076 プラクティスウェポン -Practice Weapon-


 夜の帳が下りた屋敷の中庭。

 周囲には篝火がたかれて、中央を橙色に照らしている。

 中央に立つのは二人の人物。トウヤとアレス。

 そんな二人を大勢の観客たちが遠巻きに囲んで、どちらが勝つか好き勝手に予想をしている。

 といっても、そのほとんどはアレスが勝つと予想していた。


 観客の中にはフェリスとステラもいる。

 二人はトウヤから賭けのことを聞かされ、勝っても負けても大丈夫だと分かっているので心配をしている様子はない。その他の観客と同じように、どちらが勝つかの予想を楽しそうに話している。

 フェリスはアレスが勝つと予想し、ステラはトウヤが勝つと予想したようだ。


 観客の中で唯一、顔を強張らせている人物がいる。ゴルバンだ。

 二人の試合をただの余興とは捉えていないようで、アレスの勝利を心から願っている様子。

 アレスはセブンスターズで唯一のNPC。プレイヤーに比べてレベルが低いために強さを疑われることがままある。

 たとえ余興とはいえ、名も知られていないようなプレイヤーに負けては、セブンスターズの名折れとなる。



 アレスは、ゴルバンとフェリス、それに貴族たちからの熱い視線を感じ取った後、ぽつりと呟く。


「どうやらこの戦い、負けるわけにはいかないようだ。

 応援してくれる人たちのためにも……」


「セブンスターズは大変ですね。周りからのプレッシャーが……。

 俺だったら、逃げ出したいです。

 セブンスターズをやめて、自由になりたいとは考えないんですか?

 あなたほどの力があれば、どこの世界でもやっていけると思います。

 それこそ第99世界でも」


 トウヤは、素直な疑問をぶつけた。

 二人の会話は喧騒に紛れ、周りには聞こえていない。


「第99世界は君の友達がおすすめしていたね。……たしかに面白そうだ。

 しかし今の地位は、私が命がけで手に入れたもの。

 そう簡単に手放すことなど出来ない。散っていった数多くの友のためにも……。

 それに私は今の地位で満足する気はない。もっと上に行く……」


 アレスは強い上昇志向を持っているようだ。トウヤの考えとは正反対。

 セブンスターズよりも上の地位となると、選択肢は限られる。


「それは、王様ですか?」


 アレスがフェリスと結婚すれば、王になるチャンスはある。

 明らかにフェリスはアレスに好意がある。そして、アレスも好意を見せている。

 しかし、それはフェリスを利用して王になるための口実。本当の気持ちではないのかもしれない。


 トウヤはちらりと横目でフェリスを見る。

 会話が聞こえていないフェリスは、純粋にアレスを応援している。

 その姿が健気で、少しかわいそうに思えた。


「昔はそう思っていた。王様になりたいと……。でも今は違う」


 意外にもアレスは否定する。


「違う? では何に?」


 トウヤは少し驚いて、さらに質問をした。


「王様よりも、もっと上の存在さ」


 アレスは不敵に笑うと、鞘から剣を抜く。

 剣身の軌跡が紫色に発光して暗闇に残像を残した。


「さあ、もうおしゃべりは終わりにしよう。観客のみなさまが待ちかねているよ」

「……分かりました」


 トウヤも剣を抜く。その剣身の軌跡は緑色に発光している。

 二人の持つ剣は、プラクティスウェポンと呼ばれる訓練用の武器だ。



 プラクティスウェポンには、特徴的な機能が二つある。

 一つ目は、レベルダウン機能。

 使用者のレベルを設定した値として認識し、大幅に攻撃力を下げることができる。

 これにより、レベル差がある者同士でも効果的な訓練が可能になる。

 ちなみに使用者のレベル以上に値を設定しても、それは反映されない。あくまでレベルを下げる機能に限られる。


 二つ目は、軌跡発光機能。

 剣身自体ではなく、その軌跡を好きな色に光らせて、空中に残像が残るように設定できる。

 これにより、剣筋のぶれなどの確認が容易になる。



 トウヤとアレスには、かなりのレベル差がある。

 普通に剣を交えると、トウヤが低レベルだということが周囲に露見する。

 王女の護衛が低レベルなのは、あまりに不自然すぎる。

 いらぬ波風が立たないようにするため、トウヤがプラクティスウェポンの使用を提案した。


 アレスはトウヤが低レベルなのを知らない。むしろ自分よりも上だと思っている。

 そのため最初は、トウヤの提案を拒否した。情けをかけられたと思ったのだ。手心を加えられることはセブンスターズのプライドが許さない。

 トウヤは、そんなアレスをどう説得しようかと悩んだ結果、軌跡発光機能をアピールすることにした。


 軌跡発光機能は、とにかく見栄えが良い。夜だとなおさらに。

 暗闇に光の残像が残るのは、花火のように鮮やかだ。

 一対一ならば、見栄えを気にする必要はないが、今回は観客がいる。

 パーティーの余興としては試合が盛り上がった方が都合が良いとメリットを力説して、なんとかアレスを説得したのだった。


 アレスは紫色を設定し、トウヤは緑色を設定した。

 セブンスターズには、数字に対応したシンボルカラーがあり、それは虹と相対している。

 1から順に、赤橙黄緑せきとうおうりょく青藍紫せいらんし

 アレスは七星剣の所有者でありシンボルカラーは、紫。


「……緑? なぜその色を選んだ?」


 アレスがトウヤの軌跡を見て質問した。


「……なんとなく」


 トウヤは反射的に答えた後、なぜだろうと改めて考える。

 アレスの紫は赤と青を混ぜた色。光の三原色RGBのRedBlueを使用している。

 だからトウヤは残ったGreenを使おうと、無意識に選択した。


「…………」


 アレスはちらりとステラを盗み見た。

 ちなみにステラの持つ四星弓のシンボルカラーは、緑。

 アレスはひとりで納得する。


「……なるほど、彼女のために剣を振るうか。

 君からはやる気を感じられなかったが、そうでもないようだな」


「彼女? ……ちょっと意味が分かりません」


 トウヤが首を傾げると、アレスは小さく笑みをこぼす。


「……ふっ、とぼけるか。ずいぶんとウブだな。

 君の恋路の邪魔をしたくはない。だが私にも進むべき道がある。悪いな」


「はあ……」


 トウヤは、突然アレスから謝られて戸惑った。

 アレスが何を言っているのか本当に分からなかったのだ。

 なんとくステラの方を見る。緑色の髪飾りが小さく輝いた。

 そこでようやくアレスの言っていた『彼女』がステラだと理解する。

 謎が解消されてスッキリしたトウヤは、気を引き締め直した。


 二人の会話は途切れる。

 空気が変わったことに気づいた観客たちが静かに息を呑む。

 剣を構えた二人。わずかに静寂が支配する。


 ――パチッ。篝火の火花がはじけた。

 それを合図に、二人の戦いが開始した。


 紫と緑の軌跡が暗闇を鮮やかに踊る。


 アレスの剣はまさに王道。教科書に載せて初心者に見せたい程に、基本に忠実だ。

 その一振り一振りが力強く無駄がない、小細工無しの実直な剣筋。


 対してトウヤには型と呼べるものはない。相手の攻撃に合わせて柔軟に対応する剣。

 アレスの攻撃を受け止めるのではなく、受け流している。

 アレスの剣が『剛』ならばトウヤは『柔』だろう。


 柔能じゅうよごうを制す、ということわざがある。

 柔弱にゅうじゃくなものが、かえって剛強ごうきょうなものに勝つという意味。


 アレスの力強い攻撃。それを受け止めるには同じだけの力が必要になり、体力も同じだけ消費する。

 しかし、トウヤは力の方向を少し変えるだけで、正面から受け止めはしない。

 結果、アレスの方がトウヤよりも大きく体力を消費していた。

 アレスは攻撃の手を止めて、間合いを空けた。


「ここまで綺麗に受け流されたのは初めてだよ。

 まるで宙を舞う木の葉を相手にしているようだ」


 アレスは驚きと共に、トウヤの剣をそう評した。


「あなた程の腕があれば、木の葉ぐらい切れると思いますよ」


 トウヤは謙遜の意味で答えた。

 そして、アレスがこの会話で体力の回復を図ろうとしているとすぐに分かった。だがトウヤは話に付き合うことにした。

 この試合に勝つことは絶対条件ではない。

 むしろ、そこそこ良い試合をして観客が満足したところで負けて、アレスに花を持たせるのがベスト。

 反対に一番良くないのは、アレスを無様に負かしてしまうことだ。

 そうならないためにも、アレスには体力を回復してもらった方が良い。


「ものの例えだよ。それ以上の比喩表現が思いつかなかった。それ程に君の剣は軽やかだ。

 ……君はとても目が良いんだね。でなければ、そんな芸当はできない。

 だけど、私は君の戦いかたが好きではないな。

 君の剣は受け身の剣。相手に合わせて自分を変える。

 良く言えば柔軟だが、悪く言えば芯がない。

 君と私はまるで正反対だ」


「俺もそう思います。あなたの剣はとても素直だ。眩しいぐらいに……。

 きっと育ってきた環境の違いですね。

 あなたは困難を自分の手で打ち破ってきた、実直に。

 俺は困難を振り払ってきた、柔軟に」


「なるほど、環境か。

 環境が性格を作り、性格が剣筋に現れた。……面白い考えだ。

 しかし、少し違うな」


「違う?」


 トウヤが訊き返した。


「君には私が実直な性格に見えているようだが、それは表面的なもの。本質は違う。

 私は決して真面目一辺倒な男ではない」


 会話は突然に打ち切られ、アレスが距離を縮めた。

 アレスの体がほのかに光を帯びて、上段から剣を振り下ろす。

 トウヤは、これまで同じようにアレスの剣を下方へと受け流した。

 直後、地面すれすれにあるアレスの剣がふと消える。

 消えたアレスの剣が頭上に突如出現し、再び振り下ろされる。


「――なっ!?」


 トウヤは虚をつかれて受け流すことが出来ずに、初めてアレスの攻撃を受け止めた。

 アレスの剣が下から一瞬で上に移動した。まるで瞬間移動でもしたような挙動だった。


「スキル禁止だとは一言も言ってないからね」


 得意げな表情でアレスは笑う。

 トウヤは、そこでようやくアレスが戦技バトルスキルを使ったと理解した。


「……幻影偏移ミラージュシフト

「ほう。一瞬で見破るとは、さすがだね」


 スキル名を言い当てられて、アレスは感嘆の声を漏らした。


 幻影偏移ミラージュシフトは習得型の戦技バトルスキルだ。

 一見すると、相手に幻影を見せて隙を突く技だと思いがちだが、実際は少し違う。

 極短時間の時間遡行じかんそこう

 1秒以下の瞬間的な巻き戻りをして、攻撃をやり直しているが、正しい。


 技を発動したのち0.1秒から最大1秒後に、発動した時点の自分に一瞬で戻るという能力効果。

 つまり幻影ではなく実体がある。そのため技を受ける側はちゃんと防御をする必要がある。

 逆に技を使った側は攻撃を受けても構わない。

 技の発動中に受けたダメージは、時間の巻き戻りですべてが無かったことになる。

 技をキャンセルして巻き戻りをしないことも可能。その場合は体を光らせた普通の攻撃となる。



「ただの剣術だけでは観客が飽きてしまう。少しはサービスをしないとね。

 君もスキルを使ってくれて構わない。だけど魔法は無しだ。

 観客に当たってしまう可能性がある。

 さあ、第二ステージを始めよう」


 再び、アレスとトウヤの攻防が始まった。

 以前はトウヤがアレスの剣を華麗に受け流して優勢だったが、今は違う。

 スキルを使ったフェイントを混ぜられては、トウヤの目をもってしても完全に見切ることができない。

 一転して形成は逆転、トウヤは劣勢になっていた。


「なぜスキルを使わない?

 これでは私だけがスキルを使う卑怯者に見えてしまうだろう」


 アレスはトウヤに不満を漏らす。戦闘では優勢だが観客たちへの体裁を気にしているようだ。

 トウヤは習得型のスキルを覚えていないため、使いたくても使えない。

 しかし、アレスはトウヤの事情を知らない。結果、別の意味に捉えてしまう。


「スキルを使わずに、私を倒して恥をかかせるつもりか?」


 アレスの目が鋭さを増した。


「いや、そんなつもりは……」


 トウヤは否定するが歯切れが悪い。アレスはもちろん納得しない。


「いいだろう。その余裕がいつまで続くか見せてもらう」


 トウヤからの挑戦だと勘違いしたアレスは、攻撃を激しくさせる。

 そして、トウヤの剣を上空へと弾き飛ばした。

 剣を失ったトウヤは無防備。今、アレスが追撃すれば勝負は決まる。

 しかしアレスは、違和感を覚えて動きを止めた。

 傍から見ればアレスがトウヤの剣を弾き飛ばしたように見えたが、実際はトウヤが自分で空中に放り投げたのだ。


 空中を回転する剣。それを一歩下がりキャッチしたトウヤの体がほのかに光を帯びる。

 そして放たれる強烈な突き攻撃。


「――なにッ!?」


 アレスは剣の腹で防御する。しかし、受け止められずに後方へと大きく吹き飛んだ。

 観客たちがトウヤの技にざわつく。


「……ふぅ、うまくいった」


 トウヤは技が成功したことに一安心していた。


「今、のは?」


 体制を立て直したアレスが驚いていた。


空中回転刺突エアスピンスタブの三回転バージョン。空中三回転トリプルエアスピン刺突スタブ


 空中回転刺突エアスピンスタブは透写型の戦技バトルスキルだ。

 剣を空中に放り投げて一回転させ、キャッチと同時に刺突攻撃をすることで発動する。

 武器を空中に放り投げるという隙が大きい動作を必要とするため、使用者はほとんどいない。

 ましてや三回転ともなると、隙は通常の約三倍になる。普通の戦闘で使用するのはほぼ不可能。

 しかし、トウヤはその三回転をやってみせた。

 アレスの攻撃の力を回転方向に逃がし、回転速度を上げることで、剣の高度を抑えて隙を最小限にした。


「まったく君には驚かされるな」


 アレスが嬉しそうに笑った。

 透写型とはいえ、トウヤがスキルを使ったので、体裁が守られたとほっとした様子だ。

 習得型も透写型もスキル使用時には体が光る。そのため素人でも一目でスキルだと分かる。

 しかし、それが習得型か透写型かの判別はできない。

 強張っていたアレスの顔に心の余裕が戻っていた。


「さあ、続きをしようか」


 子供のようにキラキラした瞳でトウヤを見つめるアレス。

 純粋な好奇心。次にトウヤが何を見せてくれるのか、期待の眼差しだ。

 そんなアレスの期待に応えるように、トウヤは手のひらで剣を横回転させる。


 透写型のスキル掌回転斬撃パームスピンスラッシュの予備動作。

 手のひらの上で剣を横に二回転以上させてから攻撃することで発動。

 回転毎に威力は増すが極微量であり、回転数が増えてもスキル名は変わらない。

 スキルを発動させるのは比較的容易だが、タイミングを計るのが難しい。回転のタイミングを見誤ると、柄ではなく剣身を掴んでしまう痛恨のミスが起きる。


 アレスが駆け、トウヤに接近する。

 トウヤは回転のタイミングが悪いと瞬時に理解した。このままアレスの攻撃をただ待っていたら、ちょうど剣身を掴むタイミングで激突してしまう。

 タイミングをずらすには、前進か後退が必要。

 いつものトウヤならば後退を選んだだろう。

 しかし、あえて今回は前進を選択。アレスに向かって駆けた。


「…………っ!」


 トウヤが前進すると思っていなかったアレスは驚き、一瞬だけ動きを鈍らせる。

 先手を取ったトウヤの掌回転斬撃パームスピンスラッシュが発動。

 トウヤの攻撃の剣とアレスの防御の剣が激突する。両者ともに体が光っている。

 威力はトウヤの方が上。アレスの体勢が大きく崩れた。

 このまま追撃をすれば、トウヤの勝ち。

 しかし、トウヤは追撃をせず様子見を選択した。


 ――直後、体勢を崩したアレスの身体が消え、一秒前の体勢のアレスが出現する。

 アレスは幻影偏移ミラージュシフトを使用した。


 攻守逆転。今度はアレスが先手を打つ。

 トウヤは様子見をしていたために、ギリギリで防御が間に合った。

 再び激しい剣戟が繰り広げられる。


 そして訪れる束の間の静寂。二人は少しの間を空けた。

 アレスはトウヤが徒手空拳なのを察知する。再び剣を空中に投げたのだ。


 空中回転刺突エアスピンスタブには二つの大きな弱点がある。

 一つ目は隙が大きいこと。

 二つ目は攻撃の種類が突き攻撃に限定されること。発動前に剣の間合いの内に入られると、突き攻撃ができない。突き攻撃は剣の間合いの外を攻撃するもの。


 スキル使用者を左手側から見ると、剣の回転方向は時計回り。使用者に振り下ろされる回転方向になるため、スキルをキャンセルして斬撃へ変更するは難しい。


 アレスは身を低くして高速接近する。スキルの特性を理解して、上からの斬撃はないと判断した。

 空中を回転する剣をトウヤはキャッチするが、すでにアレスはトウヤの懐に潜り込んでいた。

 今からでは突き攻撃は間に合わない。だがトウヤはしたり顔を浮かべていた。


「……逆回転」


 ぼそりとつぶやくトウヤ。

 トウヤは手に持った剣を振り下ろした・・・・・・

 空中回転刺突エアスピンスタブからでは、難しい斬撃への変更。

 実際にトウヤは空中回転刺突エアスピンスタブを発動させていない。

 発動したスキルは後空中回転バックエアスピン斬撃スラッシュだ。


 後空中回転バックエアスピン斬撃スラッシュは、剣を後ろ手で背中側から投げる。

 回転方向は通常の逆。反時計回りになるため、そのまま振り下ろして攻撃する。


 剣の回転方向をよく見れば、スキルの判別は可能。しかしアレスはそこを見落としてしまった。

 アレスは身体をねじらせ、トウヤの剣を受ける。

 スキル攻撃を何回も受けたアレスの剣がバキリと折れて、刃先が弾け飛ぶ。

 アレスは勢い良く地面に転がった。


「これは、……私の負けだな」


 立ち上がったアレスが折れた剣を見つめた後に、宣言した。


「いや、この試合はあなたの勝ちです」

「なんだと?」


 情けをかけられと思ったアレスがトウヤをにらみつけた。


「ほら、これ」


 トウヤが自分の頬を指差す。そこには赤い線がうっすらと走っていた。


「折れた刃先が当たったんです。これも一応、剣での一撃です」

「…………」


 呆然とするアレス。そして、ふと笑みを浮かべる。


「黙っていれば勝ちだというのに、それをゆずるか。

 君は本当に、面白い男だな。

 ……分かった。気持ちの良い勝ち方ではないが、受け入れよう。

 勝利条件は『先に剣での一撃を与える』、折れた刃先も元は剣」


 呆然としていた観客たちは勝敗が決したことに気づいて拍手を始める。

 その拍手は徐々に大きさを増し、中庭に鳴り響いた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る