第2話

 「ネロ、朝よ。早く起きなさい。」

 

 「あい、おはよ。」


 布団の暖かさに包まれていると、黒髪の二十代半ばぐらいに見える美女が起こしに来た。


 俺はあの光に吞み込まれて、気が付くと異世界に転生してしまった。

 

 生まれ変わったのはアルヘイム公国にあるヴァンダルという都市に住む普通の家庭。

 前世とどこか違うのかと言ったら、両親の種族が竜人ドラゴニアンと、鬼人という種族であるという事だろう。

 どちらもいわゆる魔族という種族である。


 そして今俺を起こした女性は鬼人である母のシュナである。

 

 俺はそのままリビングへと向かう。


 「父さん、おはよう。」


 「おう、おはよう。良く寝られたか?」


 「うん!」


 俺はリビングで先に朝食を食べていた父親に声をかける。

 おっとりとしていて、優しい雰囲気の母とは打って変わって身長は190後半もあり、筋骨隆々の巨体。獅子を彷彿とさせる紅の髪に、目元には稲妻のような傷跡。顔は整っているが堅気とは思えない容姿のため、あまり人は近寄ってこない。


 そんな両親の下に産まれた俺は母の漆黒の髪に緋色の眼。種族的に父より母に寄ったのか、頭には一本の角が生えており、竜人よりも身体の線が細い。父の様に相手に威圧を与えるような容姿はしていない。


 そして種族の話を聞いていると、もう一つとある存在を知った。

 それは魔法だ。


 魔法は適性を持つ属性系統しか使うことが出来ない。

 適正は一部例外もあるが、血筋、種族でほとんどが決まっており、例にももれず俺も両親の適性を受け継いでいる。

 

 基本受け継ぎ方は二パターンあり、片方の親の適性を受け継ぐ場合。どちらも受け継ぐ場合だ。


 俺は両方とも受け継いだようで、父の火と母の闇の二つの属性系統を持っている。

 

 身体の一部は適正によって影響を受ける部分がある。それは髪と瞳である。

 俺の場合漆黒の髪は闇、琥珀色の眼は火といったところらしい。


 魔法の存在を知ってからというもの、早く使ってみたいといろいろと試行錯誤したが、結局何も出来ず、両親に頼み込んだのだが、五歳から訓練を始めると言われた。


 そのままズルズルと五歳までの時間を過ごしていき、遂に昨日五歳になったのだ。


 「よし、俺は衛兵たちの指導も休みだし、今日からネロの訓練を始めるか。」

 「ほんと?」

 「五歳になったし、問題ないと思うわ。」

 「それじゃあ庭に行くか!」

 「うん!」


 朝食を食べ終え、俺たちは無駄に広い庭へと向かった。


 

 

 


 

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