなかったわね。私がお父さんと、領主のエリオット、アリアが冒険者として一緒にパーティーを組んでいたのは知っているでしょ?」

 「うん、前に聞いたよ。S級冒険者っていう凄い冒険者になったんだよね?」

 「ええ、そうよ。それでいろいろと旅をしているときに有名な魔法士――私の魔法の師匠ね。その人に習ったのよ。」

 「へぇ~お母さんの師匠か・・・いつか会ってみたいな~。」

 「貴方が冒険者になって街を出るのであればいつか会えるわよ。【賢者】っていう二つ名を持つエルフで今は世界都市ユグドラシルにある学園の校長をしているそうね。」

 「なら冒険者になっていつか会いに行くよ!そういえば、お母さんはS級冒険者になったのに二つ名はないの?」

 「あるにはあるけど・・・秘密ね。」

 「えぇ~教えてよ!」

 「いつか冒険者になったときにでも調べなさい。」

 「むぅ~。」

 「ウフフ、もうこんな時間、早く夕食を作らないと!」

 

 外を見ると暁の空が広がり、辺りは段々と暗くなってきている。


 「ネロ、今日の夕飯は何が良い?」

 「肉!!」

 「はいはい、部屋で待ってなさいね。後お父さんが帰ってきたら出迎えに行ってあげて。」

 「わかった!」


 そうして一日は過ぎていった。

 

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獄炎の王~異世界転生したので無双する @Fish051402564

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