024 部屋
悠斗は階段をあがって、二階の自分の部屋に向かった。
部屋に入り、二人を机に置いてから、悠斗は制服を脱いで部屋着に着替える。
着替えるのに、悠斗は下着姿になった。
しかし、シトリーに下着姿を見せるのは、よろしくないので一時的に天井のカメラ機能をオフにする。
着替え終えて、悠斗は天井のカメラをオンに戻す。
MR世界に再び、悠斗の姿が反映された。
部屋の中は綺麗に片付いている。と言うよりはあまりモノがない。
目立った家具はベット、机、それに洋服タンスぐらいなもの。
その他はちょっとしたモノ入れが有る程度。
悠斗が自分の部屋ですることと言ったら、ネットを見て回るか。
ベットに横になってVR世界に旅立つかの二択ぐらいしかない。
そのため、この自室はほとんと寝るためぐらいにしか意味を持たない。
用事の大半は自分がVR世界にいくか、MRで必要なものを呼び出せば事たりる。
ネットをするにしても、一昔前ならディスプレイに表示させて見ていたが、今はコンタクトやメガネに表示できる。
さらに各部屋の天井にプロジェクタがあるので、家の中ならコンタクトすら必要ない。
だがコンタクトをはずすと視線移動での操作が出来なくなるので、基本的に悠斗は家でもコンタクトを付けている。
特に興味を惹かれるモノがないので、シトリーたちはおとなしく机の上に座っていた。
「テレビでも見ようか」
そう言って悠斗は、テレビを仮想オブジェクトとして出現させた。
机の上に突如出現したテレビにシトリーとフランメリーは興味津々だ。
ふたりは今、手乗りサイズなのでテレビは超巨大スクリーンのように感じている。
悠斗はリモコンでテレビをつける。
テレビには、お笑い芸人が司会をするトーク番組がやっていた。
悠斗はリモコンをシトリーの前におく。
「ボタンを押せば内容が変わる。適当に押して面白そうなものを見つけて」
「わかりました」
シトリーはリモコンのボタンをポチポチと押す。
押すたびに番組が変わっていった。
シトリーは番組ではなく画面が切り替わる方が楽しいようで、チャンネルを変更し続けていた。
そして一番大きい赤いボタンを押してしまう。
切り替わっていた番組は、突然まっくらに変わる。
「あっ……」
シトリーの動きが止まった。
調子に乗って壊してしまったと勘違いし、恐る恐る悠斗を振り返る。
「あはは、別に壊れてないから安心して。その赤いボタンは電源のオンオフ。
ただオフ表示にしただけだから、またそのボタンを押せば映るよ」
「そうなんですね。壊れてしまったのかとヒヤヒヤしました」
シトリーはほっと胸を撫で下ろした。
テレビは仮想オブジェクトなので、いくら壊そうが再び出現させれば元通りに直っている。
再びテレビをつけようとしたところで、廊下からダンダンダンと足音が近づいてきた。
そしてノックもなしに扉は開かれる。
「ゆにちゃん、ごはん!」
扉を開けて入ってきたのは、悠斗の下の妹だった。
ゆにちゃんとは、
突然の乱入者にシトリーとフランメリーは璃乃を見つめて固まった。
「ああ、妹の璃乃だ」
「妹さんですか、可愛らしいですね。
はじめまして璃乃さん、私はシトリーです。こっちがフランメリー」
机の上でシトリーが璃乃に挨拶する。
それにならってフランメリーも小さくピィと鳴いた。
「わー、小人さんだー。かわいいー」
璃乃は机の上のシトリーを覗き込み、手を触れようとする。
「この小人さんは俺の友達だ。乱暴にさわっちゃダメだぞ」
「そうなんだ。ええと、私の名前は八神璃乃です。小学五年生です。
ゆにちゃんがいつもお世話になってます」
璃乃は机の上にいるシトリーに顔を近づけて挨拶をした。
ませた挨拶に悠斗は苦笑いを浮かべる。
「あはは、いつもっていうか、今日知り合ったばかりなんだけどな」
「これはご丁寧に。私の方こそ、トウヤさんではなく。
ユウトさんにお世話になりっぱなしで」
「ゆにちゃんをこれからもよろしくお願いします」
「はい、もちろんです」
シトリーの返事を聞くと、璃乃は体を戻して悠斗に向き直った。
「ゆにちゃん、ごはん」
「ああ、呼びにきてくれてありがとう」
悠斗は璃乃の頭をやさしくなでる。すると璃乃は満足そうに笑った。
「ちょっと、下で夕食をとってくる。
シトリーたちの分は、あとで用意するから少し待っててくれるか?」
「わかりました」
「テレビ、見てていいから」
「はい」
そう言って悠斗は部屋を後にした。
シトリーたちは再びテレビを付けて、悠斗が帰ってくるのを待った。
「ただいま」
夕食を終えた悠斗が自室に戻って来た。
「おかえりなさい。トウヤさん」
シトリーは見ていたテレビから振り返る。
悠斗だけだと思っていたが、その横にはもう一人の人物がいた。
璃乃は机の上にいるシトリーたちを覗き込む。
「こんばんは、小人さん」
「璃乃さん、こんばんは。
今は小さいですけど、本来はみなさんと同じ大きさなんですよ」
「そうなんだ。よろしくね。ええーと……」
「シトリーです。私の名前はシトリー。こちらがフランメリーです」
「シトちゃん、フラちゃん、よろしくね」
そう言って璃乃は握手の変わりに小指を差し出す。
シトリーは差し出された小指を両手で掴んだ。
「よろしくお願いします。璃乃さん」
「ピィ」
「さてシトリーたちに良いものがあるぞ。少し場所をあけてくれるか」
そう言って悠斗はテレビを消滅させて、新たに仮想オブジェクトを呼び出した。
呼び出したのは、ミニチュアの家だ。
「シトリーとフランメリーの家だよ。自由に使ってくれ。
風呂とかトイレもちゃんと使えるから」
「わー、すごいですね。入ってみてもいいですか?」
「どうぞ」
シトリーとフランメリーはミニチュアの家に入っていく。
「ゆにちゃん、私もこの家に入りたい!」
悠斗の服の袖を掴んでせがむ璃乃。
だが、ミニチュアの家に実物大の人間は入れない。
「わかったよ。じゃあVRで入るか?」
「うん」
「それじゃあ、ヘッドギアをかぶってベットで横になって」
「ゆにちゃんも、一緒に」
璃乃にヘッドギアをかぶせ、ベットに寝かせた。
その隣に、悠斗も同じようにして横になる。
幽体離脱でもするかのように、横たわる璃乃の上に仮想体の璃乃が姿を現した。
悠斗もトウヤに、意識を移した。
二人は体のサイズを小さくして、机の前にやって来た。
しかし、小さくなってしまった二人は、机にあがることが出来ない。
今や机は、垂直の
かといって、元の大きさではミニチュアの家に入れない。
「ゆにちゃん、あがれないよ」
「そうだな。
俺たちはヘリでもジェットパックでも、出せば簡単にあがれる。
フランメリーは自力で飛べるけど、シトリーは不便そうだ。
脇にエレベーターでも設置しとくか」
悠斗は机の横に移動し、エレベーターを呼び出して設置する。
床が一階、机の上が二階のエレベターに乗って、悠斗と璃乃は机にあがった。
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