文章よし、ストーリーも良し、登場人物は気のいい奴らばかりと非の打ち所がない最強小説。作り込まれた世界観と、魅力的なヒロイン。そしてちょっと地味ながら決めるところではちゃんと決めてくれる主人公と必要なものが全て入った作品。
異世界ファンタジーの世界観を『テンプレ』『ゲーム的』と揶揄する風潮がありますが、本作はそこを分かり易く、且つ説得力のある設定付けがなされております。神官職に限界を感じた主人公トムと縁あって巡り逢った人狼の少女ライラの冒険を話の主軸としており『狼と香辛料』を思わせる組み合わせですが、本作は戦闘シーンが多く武器や魔法によるアクションが見所となっています。
物語の世界観、登場する職業や道具など細かいところまで設定が非常によく練られています。下地がきちんとでき上がっているので、物語の進行に必然性があり、ご都合主義が見られないところがすばらしいと思います。また、同じ理由でファンタジーの世界でありながら、現実味をもって楽しめるのが特徴です。主人公と仲間たちとの別れから始まる物語ですが、主人公の新しい道が開けていくと同時にかつて辿った道でのエピソードが語られていくのも魅力的です。